派遣の契約を更新しないのは自由!いつまでに伝える?円満に辞めるタイミングや理由の話し方
現在の派遣契約を更新しないと決めたものの、「どのようなタイミングで、どのように伝えるべきかわからない」「伝えたら気まずい雰囲気にならないか?」「職場で不利益を被ってしまわないか?」といった疑問や不安は尽きないものです。
また、派遣契約の満了をもっての退職は、自己都合での退職と処理されるのか、それとも会社都合での退職と見なされるのでしょうか?
本記事では、職場や派遣会社と円満なコミュニケーションを図れるよう、派遣契約を更新しない理由の伝え方や注意点を解説。退職後の失業保険の給付についても取り扱います。
Contents
派遣契約を更新しないことは自由
まず前提として、派遣契約を更新しないことは派遣社員の自由であり、個人の裁量にゆだねられます。
一般的な派遣契約は、自動更新ではありません。多くの場合、派遣会社と派遣先企業の契約において、契約期間が終了する1か月前までを目安に、派遣会社が「派遣先企業」と「派遣社員」の双方に意思確認を行ったうえで、更新あるいは満了の判断がなされることが慣例となっています。
なお、契約更新しない理由を伝えることも、派遣社員に課される義務ではありません。とはいえ、派遣契約の終了にあたっては、極力円満な形で進めたいものでしょう。そのためには、契約更新しない意思を伝える「タイミング」と「誰に伝えるか」がポイントとなります。
契約更新しないことを伝えるタイミングは「1か月前までに」
派遣契約を更新しない意思は、契約期間が終了する1か月前までに伝えておくことが適切です。
上述の通り、契約期間終了の1か月前までには、派遣会社から意思確認を問う連絡があります。その際に自身の意思を伝えるとスムーズです。
なお、派遣社員が契約更新を希望しない場合、派遣会社や派遣先企業は新規採用や配置転換などを検討します。つまり、契約更新しない意思を早めに伝えることは、派遣会社や派遣先企業の迅速なアクションを促し、業務負担の軽減にもつながるため、ネガティブな印象とはなりません。「伝えたら気まずい雰囲気にならないか?」の心配は杞憂です。
契約更新しない意思は派遣会社に伝える
ここで注意したいのが、契約を更新しない意思は派遣会社に先に伝えることです。常駐して働いている派遣先企業ではありません。
派遣先企業と親密なコミュニケーションが取れている状況であっても、派遣契約はあくまでも派遣会社と派遣社員の間で交わされています。つまり派遣契約に関する事項は、派遣会社に伝えなくてはいけません。
派遣契約の非更新における失業保険の給付条件
派遣契約を更新しないにあたり、気になるのが失業保険の取り扱いです。派遣契約を更新しない理由が「自己都合」によるものか、あるいは「会社都合」によるものかに応じて、失業保険による手当の給付(失業給付)の条件が変わってきます。
自己都合で「更新したくない」と考える場合
自己都合による退職(派遣契約の終了)とは、結婚や引っ越しなど家庭の都合や、病気や怪我に起因する事由、あるいはキャリアアップのための退職など、労働者自身の状況や意思を理由として、退職や派遣契約の満了を「自ら」選択することです。
自己都合による契約満了の場合、失業給付の受給条件は以下となります。
- 受給要件:退職日以前2年間で、雇用保険被保険者として働いた期間が12カ月以上あること
- 給付開始日:申請手続きから2か月と7日後
- 給付日数:90~150日
会社都合で「契約更新できない」場合
一方、会社都合による退職とは、会社の倒産やリストラ、あるいはハラスメンスを受けたことによる退職など、会社側の事情を理由とした退職や派遣契約の終了を指します。
少々複雑なのが、派遣社員は派遣会社と契約を交わしている点です。派遣先企業の事情や問題により派遣契約の更新がなされなくても、派遣会社が提示する新たな就労先にて条件等の合意が交わされれば、派遣先企業の変更の形として着地するため、派遣社員は失業には至りません。
しかし、派遣会社による新たな仕事の紹介が望めないままに退職となった場合は、会社都合による派遣契約の終了と見なされます。また、派遣会社自体の事情や問題によって退職せざるを得ない場合も、会社都合での派遣契約の終了となります。
会社都合による契約満了の場合、失業給付の受給条件は以下となります。自己都合の場合と比較して、給付開始までの日数が短縮されているなどの優遇措置が図られています。
- 受給要件:退職日以前1年間で、雇用保険被保険者として働いた期間が6カ月以上あること
- 給付開始日:申請手続きから7日後
- 給付日数:90~330日
なお、派遣契約の終了が自己都合なのか、あるいは会社都合によるものなのかは、失業手当の申請先であるハローワークが最終的に判断します。つまり、会社都合による退職と認識していたものの、自己都合と判断されてしまうケースが生じる可能性は否定できません。
自身の派遣契約の終了はどちらに該当する可能性が高いのか、あらかじめハローワークに相談しておくとよいでしょう。
派遣の契約を更新しない理由と伝え方
派遣契約を更新しない理由を、派遣会社に伝える義務は課されていません。しかし、できるだけ円満な形で契約を終えるに越したことはないでしょう。
特に、現在の派遣契約は終了したいものの、派遣社員として働くこと自体は継続したいと考えているケースです。その場合は契約を更新しない理由や事情を、派遣会社の担当者に正直に伝えましょう。その意思は派遣会社が新たに提案する派遣先企業の候補群にもフィードバックされます。
具体的にどのように担当者に伝えればよいのか、以下のケース別に見ていきます。
- 他の企業に転職する場合
- 待遇や仕事内容に不満がある場合
- 人間関係に不満がある場合
他の企業に転職する場合
すでに転職先が決まっている場合は、そのことを明確に伝えます。派遣契約を継続する意思がないことをはっきり示しましょう。
契約更新の意思確認にて終了を申し出る場合、派遣会社からの引き留めがあるかもしれません。しかし転職が確定しているならば、派遣会社には引き留める余地がありません。
不要なやりとりを避け双方がスムーズに契約終了に至るよう、「他の会社に就職することが決まりました」「正社員の仕事が見つかりました」などストレートに伝えましょう。
待遇や仕事内容に不満がある場合
待遇や仕事内容への不満は、なかなか言い出しにくいかもしれません。しかし、こちらも派遣会社に正直に伝えることが望ましいです。
特に、現在働いている派遣先企業に問題がある場合です。派遣会社にも対応を検討する必要が生じるため、しっかり伝えるべきでしょう。
この際に重要なことは、感情的にならず冷静に話すことです。「職務内容や福利厚生が契約条件と異なる」「その状態が何か月も続いている」「サービス残業を強要されることがある」など、客観的かつ具体的な事実を整理し不満を伝えてください。
人間関係に不満がある場合
人間関係の不満は、伝え方によっては愚痴や不服などと受け取られかねません。「上司と合わない」「嫌な人がいる」などと感情的に話すのではなく、こちらも冷静に事実を伝えるよう意識しましょう。特に「派遣先企業(の社員)がすべて悪い」といった表現は望ましくありません。
「契約にはない業務を強いられ、断ったら暴言を受けた」「『使えない派遣だな』などハラスメントな言動を日常的に浴びている」「業務に必要な連絡が伝えられないことが多い」など、具体的に伝える必要があります。
契約を円満に終了するための注意点
上述した理由の伝え方と合わせ、派遣契約を円満に終了するための注意点も押さえておきましょう。
- なるべく対面で伝える
- 嘘の理由を話す必要はない
なるべく対面で伝える
契約を更新しない旨は、派遣会社の担当者と実際に対面して伝えることが望ましいです。
契約を更新しない理由や、次の派遣先に関する希望などの話は、派遣社員と派遣会社の双方にとって重要な内容です。しかし、電話やメールでは意図が明確に伝わらないなど、認識の齟齬を招きかねません。
自身の考えを過不足なく、正しく伝えるためには、対面でのコミュニケーションがやはり有効です。
嘘の理由を話す必要はない
派遣会社の担当者への気兼ねなどから、理由を正直に伝えにくい場面もあるかもしれません。しかし、契約終了を望む意思は極力正直に伝えましょう。
言いにくさなどから嘘の理由を話してしまうと、その内容によっては自身が不利益を被ってしまったり、トラブルに発展したりといったことも懸念されます。
また、内容の虚偽が判明すると、各所からの印象が悪くなることはいうまでもありません。特に派遣社員として働くこと自体は継続したいと考えているケースでは、嘘は絶対に禁物です。
契約更新しなくても次の仕事を紹介してもらえる?
「契約更新を拒否すると次の仕事を紹介してもらえないのでは?」と不安になるかもしれませんが、そのようなことはありません。むしろ次の仕事を紹介してもらえるからこそ、契約を更新しない理由の伝え方やタイミングが大切になります。
契約終了後、新たに紹介される仕事の内容や条件には、契約更新の意思確認の場で交わされた派遣会社の担当者とのコミュニケーションが反映されます。なぜ契約の終了を望むのか、自身はどのような条件の仕事を希望しているのかといった意思を伝えましょう。
また、希望する内容の仕事が即座に見つかるとは限りません。そのためにも、契約を更新しない意思は早めに担当者に申し出ておきましょう。
- 派遣契約を更新しないことは派遣社員の自由であり、個人の裁量にゆだねられる
- 派遣契約を更新しない意思は、契約期間が終了する1か月前までに伝えておく
- 契約更新の意思確認が行われる場を、申し出のタイミングとするとスムーズ
- 契約更新しない意思を早めに伝えることはネガティブな印象とはならず、「伝えたら気まずい雰囲気にならないか?」といった心配は杞憂
- 契約を更新しない意思は、派遣先の企業ではなく、派遣会社に先に伝える
- 「契約更新を拒否すると次の仕事を紹介してもらえない」といったことはない
- 契約を更新しない理由や事情を、派遣会社の担当者に正直に伝えるとよい