派遣社員は契約途中でも辞められる?伝えるタイミングや理由・辞めるまでの手続きを解説

「契約期間中ではあるが、派遣先の仕事を辞めたい」「しかし、誰に言うべきかわからない」などと悩む人は少なくありません。また、「契約途中での退職は気まずい」と感じることもあるでしょう。
では、派遣社員が仕事を辞める場合、「誰に」「どのような方法で」その意思を伝えればよいのでしょうか? 本記事では、退職を検討する派遣社員に向け、仕事を辞める際の手順や適切な方法を解説します。
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派遣社員は契約途中でも辞められる?

あくまでも原則ではありますが、契約期間が定められている派遣社員の契約途中における退職は認められません。ただし、退職理由が「やむを得ない事由」に該当するものであればその限りではなく、契約満了前の退職が認められます
やむを得ない事由とは
民法第628条には、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」という一文があります。この契約途中であっても退職が認められる「やむを得ない事由」とは、具体的に次のような内容です。
- 賃金不払いなどの契約不履行があった
- 家族の介護や看病が必要になった
- 本人の体調不良により業務遂行が難しくなった
- パワーハラスメントなどハラスメント行為があった
- 契約内容と業務内容に乖離があった など
これらの事由に該当する場合は、まずは派遣会社の担当者に退職に関する相談をしましょう。退職したい理由を尋ねられたときには、事由を真摯に話してください。
なお、やむを得ない事由なく契約途中で退職すると、「自己都合」での退職と取り扱われ、失業手当の給付開始が遅くなる等の不利益を被ることがあります。
派遣社員が辞める意思を伝えるタイミング
派遣社員が仕事を辞める意思を伝えるにあたり、本来望ましいタイミングは次の3つです。
- 契約満了・更新の1ヶ月前までに伝える
- 繫忙期以外の時期に伝える
- やむを得ない事由の場合はできるだけ早く伝える
契約更新の1ヶ月前までに退職の意思を伝えておくと、手続きが円滑に進みます。また、比較的業務の少ない時期に伝えることも、タイミングとして適切です。
なお、上述の「やむを得ない事由」による退職の場合は、できるだけ早く申し出ることが望ましいです。
契約満了・更新の1ヶ月前までに伝える
一般的な派遣契約の場合、契約満了の1ヶ月前を目安に契約更新の意思確認が行われます。その際に契約更新を望まず退職する意向を派遣会社の担当者に伝えれば、その後の手続きや派遣先企業とのやりとりも円滑に進みます。
一方、退職の意思を伝えるのが契約満了間近になると、派遣先企業や派遣会社の業務負担の増大を招きます。新規人材の採用や配置転換を検討する時間、業務引継ぎに充てられる時間なども不足してくるでしょう。
「退職の意思を伝えたら気まずい雰囲気にならないか」「職場で不利益を被ってしまわないか」などと不安になるかもしれませんが、意思を早めに伝えることはネガティブな印象にはなりません。契約満了・更新の1ヶ月前には退職を希望する旨を伝えましょう。
繫忙期以外の時期に伝える
退職する意思は、月末や繁忙期のタイミングを避けて伝えることが望ましいです。
なお、繁忙期での退職を考えている場合は、遅くとも1ヶ月前には退職の意思を派遣会社に相談するのが望ましいです。業務が比較的落ち着いている時期の退職となる場合は、ゆとりをもって引継ぎを行えるよう準備しましょう。
やむを得ない事由の場合はできるだけ早く伝える
やむを得ない事由で退職する場合は、できるだけ早く派遣会社に退職の意思を伝えます。引継ぎの人材探しや新たな業務の割り振りなどに速やかに取り組めるよう、早い段階で相談しましょう。
なお、やむを得ない事由で退職する際は、事情を正直に伝えることが望ましいです。納得感のある理由を申し添えることで、今後も派遣会社など関係各所とよい関係を継続できます。
派遣社員が辞めるまでの手順

ここからは、派遣社員が仕事を辞めるまでの手順について説明します。一般的には、次の3つのステップを経て退職へと至ります。
- 派遣会社に意思を伝える
- 派遣会社による手続き
- 派遣先企業に辞めることを伝える
派遣社員が退職するときには、はじめに派遣会社にその意思を伝えます。現在働いている派遣先企業ではないので注意してください。その後、派遣会社側による手続きを経たうえで、派遣先企業に退職の意思を伝えます。
派遣会社に意思を伝える
契約満了の1ヶ月前を目安に、派遣会社の担当者に退職の意思を伝えます。退職後、再度働き始めるまでの期間を空けたい場合は、その意向も伝えましょう。
なお、担当者への相談は定期フォロー時や更新の意思確認時など、対面で接する機会が望ましいです。また、退職届の提出は必要ありません。
派遣会社による手続き
派遣社員の退職意思を受け、派遣会社側は派遣先企業と交わしている契約の終了手続きに移行します。この手続きを待たず、自身で派遣先企業に退職の意思を告げることなどは控えてください。
派遣先に辞めることを伝える
派遣会社と派遣先企業の間の手続き完了を待ったうえで、派遣先企業に契約終了後に更新しないこと、退職することを伝えます。退職の挨拶も行いましょう。
退職の意思を伝えた後は、次の担当者への業務引継ぎなどに取り組みます。会社から貸与されたものの返却も忘れずに準備しましょう。
どうしても契約途中に辞めたいと思ったときは
さまざまな理由から、契約途中にどうしても仕事を辞めたいと考える場合は、まず派遣会社の担当者に相談しましょう。退職したいと考えている理由を伝え、状況の改善も含め、派遣会社からの働きかけを促します。
具体的にどのように担当者に伝えればよいのか、ケース別に見ていきます。
- 人間関係に悩んでいるときの伝え方
- 仕事内容に不満があるときの伝え方
- 契約内容と実際の業務が違うときの伝え方
人間関係に悩んでいるときの伝え方
人間関係の不満は、「上司と合わない」「嫌いな人がいる」などと情緒のままに話すのではなく、冷静に事実を伝えるよう意識しましょう。その際は、派遣先企業を一方的に責めるような言葉を選ばないように意識します。悩みを冷静に伝えることで、人間関係の改善に向けた派遣会社によるフォローアップも見込めます。
また、「人間関係に悩んでいる」とだけ話すのではなく、改善に向けた方法も考え申し添えるとよいでしょう。たとえば現状のチームでの業務が難しいと考えているのであれば、配置転換などの要望も伝えてみましょう。
仕事内容に不満があるときの伝え方
業務内容が自身のスキルや適性に合致していないと感じている場合も、派遣会社の担当者に相談しましょう。派遣会社にも対応を検討する必要が生じるため、業務環境の改善を要求してもらえるよう促します。
仕事内容に不満がある場合は、何が問題なのか、どのような点に納得できないのか、考えを整理して具体的に伝えることがポイントです。挑戦したい業務がある場合などは、その旨を率直に話しましょう。
契約内容と実際の業務が違うときの伝え方
契約内容と実際の業務が大きく異なっている場合は、派遣先企業に業務内容や対応を改善してもらうよう、まずは派遣会社から働きかけてもらいましょう。
担当者には、契約内容と実際の業務がどのように違うのかを業務単位で整理してまとめ、改善を望む点を具体的に伝えます。
派遣社員が辞めたいときのよくある質問
最後に、派遣社員が仕事を辞めたいときによくある質問とその回答をご紹介します。
辞めたいときはいつ言えばいい?
基本的に、退職は契約満了の1ヶ月前までに伝えることが望ましいです。なお、やむを得ない事由での退職を希望する場合はタイミングを待たず、速やかに相談しましょう。
辞めたいときは誰に言えばいい?
退職の意思は、まず所属する派遣会社の担当者に伝えます。派遣先企業への報告は、派遣会社による退職手続きが完了してからです。
即日で辞めることは可能?
契約期間が定められている派遣社員は、原則として契約満了までの業務遂行が求められます。即日での退職は難しいです。
辞める理由は派遣会社・派遣先に言うべき?
特にやむを得ない事由で退職する場合などでは、各所との良好な関係を良好に保つためにも、理由を率直に伝えたほうがよいでしょう。退職に伴う事情は、派遣会社が新たに提案する次の派遣先企業の候補群などにも反映されます。
- 契約期間が定められている派遣社員の契約途中における退職は、原則として認められない
- ただし、退職理由が「やむを得ない事由」に該当するものであればその限りではない
- やむを得ない事由には、賃金不払いなど契約不履行、家族の介護や看病、パワーハラスメントなどが該当する
- やむを得ない事由で退職する場合は、できるだけ早く派遣会社に退職の意向を伝える
- 契約途中にどうしても仕事を辞めたいと考える場合は、派遣会社の担当者に退職したい理由を伝え、状況の改善も含めた働きかけを促す
- 退職を考えている理由や事情を、派遣会社の担当者に正直に伝えるとよい