OKRとは|意味や目標管理方法を具体例からわかりやすく解説
設定した目標の達成に向けての進捗管理に苦慮する組織は多いものです。MBOやKGIの設定など、目標管理の指標として知られる手法はさまざまありますが、GoogleやFacebookなど超巨大企業にも導入されている指標「OKR」に、大きな注目が集まっています。
OKRを用いることで、定量的な成果指標をベースとして、より高い目標の達成に向かうことができるようになります。一方、OKRには注意点もあり、上手く運用できないと従業員のモチベーション低下などのリスクも招きかねません。注目を集めるOKRとはどのようなものなのか、目標管理方法の具体例を交えつつ解説していきます。
Contents
OKRとは
OKR(Objectives and Key Results)とは、組織が設定する目標と、目標達成のために必要な成果を結び付け、方向性を明確にする目標管理の手法です。
- 目標を意味する「Objectives」
- 主要な成果を意味する「Key Results」
この2つの単語を組み合わせた言葉を略称して「OKR」と呼ばれています。
OKRでは、定性的な「目標」を達成するために、複数の定量的な「成果」を目標への進捗測定に取り入れ、組織全体の生産性や業務効率アップを目指していきます。
Objectives(目標) | Key Results(主要な結果) | |
---|---|---|
特徴 | 覚えやすく共有しやすい定性的な目標 | 数値化された定量的な指標 |
具体例 | 半年後までに業界内のシェアを拡大する |
|
このように、「シェアの拡大」というシンプルな「目標」の達成にあたって求められる「成果」を管理できるよう、明確に数値化した「KR」を具体的な指標として取り入れていくことがOKRの特徴です。
OKRは1970年代にインテル社で採用されて以来、GoogleやFacebook、国内ではメルカリなど名だたる大企業を筆頭に、いまでは多くの企業で導入されています。
OKRの目的
OKRを導入する目的は、組織全体の目標と個人の目標を関連づけることで、より高い目標を達成するためのプランニングを策定し、オペレーションを明確化することにあります。
「目標は定量的な軸をもって設置すべき」と考えられることが一般的ではありますが、OKRにおける組織全体の目標(=O)はそうではなく、定性的な内容で構いません。「業界シェアを塗り替える」といったように、キャッチーで挑戦的な目標を設定し、モチベーションを高める効果を狙います。
このように、組織全体の目標が統一されると、業務として「やるべきこと/やらないこと」が明確化され、「販促キャンペーンを展開し、10万人以上に商品を届ける」「販路を全国展開し1000店規模まで拡大する」といった、全体の目標にリンクした個別の定量的な目標(KR)が設定され、オペレーションが効率化するのです。
さらに、各部門やチームごとにOKRを明確にすれば、下記のような副次的なメリットも期待できるでしょう。
- 個人の成果が認められやすくなる
- 達成感を得られやすくなる
- コミュニケーションが円滑化する
OKRと他の目標管理の違い
- KPI
- MBO
これらは目標管理や達成管理の指標として、すでによく知られている手法です。KPIとMBOの特徴を紹介しつつ、OKRとはどう異なるのかを紐解いていきます。
KPIとの違い
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、目標達成までの途中指標を指すものです。KPIを設定することで、目標達成までの進捗状況が可視化されることが特徴で、一般的にはKGI(※プロジェクトの最終目標を定量的に評価する指標)から逆算してKPIを割り出し、マイルストーンとして設定します。
このように、OKRの「KR」の部分とKPIでは、「大きな目標に向けた個別の定量的な成果指標」という意味では共通点がありますが、OKRとKPIはそもそも役割が違うものです。
- OKR:組織全体の定性的な目標を設置し、その道筋として定量的な目標を明確にする
- KPI:定量的なゴール(KGI)に必要な具体的な要素と施策を定め、定量的に測る指標
また、OKRは組織全体を単位としていますが、KPIやKGIは一般的にプロジェクト単位で設定されるという規模感の違いもあります。「どちらが優れているか」を比べるのではなく、管理の目的や役割に応じて、効果的な手法を選択すると良いでしょう。
MBOとの違い
MBO(Management By Objectives)は、OKRよりも以前にピーター・ドラッカーが提唱した目標管理の手法です。設定された目標に対する達成度を従業員個人で管理する手法であり、個別のタスクに割いた時間工数や、それに応じた成果を従業員が自ら可視化するフレームワークを指しています。
従業員のモチベーションの向上や生産性の向上に重きが置かれ、人事評価に用いる指標としての色合いが濃く、一般的には1年周期で目標達成を評価します。
OKRとの違いはいくつかあります。
OKRは1ヶ月に一度もしくは四半期に一度の頻度で評価されるのに対し、MBOは半年ないし1年に一度の評価となり、OKRのほうが評価サイクルや軌道修正、改善サイクルが短くなる傾向にあります。
OKRでは「SMART」と呼ばれる基準で達成度を測定します、SMARTは、それぞれ以下の英文字の頭を組み合わせたものです。
- Specific:具体的に
- Measurable:測定可能な
- Achievable:達成可能な
- Related:経営目標に関連する
- Time-bound:期限が明確
一方で、MBOには達成度の測定における決まった指標はありません。組織それぞれの状況に応じて、定量評価と定性評価の配分などが決まっていきます。
OKRは組織がより高い目標を達成するために用いられますが、MBOは1年ごとの業績に基づく報酬の決定が主目的となります。そのため、MBOは従業員個別に設定され組織全体には開示されませんが、OKRは組織全体で共有するという違いも見られます。
OKRでは、目標達成水準として60?70%の成果が期待されています。そもそも高い目標設定をしているため、100%の達成がマストとして設定されていないのです。一方、MBOは報酬の決定に用いられることが主であるため、100%以上の期待水準が設けられます。
OKRによる目標管理方法【具体例あり】
OKRは比較的シンプルかつ正確に、目標達成までの進捗を評価できる手法ですが、正しい運用を行わなければ成果を適切に測れなくなる可能性もあります。
OKRを正しく運用するために、以下の手順を押さえておきましょう。
- 目標(Objectives)の設定
- 主要な成果(Key Results)の設定
- OKRの共有
- フィードバック
- 成果の測定と評価
①目標(Objectives)の設定
まずはもっとも重要な目標設定です。目標設定のポイントは、容易に達成できるものではなく、より高い目標を設定することです。挑戦的な目標として機能するよう、目標の60?70%程度の着地が想定される内容で設定しておきます。
また目標達成までの期限は1ヶ月?四半期程度で設けると良いでしょう。期間を短くすることで、目標達成に向けた行動が明確化し、業務改善にシンプルにつながっていきます。
上記を踏まえ具体例を考えていきます。Web制作会社を例に、組織ごとにOKRの目標を設定していきます。
- 開発部の目標:開発コストの削減と開発速度の向上
- 営業部の目標:テレワークに対応し、対人以外での受注チャネルを確立する
②主要な成果(Key Results)の設定
定性的な目標に対して、定量的な視点から具体的な行動に落とし込んだ成果指標を設定します。
一般的には1つの目標に対して2?3つ程度の数値化された指標を用います。成果指標が多すぎると方向性にブレが生じかねないので注意してください。目標達成に向かって挑戦できる範囲内の難易度で、成果の設定を行いましょう。こちらも実施期間は1ヶ月?四半期程度で設定して、進捗率を把握しながら改善を促せるようにしておくと良いでしょう。
チームの成果指標は以下の通りです。
- 開発部の成果指標:開発コストを20%削減 / 納品数を30%増加
- 営業部の成果指標:リモートでの商談数を80%増加 / 既存顧客のリピート率を30%増加
KRを明確に数値化することで、実際の業務で取り組むべきことが明確化され、無駄な業務やコストは削減に向かいます。
③OKRの共有
OKRの共有で重要なのは、まずは組織としてチャレンジングな目標を掲げることです。
- 業界シェアを塗り替える
- テレアポなしで受注を獲得できる体制を構築する
- 商品のターゲットを若年層にまで拡大する
このように、キャッチーで覚えやすく、組織が一丸となれるような目標を設定します。
また、OKRの内容をオープンにして、コミュニケーションを活性化させることも重要です。Slackなどのコミュニケーションツールで専用のチャンネルを作る、NotionやGoogleスプレッドシートなどの業務管理ツールを活用するなどの施策を講じましょう。
④フィードバック
短期間での目標達成を目的とするOKRでは、こまめな進捗確認とフィードバックが欠かせません。進捗が遅れているのであれば遅れている原因を究明するなど、個別のアクションは重要なプロセスとなります。
進捗確認として有効なのが、チェックインと呼ばれる短時間のミーティングです。週に1度、1時間程度のチェックインを行い、進捗度や現状の課題の要因、課題の改善策をディスカッションします。
また、中間となる時期には、進捗に応じた軌道修正なども検討し、そもそもOKRに整合性が取れているかなども含めた調整も行っていきます。
⑤成果の測定と評価
OKRの成果測定では、スコアリングと呼ばれる定量評価を用い、目標達成の度合いや目標と成果指標の関係性に論理的な説明ができるかなどを確認します。最終評価の要因を分析し、OKRの内容を継続するのか変更するのかの判断を下すのです。
ただし、成果測定の評価で注意すべきは、OKRの進捗に応じた人事評価を下さないということです。
評価はあくまでもOKRの達成度合いや、そもそも整合性が取れているのかの確認のために行います。個人の評価をする場合は、OKR遂行にあたっての貢献度を反映すると良いでしょう。
最終評価を終えた後に、次の期間を設け再度OKRを設定します。
先の具体例でいえば、納品数の30%増加が未達成に終わった開発部は、制作スピードのアップに向けて足りなかったアクションはなにか? 営業部であれば、リモートでの商談数が80%増加に至らなかった要因にインフラの問題はなかったか? そもそものOKRの設定に無理はなかったのか? などと業務レベルで分析していくのです。
失敗しないためのOKR運用のコツ
OKRを適切に運用していくために、以下の3つのポイントを確認しましょう。
OKRの目標達成度を図るにあたって人事評価とリンクさせてしまうと、目標設定が保守的になりがちです。
トップダウン優勢のOKRでは、共有すべき情報が組織に浸透しないことがあります。ボトムアップする体制を整え、組織が一丸となるようバランスを取りながらOKRを進行しましょう。
適切な工数管理は、実際に業務を行う人材のモチベーションに直結する要素です。1ヶ月?四半期という短い期間で行われるからこそ、設定したOKRが本当に適切であるのか、こまめなフィードバックを行いましょう。
- OKRは目標管理手法のひとつ
- 組織全体の目標と個人の目標を関連づけることで、より高い目標を達成するためのプランニングを策定し、オペレーションを明確化することが目的
- 組織全体で定性的でキャッチーな、かつ高い目標(O)を設定し、達成に向けて定量的な成果指標(KR)を設定する
- 1つの目標(O)に対して2?3つ程度の数値化された指標(KR)を設定する
- 期間は1ヶ月?四半期と短期間で設定する
- OKRの進捗と人事評価を紐付けない