データサイエンティストの資格は独学で取得できる?検定の難易度と合格率
インターネットやスマートフォンの普及により、消費者の購買行動が複雑化した現代。Webを経由した購買行動はデータ(ビッグデータ)として保存され、マーケティングにおいてはこのビッグデータが欠かせない存在となっています。
ビッグデータを収集して分析する専門家が「データサイエンティスト」という仕事で、ひろゆき氏もその高い年収水準や将来性に言及しています。こちらでは、データサイエンティストの仕事内容や年収、将来性について紹介。取っておくと就職・転職に役立つおすすめの資格も紹介しています。
資格でスキルを証明できれば就職・転職時などの際、好待遇で迎えられる可能性も高まります。独学でも取得は可能なのか、難易度や合格率、勉強時間について取り上げていきます。
データサイエンティストとは
データサイエンティストとは、データを集めて分析を行う専門家です。顧客や売り上げに関する膨大なデータを分析し、その結果をベースに、事業戦略に必要な情報を提供するという重要な役割を担います。そのため、企業の研究開発部やコンサルティング部に所属するケースがほとんどです。
また、データサイエンティストが扱う膨大なデータは整理されていないことも多いため、専門的なスキルを活用してデータの整理を行うのもデータサイエンティンストの仕事の一部です。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストは一般的に以下のような順番・内容の仕事をしています。
- 顧客へのヒアリング:顧客の抱えている課題をヒアリングにより、洗い出す
- データ収集・保存:ヒアリングした内容をもとに課題解決に必要なデータを収集。データベース化する
- データ集計・分析:収集・保存したデータをビジネス活用できるように、さまざまな角度から集計・分析を行う
- データの整理・レポート作成:分析したデータから見えてきた解決策の提案を行うためのレポートを作成する
このほか、データの変換やデータベースの用意、収集したデータを効率良く取り出すためのプログラムを組むといった作業も発生します。なお、上記は一般的な流れであるため、企業によっては順番が異なる場合もあります。
データサイエンティストの年収
求人ボックス給与ナビによると、データサイエンティストの平均年収・時給は下記のようになっています。
- 正社員:697万円/年
- 派遣社員:2,606円/時間
国税庁が発表している国民の平均年収は467万円です。データサイエンティストは正社員の場合、平均で697万円の年収があるとされており、国民の平均よりも200万円ほど高い水準です。勤務先の企業や経験、スキルによってバラツキがありますが、1,000万円以上の収入も現実的に期待できるでしょう。
また時給1,000円台が多い派遣社員においても、データサイエンティストは2,606円と破格の給与水準となっています。
ひろゆき氏もおすすめ?データサイエンティストの将来性
インターネットが急速に普及したことにより、さまざまな種類・性質の大量データ(ビッグデータ)が溢れかえっています。ビッグデータを活用した市場はますます拡大している反面、これらのデータを集計・分析できるデータサイエンティストは不足しています。
さらに顧客のニーズが多様化している昨今では、ビッグデータの有効活用は急務であり、多くの企業が優秀なデータサイエンティストを欲しているのが現状です。
これらの背景からみても、データサイエンティストのニーズは極めて高く、十分な将来性があるでしょう。Youtubeでは、ひろゆき氏もそのニーズや将来性について言及しています。
動画引用元:Youtube|【ひろゆき】データサイエンティストの将来性【仕事内容 ひろゆき 切り抜き】
需要の高さから、派遣案件も豊富です。資格取得を目指す方、実務を積んでいきたい方は、ぜひご確認ください。
データサイエンティストに必要な知識・スキル
データサイエンティストには、以下のような知識・スキルが求められます。
- 統計学・データマイニングの知識
- 機械学習の知識
- データベースの知識・スキル
- データ分析ソフトウェアの知識・スキル
- プログラミングスキル
- ビジネススキル
上記のように高度な知識・スキルが要求されるデータサイエンティストですが、必ずしも専門的な資格がないといけないということはありません。ただし、知識やスキルの証明にはなるので、就職や転職活動で有利に働く可能性は大いに考えられます。
また、資格取得のために勉強した内容は、そのまま実務に活かせるものも多いので、資格の勉強をしながら知識・スキルを身に付けていくことは効率的です。
データサイエンティストに役立つおすすめの資格と難易度
データサイエンティストになるために役立つ資格には下記のようなものがあります。
資格名称 | 認定団体 | 難易度 |
---|---|---|
情報処理技術者試験 | 経済産業省(国家資格) | 試験による |
データスペシャリスト試験 | IPA情報処理推進機構(国家資格) | ★★★★★ |
OSS-DB技術者認定試験 | 特定非営利活動法人 LPI-Japan事務局 |
★★★☆☆ |
統計検定(準1級) | 日本統計学会 | ★★★★☆ |
G検定・E資格 | 一般社団法人 日本ディープラーニング協会 |
★★☆☆☆ |
Python 3 エンジニア認定基礎試験 | 一般社団法人 Pythonエンジニア育成推進協会 |
★☆☆☆☆ |
オラクルマスター | 日本オラクル社 | ★★★☆☆ |
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験とは、情報処理技術者としての知識やスキルが一定水準以上あることを証明できる、ITの国家資格です。経済産業省認定の資格であるため、対外的な信頼度が高い資格となります。
ITを活用する社会人向けの基礎的な試験から、ネットワーク・データベースに特化した専門知識を評価する試験まで7区分あり、レベルにあった試験を選択できます。
また、試験は午前と午後に分かれており、合格するにはそれぞれの時間区分において、基準点となる点数をクリアする必要があります(下記表参照)。試験を一部免除できる制度もあるので、IPA(情報処理推進機構)のHPで、該当するかどうかを事前に確認してから申し込みましょう。なお、免除対象者であっても申請しなければ免除は適用されないので注意してください。
認定団体 | IPA(情報処理推進機構) | |
---|---|---|
資格認定の種類 | 国家資格 | |
等級の種類 | - | |
受験資格 | 制限なし | |
合格率/合格基準 | 48.1%(令和2年度)/各時間区分の得点がすべて60点以上もしくはランクA | |
難易度 | -(試験による) | |
受験手数料 (税込) |
7,500円 | |
試験日程 | 4月・10月 | |
試験内容 | テクノロジ系(セキュリティ、ネットワークなど)、ストラテジ系(企業活動、経営など)、マネジメント系(プロジェクト管理、開発の流れなど)の知識、長文形式による技能試験 ※試験要綱・シラバス |
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公式サイト | IPA(情報処理推進機構) |
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験(DB)とは、その名のとおりデータベースに特化した資格です。データベース系の試験のなかで最難関と名高い試験だけに、難易度も高く合格率も低い傾向にあります。令和3年度の合格率は17.1%。過去の平均合格率も14~18%で推移しています。
データベーススペシャリスト試験は、データベースに関連性の深いエンジニアや管理者を対象としていますが、ビッグデータとのつながりも深い点から、データサイエンティスト向けの試験としても注目を浴びている試験でもあります。
認定団体 | IPA(情報処理推進機構) | |
---|---|---|
資格認定の種類 | 国家資格 | |
等級の種類 | - | |
受験資格 | 制限なし | |
合格率/合格基準 | 17.1%(令和3年度)/午前Ⅰ・Ⅱおよび午後Ⅰ・Ⅱで各100点満点中60点以上 | |
難易度 | ★★★★★ | |
受験手数料 (税込) |
7,500円 | |
試験日程 | 10月 | |
試験内容 | データベースに関する知識全般(企画、要件定義) | |
公式サイト | IPA(情報処理推進機構) |
OSS-DB技術者認定試験
OSS-DB技術者認定試験は、特定非営利活動法人のLPI-Japanがオープンソースデータベースに関する知識と技術力を認定する民間資格です。オープンソースソフトウェアのPostgreSQLを基準とした試験であり、データベースの基礎的な知識・技術が問われます。
試験等級は下記の2つが用意されています。
- Silver:データベースに関する基本的な知識(管理・運用)の技術力を認定
- Gold:OSS-DBの応用
なお、実務経験のあるエンジニアであれば合格率は60~70%程度。比較的難易度の低い試験であるため、OSS-DB技術者認定試験を足がかりにして別の試験に挑む人も多くいます。
認定団体 | 特定非営利活動法人LPI-Japan事務局 | |
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資格認定の種類 | 民間資格 | |
等級の種類 | Silver・Gold | |
受験資格 |
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合格率/合格基準 | 非公開 | |
難易度 | ★★★☆☆ | |
受験手数料 (税込) |
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試験日程 | 随時開催 ※予約の必要あり。空き状況によっては希望日に受けられないこともある |
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試験内容 |
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公式サイト | 特定非営利活動法人LPI-Japan事務局 |
統計検定(準1級)
統計検定(準1級)とは、統計に関する知識やスキルを評価する全国統一の試験です。分析したデータからどういった結果が読み取れるかを分析する必要があるデータサイエンティストには統計学の知識が不可欠であり、ぜひ取得しておきたい資格です。
等級は準1級を含む4~1級までの5段階ありますが、なかでも準1級は2級までの統計学の基礎知識を踏まえた、応用的な統計学の諸手法について問われます。そのため、統計検定のなかでも準1級を受けることで、応用の利く統計学の活用力を身に付けられるでしょう。
合格基準は非公開ですが、一般的に6割が合格の目安といわれています。
認定団体 | 日本統計学会 | |
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資格認定の種類 | 民間資格 | |
等級の種類 | 準1級 ※4~1級まであり、レベルに応じて受験可能 |
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受験資格 | 制限なし | |
合格率/合格基準 | 23.6%(令和3年度)/非公開 | |
難易度 | ★★★★☆ | |
受験手数料 (税込) |
8,000円 | |
試験日程 | 6月 | |
試験内容 | 統計検定2級の内容を含む適切なデータ収集法の計画、立案、問題への適切な統計的手法、結果の正しい解釈力 | |
公式サイト | 一般財団法人 統計室保証推進協会 |
G検定・E資格
G検定・E資格とは機械学習や深層学習の知識を問う試験です。
- G検定:ジェネラリストのための試験。ディープラーニングの基礎知識を問われる。合格率6~7割程度であり、文系出身者であれば、3ヵ月から半年程度の学習時間で合格可能といわれている
- E資格:エンジニアのための試験。ディープラーニングの理論を理解したうえで、実装する能力があるかを測る。国内のAI・ディープラーニング関連の資格では最難関といわれている
試験範囲はJDLA公式サイトでシラバス(G検定シラバス・E資格シラバス)として公開されています。試験に挑む際は、必ず確認しておきましょう。合格基準は非公開となっていますが、目安としては6~7割程度が合格ラインだと考えられています。
認定団体 | 一般社団法人 日本ディープラーニング協会 | |
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資格認定の種類 | 民間資格 | |
等級の種類 | - | |
受験資格 |
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合格率/合格基準 |
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難易度 | ★★☆☆☆ | |
受験手数料 (税込) |
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試験日程 |
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試験内容 |
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公式サイト | 一般社団法人 日本ディープラーニング協会 |
Python 3 エンジニア認定基礎試験
データサイエンティストにおいて使用頻度が最も高いプログラミング言語である、Pythonを使用したデータ分析に関する基本的な知識が問われる試験です。Pythonはデータサイエンティストには必須であり、本資格はデータサイエンティストに求められる資格No.1といわれるほど需要の高い資格です。
試験ではPythonの文法基礎やPythonを使用したデータ分析の基礎・方法を問われます。難易度的にはプログラミング初心者でも1ヵ月程度あれば合格できるレベルのため、駆け出しデータサイエンティストにおすすめの資格といえるでしょう。
認定団体 | 一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 | |
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資格認定の種類 | 民間資格 | |
等級の種類 | - | |
受験資格 | 制限なし | |
合格率/合格基準 | 80%程度(平成31年)/70% | |
難易度 | ★☆☆☆☆ | |
受験手数料 (税込) |
10,000円 | |
試験日程 | 随時 | |
試験内容 | Pythonインタープリタの使い方、制御構造ツールなど、主教材のオライリー・ジャパン「Pythonチュートリアル(2021年9月1日より第四版に対応します)」から出題。一般的な知識からも出題 | |
公式サイト | 一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 |
オラクルマスター
オラクルマスターとは日本オラクル社が提供しているオラクルデータベースの管理スキルを認定する世界共通の認定資格です。オラクルデータベースは世界的にもシェアが高く、国内でも多くの企業が採用。取得しておくと、活躍できるチャンスが広がる資格でもあります。
また、本資格を勉強することで、データベースの構築・運用、管理の概要、SQLによるデータの抽出など、データベースに関する基礎的な知識の習得が可能です。
試験レベルは「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」の4段階あり、実務経験がある人であれば、10~20時間程度の勉強でブロンズに合格できるとされていますが、ゴールド以上は独学での取得は難しいとの声も上がっています。
認定団体 | 日本オラクル社 | |
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資格認定の種類 | 民間資格 | |
等級の種類 | ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ(詳細未定) | |
受験資格 |
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合格率/合格基準 |
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難易度 | ★★★☆☆ | |
受験手数料 (税込) |
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試験日程 | 随時 | |
試験内容 |
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公式サイト | 日本オラクル社 |
資格を取るための勉強方法
データサイエンティストの資格を取得するためには、「プログラミング」「データベース」「統計学」「機械学習」「数学」などを網羅的に勉強する必要があります。これらをトータルで学び資格を取得するためには、下記のような方法が考えられます。
- 学校・スクールに通って勉強する
- 独学で勉強する
学校・スクールに通って勉強する
データサイエンティストに活かせる資格を取得するには、関連スクールや講座などに通って勉強する方法があります。給付金対象となっている講座を受講すれば、費用も抑えつつ資格取得を目指せるでしょう。給付金の対象講座は下記からご確認ください。
- 【給付金対象講座】
- ● 経済産業省|第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)
- ● 厚生労働省|専門実践教育訓練給付金制度の対象講座
学校やスクールでは講師がいるため、わからない部分をすぐに解消しやすいことがメリットです。独学よりも短期間での資格取得が目指せます。
また、データサイエンティストに必要な知識やスキルを体系的に学べるので、即戦力として活躍できる将来も描きやすいでしょう。就職・転職支援があるスクール・講座もあるので、どこまでカバーしてくれるのかにも着目してスクール・講座を選択しましょう。
独学で勉強する
市販のテキストや過去問題集、動画などを使った独学でもデータサイエンティストの資格取得は目指せます。
テキストは基礎的なものから高度な技術を解説しているものまで、さまざまな種類があります。そのため、独学でも資格取得は目指せますが、それだけで実務に役立つかは少々疑問が残るところです。実務においては、専門ツールを用いてデータの分析を行います。そのため、テキストとにらめっこするだけではなく、フリーソフトなども活用しながら、データに触れつつ勉強を進めましょう。
独学の良いところは「自分のペースで勉強できる」点や、「自分にあった勉強方法を選択できる」点です。しかし、データサイエンティストの資格は先にも述べたように「プログラミング言語」や「統計学」など、学習範囲が広く、1つの分野を学習するだけでも数ヶ月かかることもあります。
資格によっては難易度も高いため、途中で諦めてしまう可能性も高く、モチベーション維持が難しい点がデメリットです。ただし、すでにある程度の範囲をカバーしているのであれば、独学でも資格取得は十分に可能です。
- データサイエンティストは、データを集めて分析を行う専門家
- 顧客や売り上げに関する膨大なデータを分析し、その結果をベースに、事業戦略に必要な情報を提供する重要な役割を担う
- 統計学やデータマイニング、機械学習、データベースなど幅広い知識が求められる
- 資格必須の職業ではないが、資格の勉強をしながら知識・スキルを身に付けていくことは効率的
- 人材ニーズの高さから平均年収水準も高く、将来性も十分な職業
- 独学でも資格取得は十分に可能だが、資格によっては取得難易度が高い