ジョブホッパーで何が悪い?メリット・デメリットの両面から考えるキャリアアップへのポイント
短期間に複数回の転職を繰り返すビジネスパーソンは「ジョブホッパー」と呼ばれ、転職活動の際、これまではネガティブな要素として捉えられるケースも見受けられました。しかし近年では、複数の企業にて培われた豊富な業務経験や、多彩なスキル・知見が評価され、転職市場では即戦力人材として見直されつつあります。
終身雇用の時代と比較して、いまでは転職は当たり前のものとなりました。特にITやエンジニア領域ではその傾向がより顕著であることから、ジョブホッパーのエンジニアは珍しい存在ではなくなっています。
本記事では、ジョブホッパーのメリットやキャリアアップのポイントについて解説します。
Contents
ジョブホッパーとは
ジョブホッパーとは、短期間に複数回の転職を繰り返した経験を持つビジネスパーソンを呼称する言葉です。
転職の回数などについて具体的な定義はないものの、一般的には就職・転職から3年以内に転職を繰り返す人、あるいは1社あたりの在籍期間が1年未満の職歴が複数ある人が、ジョブホッパーと呼ばれるケースが多いようです。
ジョブホッパーとキャリアビルダーの違い
ジョブホッパーと類似した意味で使われる言葉に「キャリアビルダー」がありますが、厳密には両者の意味は異なります。
キャリアビルダーとは、転職を通じてキャリアの積み上げを成功させているビジネスパーソンを指す言葉です。ジョブホッパーと同様に転職を重ね、複数社にて横断的なキャリアを形成し、転職の際には前職よりも年収やポジションの向上に努める人材、とイメージするとよいでしょう。
また、キャリビルダーの特徴には、業種や職種を一貫させてキャリアアップを図っていることも挙げられます。一方、ジョブホッパーの言葉は、同一の業種・職種内でのキャリアアップに限定せず使用されるケースも多いです。
ジョブホッパーのメリット
複数回の転職を経て、ジョブホッパーは次のようなメリットを獲得できると考えられています。
- スキルの幅が広がる
- 幅広い人脈が形成される
- コミュニケーション力が高まる
- 新しいことに挑戦できる
ジョブホッパーの最大ともいえるメリットは、さまざまな業界や業種にて培われる豊富な業務経験になるでしょう。幅広いスキルや知見の獲得という観点では、ひとつの会社に勤め上げるよりも近道になると考えられます。
また、広範な業務を経験して向上するコミュニケーション力や、多様な人脈形成もジョブホッパーならではの強みです。もちろん、常に新しいことに挑戦できる刺激も大きな利点になります。
スキルの幅が広がる
ひとつの企業にて長く勤め上げた場合、特定の業界・業種についての知見やスキルは日々深まっていくものの、多様な職能・スキルの獲得は困難になる。そんな懸念はぬぐい切れません。
一方、転職を通じてさまざまな経験を積めるジョブホッパーは、努力次第で多彩なスキルを獲得し続けられます。
たとえば、営業職を経験した後に、エンジニアとして転職するケースです。顧客ニーズへの深い洞察や、プロジェクト全体を俯瞰する客観的な視点など、営業経験者ならではの特性を備えたエンジニアとして、社内で重宝される独自ポジションを確保できるでしょう。
幅広い人脈が形成される
ジョブホッパーは人脈づくりの機会にも恵まれます。転職のたびに人脈の厚みを増していくことで、転職先での業務へのフィードバックや、リファラル採用への貢献なども期待される、価値の高い人材としての立ち位置を確保できるでしょう。
このように、築きあげてきた人脈が転職先での評価向上につながるケースは少なくありません。
コミュニケーション力が高まる
ひとつの企業に長く勤めるよりも、多様な人材とふれあう機会が多くなる点もジョブホッパーの特徴です。さまざまな価値観の同僚や上司、取引先と出会い、交流することにより、多くの人に好まれるコミュニケーション力を身につけるチャンスも増えていきます。
高いコミュニケーション力は、転職先で活躍するためにも欠かせない要素です。社内外における人間関係を円滑化するスキルは、より自身が働きやすい環境の構築にも直結します。
新しいことに挑戦できる
既存の職場を離れて新たなポジションに挑戦することで、キャリアアップや収入の向上を狙えることもジョブホッパーのメリットです。
転職を機会に新たなスキルを獲得していくことで、幅広い業務に対応できるユーティリティ性を備えた希少人材となり、転職市場での評価も高まります。
ジョブホッパーのデメリット
多くのメリットがある一方で、ジョブホッパーにはいくつかのデメリットも指摘されています。
- 協調性や忍耐力に欠けると誤解される
- ネガティブなイメージを持っている企業もある
- 働きながらの転職活動の難しさ
やはり懸念されるのは、転職活動への悪影響です。ひとつの企業に長く勤めないジョブホッパーは、「協調性がないのでは?」「すぐに退職してしまうのでは?」などとマイナス評価を受けることもあります。「転職は当たり前の時代」と、すべての企業が肯定的な認識をしていると考えるのは誤りでしょう。
協調性や忍耐力に欠けると誤解される
転職を繰り返すジョブホッパーは、「転職理由は人間関係にあるのでは?」「コミュニケーション力に問題があるのでは?」など、協調性に乏しいイメージを長らく持たれがちでした。また、「業務を放り出し、転職を繰り返しているのでは?」といったように、忍耐力が疑問視されることもあります。
転職市場が活性化する現在においても、これらのイメージが完全に払しょくされているとは言い切れません。これまでの転職の理由を「人間関係」や「業務」に帰結させず、あくまでもスキルアップやキャリアアップを目指した結果であることを真摯に伝える姿勢が、ジョブホッパーには求められるでしょう。
ネガティブなイメージを持っている企業もある
短期間に転職を繰り返すジョブホッパーに対し、いまもネガティブなイメージを持つ企業もあります。前述の通り、協調性や忍耐力に乏しく、自社で活躍できる人材ではないと判断されてしまうこともあるでしょう。
ジョブホッパーにネガティブなイメージを持つ企業があることは、事実として受け入れなくてはいけません。ジョブホッパーの転職活動では、これまでの経験から形成したスキルマップや人脈をアピールするなど、企業が割く採用コストに見合う人材であることを伝えましょう。
働きながらの転職活動の難しさ
ジョブホッパーの課題には、働きながらの転職活動の難しさも挙げられます。現在の業務に取り組みながら、空いた時間に仕事を探し、求人に申し込み面接を受け、と転職に関するさまざまなタスクに対応することは容易ではなく、多くの負荷がかかります。
転職活動に割く負荷の軽減にあたっては、派遣社員の選択肢も視野に入ります。派遣社員としての就業では、面接をはじめとする転職活動の関連タスクが課されません。そのうえで、複数の派遣先企業にて業務経験を積めることから、前述したジョブホッパーのメリットも得られます。
また派遣社員にとって、多様なスキルの獲得は時給アップにも直結します。特にエンジニア領域では、正社員としての昇給と比較しても、大きなインセンティブの獲得は十分に見込めるでしょう。
ジョブホッパーが多い業種
エンジニア領域をはじめとするIT関連職、あるいは外資系企業などは、特定のスキルをベースにキャリアアップ転職を志向する人が多く、ジョブホッパーのイメージとも結びつけられやすい業種です。
なかでもシステムエンジニアやプログラマーなどは、優秀な人材の不足傾向が長期化しています。結果、スキルの研摩によって、若い世代でもキャリアアップを図りやすい環境が整っており、転職市場においてジョブホッパーには一定の優位性が認められる状況です。
外資系企業の場合も、転職回数の多さは採用時のマイナスイメージにはつながらない傾向です。そもそも外資系企業には終身雇用の概念自体がないため、転職を重ねるのは半ば当然視されています。
このように、IT関連職や外資系企業では転職回数は問題視されにくく、多様なスキルを有する優秀な人材が強く求められているため、ジョブホッパーとしてのキャリアアップが叶う可能性は十分です。
ジョブホッパーがキャリアアップしていくためのポイント
キャリアアップに向けて、ジョブホッパーは具体的にどのように行動していけばよいのでしょうか? 意識すべきポイントは以下の2点です。
- 専門性やスキルを磨く
- 中長期的なキャリアプランを作成する
専門性やスキルを磨く
ジョブホッパーにとって、転職を契機とした専門性の獲得、ならびにスキルアップは必須のタスクです。
業界や業種にとらわれず転職を重ねる場合は、特定の職能やスキルの研摩が難しくなるケースもあります。そのため転職する際には、自身の現在の特性を鑑みて業界や職種を絞り、これまでと類似点のある業務で専門性を深めたり、あるいはまったく新たなスキルを獲得したりと、自己研摩への強い意識が求められます。
エンジニア領域でいうならば、Webサービス開発にとどまらず、組み込みシステム開発にも関わりJavaエンジニアとしての専門性を向上させる。あるいはプロジェクトマネージャーのポジションにも挑戦し、新たなスキルを獲得するなどが挙げられます。
中長期的なキャリアプランを作成する
ジョブホッパーには、中長期的なキャリアプランの作成も欠かせません。確固たるプランに基づいた転職やスキルマップは、キャリアに一貫性をもたらします。前述した「協調性がない」「忍耐力に乏しい」といった企業からのネガティブイメージの払しょくにもひと役買ってくれるでしょう。
中長期的なキャリアプランを作成するためには、自身のスキルの棚卸しが必要です。自分はどうなりたいのか、望む姿までの道筋を逆算し、磨くべき専門性やスキルを理解し行動へと移します。
たとえばシステムエンジニアとしてのキャリアプランでは、まずはシステム開発に必要なプログラミングスキルを身につけ、続いてAIやセキュリティなどのジャンルに特化した業務を経験し、スペシャリストを目指していくようなロードマップを作成します。マネジメント力やコミュニケーションスキルを磨き、アーキテクトやプロジェクトリーダーを目指すなど、多様なキャリアプランが想定できるでしょう。
- ジョブホッパーとは、短期間に複数回の転職を繰り返した経験を持つビジネスパーソンを呼称する言葉
- 具体的な定義はないが、就職・転職から3年以内に転職を繰り返す人、1社あたりの在籍期間が1年未満の職歴が複数ある人などがジョブホッパーと呼ばれるケースが多い
- 幅広いスキルの獲得や人脈形成、コミュニケーション力の向上などがジョブホッパーのメリットであり、転職を機会に成長していくことで人材としての市場価値が高まる
- 協調性や忍耐力に欠けると誤解されるなど、ジョブホッパーにネガティブなイメージを持っている企業もある
- 働きながらの転職活動の難しさも課題であり、派遣社員として働く選択肢なども視野に入ってくる
- IT関連職や外資系企業では転職回数は問題視されにくいため、ジョブホッパーとしてのキャリアアップが叶う可能性は十分にある