最大300万円の支援金も!? テレワーク移住徹底ガイド
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、急速に普及したテレワーク。
環境さえ整っていれば場所にとらわれず仕事ができることから、テレワーク経験者の25%が地方移住への関心を強めています。
政府も地方創生の流れの中で地方移住を後押し、最大100万円を支給する移住支援制度も用意。全国の地方自治体も、移住を促進するためのさまざまな支援制度を充実させています。
この記事ではテレワーク移住をお考えの方に、国や各自治体の支援制度などをご紹介します。
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テレワーク経験者の4人に1人が地方移住に関心あり
今、テレワークを利用して地方で暮らす、“テレワーク移住”への関心が高まりつつあります。
新型コロナウイルス感染症が拡大するにつれ、“3密”を避けるワークスタイルとしてテレワークが推奨されたこともあり、東京都内では従業員30人以上の企業のうち約6割がテレワークを導入したという報告があります。導入率は令和元年度に比べて2倍以上になり、中堅・小規模企業でも導入が加速しました。導入企業の約4割はテレワークを継続し、さらに拡大したいと考える企業も約4割にのぼっています。
一方で、働く人の34.6%が不定期も含めてテレワークを経験しています。都市部ほどその比率は高く、東京都23区では半数以上の55.5%にも達しました。そうしたテレワーク経験者の64.2%が感染症拡大前に比べて仕事よりも「生活」を重視するよう意識が変化し、住みやすさを求めて24.6%の人が地方移住への関心を強めていることもわかりました。地方移住への関心は若いほど高く、特に東京都23区在住の20代では35.4%にものぼっています。
テレワーク経験者の意識変化
出典:内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年6月21日))
テレワークを活用すれば地方で暮らせるという認識が広まりつつある中、政府は地方創生の観点から、中小企業に対するテレワーク導入経費の補助や、テレワーク導入を図る企業や地方公共団体等に対する専門家(テレワークマネージャー)の無料相談、地域の光ファイバー整備などテレワーク環境の整備等、テレワークの全国的な裾野拡大に向けた取り組みを進めています。
理想の生活を求めて移住する「ライフスタイル移住」は、新型コロナ感染症以前から注目されていましたが、テレワークと地方創生への動きがその流れを加速させているようです。実際、各地で開かれている移住相談会への参加者数も大幅に増え、テレワーク移住はポストコロナ時代のニューノーマルになるのかもしれません。
地方創生移住支援事業で最大100万円補助
「テレワークで働いて、地方で暮らしたい。でも、先立つものが──」と、資金面で二の足を踏んでいる方が知っておきたい制度が、最大100万円を補助してくれる「地方創生移住支援事業」です。 同事業では、東京一極集中の是正や地方の人材不足解消のため、地方移住を促進するための支援金が用意されています。2016年度から当初予算に計上されてきた制度で、これまでは地方に移住し、しかも地方自治体が定めた企業に就業する、または起業することが交付の条件でした。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大で高まった働き方の変化を踏まえ、2021年度から制度が拡充され、テレワークで東京の仕事を続けながらでも交付されることになりました。
ただし、制度を利用するにはいくつかの条件があります。ここでは主な条件を抜粋してご紹介しますが、正確に知りたい場合は「移住支援金」(内閣官房・内閣府 総合サイト)でご確認ください。
移住支援金(最大100万円※単身の場合は最大60万円)
地域の重要な中小企業等への就業や社会的起業をする移住者を支援
対象者:以下のすべてに該当する方
- 【移住元】東京都23区の在住者または通勤者(5年以上)
- 【移住先】東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)以外の道府県や東京圏内の条件不利地域への移住者
- 【就業・起業】実施する都道府県がマッチングサイトに移住支援金の対象として掲載する求人に新規就業するか、起業支援金の交付決定を受けた方
起業支援金(最大200万円)
地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点をもった起業(社会的起業)を支援
対象:以下のすべてを満たすこと。
- 東京圏以外の道府県や東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと
- 公募開始日以降、補助事業期間完了日までに個人開業届または法人の設立を行うこと
- 起業地の都道府県内に居住していること、または居住する予定であること。
起業支援金+移住支援金(最大300万円※単身の場合は最大260万円)
地方へ移住して社会的事業を起業した場合に交付
テレワーク移住支援金(2021年度~)※
東京の仕事を続けつつ地方に移住した人に最大100万円を交付
地方でIT(情報技術)関連の事業を立ち上げた場合は最大300万円を交付
※政府は21年度予算の概算要求に地方創生推進交付金として1000億円を計上する方針。2020年12月時点では詳細未定。
期間等
- 移住先都道府県が移住支援事業の詳細を公表した後の転入であること
- 支援金の申請が転入後3カ月以上1年以内であること
- 申請後5年以上継続して移住先市町村に居住する意思があること等
移住支援金交付までの流れ(例)
出典:内閣官房・内閣府 総合サイト「移住支援金」
※ ここでご紹介しているのは条件の一部です。必ず「移住支援金」(内閣官房・内閣府 総合サイト)または各都道府県の移住支援事業サイトでご確認ください。
注目の移住先はここ! 移住支援制度も多彩
移住希望地は、長野県、広島県、静岡県、北海道が幅広い年代で人気を集めています。自然が豊かであるのはもちろん、定住を促進するための子育て環境が充実しているのが特徴です。また県が一丸となって、熱心に移住へのはたらきかけをしているという点もランキング上位の要因といえます。また、最盛期を過ぎたリゾート地も人気です。リゾートマンションを改装して移住者を受け入れる準備を進めている自治体もあります。
都心では住めなかったような広い住宅に住むことができるほか、保育所の課題が解決したり、職住接近により通勤時間が減少したり、ワンオペ育児に悩む子育て世代の一助になることも期待できます。
年代別移住希望地ランキング(2019) 単位:% n=10,625
出典:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター「2019年移住希望地域ランキング公開」(2020年2月25日)
先にご紹介した地方創生移住支援事業は対象者が限られますが、さまざまな移住支援制度を独自に用意している自治体は少なくありません。支援は「住まい」「結婚・子育て」「仕事」「移住・体験」「交通」など多岐に亘り、自分や家族のライフスタイルに適した支援制度のある自治体を移住先にするという選択肢もあります。
ここでは、自治体が提供している移住支援制度をいくつかピックアップしてご紹介します。いずれも抜粋要約です。金額や条件などが変更されている可能性もありますので、詳細については必ず各自治体のサイトなどでご確認ください。
【北海道赤井川村】10年以上居住する方に300万円の住宅建設資金を支援
「赤井川村移住・定住支援事業」
- 対象:村内に住宅を新築し、その住宅に住所を有し、10年以上居住する人
- 概要:住宅建設資金300万円を支援(専用住宅・併用住宅の場合)。3年間は固定資産税半額
- その他の支援
- 中学生海外研修授業無料(オーストラリアで語学研修)
- 小・中学生の給食費無料
- 中学校卒業まで医療費無料
- 小・中学生のキロロスキー場のシーズン券無料 等
詳しくはこちら(2020年12月現在)
https://www.akaigawa.com/kurashi/kensetu/post_35.html
【福島県】県営住宅の空き住戸を1万円で提供
「来てふくしま体験住宅提供事業」
- 対象:県外から県内への移住を検討している方、県内での起業を検討している人
- 概要:福島市、会津若松市、郡山市、いわき市、白河市、南相馬市の県営住宅を、3カ月間(最長1年間まで延長可)月額1万円で提供(駐車場使用料、共益費等は別途使用者負担)。生活に最低限必要な家財等は県で備え付け(例:カーテン、エアコン、照明器具、コンロ、冷蔵庫、電子レンジ、液晶テレビ、洗濯機、ガス瞬間湯沸かし器)
- 主な要件
- SNSで移住または起業に向けた県内での活動および福島の魅力について情報発信すること
- 団地の自治会活動へ参加すること
- 申請日時点で20歳以上49歳以下であること
詳しくはこちら(2020年12月現在)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41065a/kitefukushima.html
【長野県小海町】新築住宅の取得に100万円を助成
「子育て世代住宅取得助成事業」
- 対象:19歳未満の子どものいる世帯、または夫婦のどちらかが40歳以下の世帯
- 概要:居住部分が50m2以上の物件をした場合、新築住宅100万円、増築・中古50万円を助成。新築、増築住宅を町内業者で建設した場合20万円加算。19歳未満の子どもがいる場合、1人につき10万円が加算
- その他の支援
- 保育料負担軽減制度:満3歳以上は無料。満3歳未満は所得に応じて軽減
- 18歳まで医療費支給
- 高校生等通学費補助事業:通学定期券の購入費用の1/3を現金支給で補助 等
詳しくはこちら(2020年12月現在)
https://www.koumi-town.jp/office2/archives/ijyuteijyu/post-506.html
【静岡県静岡市】6カ月以上の居住実績に奨励金最大100万円
「静岡市住まい空き家中山間地域移住奨励金」
- 対象:中山間地域空き家情報バンクを利用して移住し、6カ月以上居住実績がある人
- 概要:単身世帯20万円、世帯構成員が複数の世帯40万円、世帯構成員の中学生以下の子ども1人につき20万円加算(上限3人まで)
「静岡市住まい空き家中山間地域移住用住宅改修事業補助金」
- 対象:中山間地域空き家情報バンクに掲載されている賃貸住宅(一部除外あり)を借り受け、移住する人
- 概要:単身世帯20万円、世帯構成員が複数の世帯40万円を交付。世帯構成員の中学生以下の子ども1人につき20万円加算(上限3人まで)
詳しくはこちら(2020年12月現在)
http://www.okushizuoka.jp/live/
【福井県池田町】住宅の新築・増築・改築に最大500万円を補助
「住宅多世代化支援事業」
- 対象:45歳以下で住宅の新築・増改築後、同居家族と10年以上定住する人
- 概要:結婚またはUターン等を機に世代を新たに増やして同居するために池田町内にある住宅の新築・増築・改築を行う場合、その経費の30%(上限500万円)を補助
詳しくはこちら(2020年12月現在)
https://www.town.ikeda.fukui.jp/kurashi/sumai/1471/p001347.html
【広島県安芸郡坂町】定住を促進するため町営住宅を提供。子育て支援も充実
「定住促進住宅・団地」
- 対象:子育て世帯やUターンなど若い世代
- 概要:移住・定住を図るための賃貸住宅(約53㎡/戸)を提供(家賃:1・2階 35,000円、3階34,000円、4階33,000円、5階32,000円、その他共益費800円、駐車場使用料2,000円)
「子育て世帯引越支援事業」
- 対象:子育て世帯
- 概要:「町外から転入」または「町内で持ち家に転居」する場合、引越費用、登記費用、仲介手数料、礼金の一部を助成(引越費用等の1/2、上限10万円)
「乳幼児等医療費給付事業」
- 対象:0歳から中学校3年生までの乳幼児等
- 概要:医療費の自己負担分の一部を助成
「空き家改修等支援」
- 対象:町外転入者または空き家所有者
- 概要:空き家改修や家財道具用を処分に必要な費用の一部を補助(費用の1/2、上限30万円、町外転入者が子育て世帯の場合、最大20万円加算)
詳しくはこちら(2020年12月現在)
http://www.town.saka.lg.jp/kurashi/seikatsu/
【兵庫県洲本市】転入世帯に最大36万円の補助金を交付
「転入世帯定住促進補助金等交付事業」
- 対象:洲本市に転入した、世帯主の年齢が満50歳未満の2人以上の世帯
- 概要:
- 最長3年間、転入世帯定住促進補助金(月額1万円)を交付。Uターン世帯には、1年間、月額1万円を加算して交付。
- 転入日から3年以内に住宅を新築または購入した場合に、3年間転入世帯住宅取得奨励金(居住部分にかかる固定資産税相当分)を交付。
「新婚世帯住宅対策補助金等交付事業」
- 対象:夫婦の年齢の合計が満80歳未満の新婚世帯
- 概要:
- 民間の賃貸住宅で生活している場合に、最長3年間、新婚世帯家賃補助金(月額1万円)を交付
- 婚姻日から3年以内に住宅を新築または購入された場合に、最長3年間、新婚世帯住宅取得奨励金(月額1万円)を交付します。
詳しくはこちら(2020年12月現在)
https://www.city.sumoto.lg.jp/site/tunagarumachi/1516.html
【鹿児島県いちき串木野市】定住促進住宅地を購入し10年以上居住すれば、最高280万円の補助金
「定住促進補助制度」
- 対象:市の定住促進住宅地を購入し、市民として永住または10年以上居住する人
- 概要:次の補助金を交付
- 住宅の新築・購入資金の5%を補助(最高50万円)
- 中学生までの子ども1人につき30万円(最高90万円)
- 土地購入費の10%を補助(最高100万円)
- 購入者またはその配偶者が40歳未満の場合20万円
- 市内業者と新築住宅の建築契約または売買契約の場合20万円
「未来の宝子育て支援」
- 概要:次の支援金を支給
- 出生祝金:第1子2万円、第2子3万円、第3子以降10万円
- 誕生日祝金:第3子以降の子どもを出産した人に、1歳から5歳までの誕生日ごとに1万円
- 入学祝金:第3子以降の子どもが小学校に入学するときの保護者に5万円
「結婚新生活支援」
- 概要:条件を満たした場合、1世帯あたり上限24万円まで補助
詳しくはこちら(2020年12月現在)
http://www.city.ichikikushikino.lg.jp/seisaku1/kurashi/shushoku/u-turn.html
この他にも多くの自治体が移住支援のための制度を用意しています。各自治体のサイトや、以下のサイトなどを参照して、最適な移住先を選んでみてはいかがでしょうか。
いきなり完全移住は……という方には「お試し移住」の検討を
自治体の中には、移住を検討している方に移住体験してもらう「お試し移住」制度を設けているところもあります。こうした制度を利用すれば、日常の買い物はどうするのか、学校や保育園、病院は近いのか、実際の土地柄はどうなのか、実際に体験することができます。
たとえばパーソルグループ3社は、宮崎県日向市が主催する「ワーケーションオフィス調査事業」に参画し、2020年9月より実証実験を行っています。
【宮崎県日向市】1週間の「おためし移住体験」、宿泊費など10万円補助
お仕事紹介付きワーケーション事業「Surf Office」
- 対象:SE・プログラマ、WEBクリエイター、開発エンジニアなどのIT系職種の経験者
- 概要:海好き・サーファーのエンジニアをターゲットとした1週間の「おためし移住体験」プログラム
- 交通費や滞在期間中のレンタカー代・宿泊費など合計10万円まで補助
本当に都市部の暮らしが自分に合っているのか、本当に都市部でないとできない仕事なのか、多くの人が見つめ直しています。テレワークの知名度や理解度が上がり、時代や自治体の後押しがある今、地方に目を向けてテレワーク移住を検討する価値は十分です。