Go言語にできることと「オワコン」の誤解|高い将来性と可読性・汎用性を考察
Go言語(Golang)は、2009年にGoogleが開発・リリースしたプログラミング言語です。リリースから徐々に開発環境が整い、2015年にはスマートフォンにまで開発のフィールドを広げています。
シンプルな設計で多くの開発ニーズに対応できる汎用性の高さや、初心者でも読み書きが容易な可読性、処理速度の速さなどから人気を集めており、2024年8月のTIOBE指標では9位にランクイン。将来性の高さから、エンジニア人材市場でも注目度が高い言語です。
多くの企業がGo言語を扱えるエンジニアの採用を急いでいますが、急伸する需要に対して供給が追い付いていない現状のため、Go言語の習得はいまが狙い目のタイミングといえるでしょう。並行処理を重視するシステムなど現代的な開発にも優れるGo言語について、その特徴やできること、メリット・デメリットなどを紹介していきます。
POINT
- Go言語は2009年にGoogleが開発・リリースした比較的新しい言語
- コードがシンプルで、初心者でも習得しやすい
- JavaやC++と同じく高速なコンパイルと実行が可能で、Pythonのように可読性の高いコードを記述できる、バランスの取れた言語
- 記述様式が限定されているため内部での処理も簡易化されているほか、並行処理も得意
Contents
Go言語とは
画像引用元:Go公式サイト
(※リンク先サイトは英語表記です。Google Translateで日本語表示に切り替えています)
Go言語は、2009年にGoogleによって開発されたプログラミング言語です。正式名称は「Go(ゴー)」ですが、「Golang(ゴーラング)」や「Go言語」と呼ばれるのが一般的です。
Go言語の開発は、UNIXの開発に携わったロブ・パイク氏と、UNIX・C言語の開発に携わったケン・トンプソン氏が行っています。C言語をモデルとし、文法の多くを受け継いでおり、C言語並の処理速度、さらにC言語以上のシンプルさと使い勝手の良さが特徴です。
また、macOS、Windows、LinuxなどさまざまなOSで動作する、環境を選ばない点も人気の理由です。そのため、比較的新しい言語であるにもかかわらず、多くの企業がシステムやソフトウェア開発に採用しています。
Go言語の特徴
Go言語の特徴は「シンプルさ」「効率性の高さ」に集約されます。簡素化された構文で高い可読性が確保されていることから、外部のライブラリに頼ることなく開発が可能。大規模なチーム開発などにも適しています。実行速度にも優れ、コンパイル言語であることから処理も高速で、総じて取り扱いやすい言語といえます。
そもそも、Go言語の設計思想は、既存のプログラミング言語に対する改善点を踏まえたものです。実行速度や可読性などの観点から、他の主要言語と比較すると次のようにまとめられます。
| Go言語 | Java | Python | C++ | |
|---|---|---|---|---|
| コンパイル速度 | 高速 | 中程度 | なし(インタプリタ) | 中程度 |
| 実行速度 | 高速 | 高速 | 中程度 | 高速 |
| 可読性 | 高い | 中程度 | 高い | 低い |
| 並行処理 | Goroutines | スレッド | スレッド | スレッド |
つまりGo言語は、JavaやC++と同じく高速なコンパイルと実行が可能で、Pythonのように可読性の高いコードを記述できる、バランスの取れた言語といえます。
これらの特徴を踏まえ、Go言語を理解するうえで欠かせない、次のポイントについて具体的に見ていきます。
- 記述がシンプル
- コンパイルと処理速度が速い
- 軽量な並行処理
- 標準パッケージが充実
記述がシンプル
Go言語は、扱いの難しい機能を排除したシンプルな言語構造となっており、誰が書いたコードでも読み解きしやすく、高い開発効率を実現します。シンプルな分、厳格な記述ルールが存在しているため、書き方で躊躇するということもありません。
記述しやすい・読みやすいといった点から、経験の浅いプログラマーでも比較的学習しやすい言語といわれています。
コンパイルと処理速度が速い
Go言語は機械語に一括変換してから実行するコンパイル言語であり、実行時にインタプリタを介さないことから、その処理速度は他のプログラミング言語と比較しても高速です。
さらに、記述様式が限定されているため内部での処理も簡易化されているほか、並行処理が得意なことも、軽量・高速処理に寄与しています。
軽量な並行処理
Go言語は軽量な並行処理機能「Goroutines」を標準でサポートしており、Webサーバーやリアルタイムデータ処理システムなど、高スケーラビリティが求められるシステムに適しています。
Goroutinesは数KB程度のスタックメモリで動作するため、従来のスレッドよりも圧倒的に少ないリソースで並行処理を実現できる仕様です。
標準パッケージが充実
Go言語には、制作ツールがパッケージ化された「Go mobile」や「Go Cloud」など豊富なパッケージが標準装備されており、サードパーティライブラリに頼ること無く開発に取り組めます。
Go言語でできること・作れるもの
アプリやWeb、APIなどの複雑なツールから、ちょっとしたツールの開発まで、Go言語のみで幅広い領域をカバーできます。
- アプリケーション開発
- Webサーバー構築
- CLI開発
- API開発
アプリケーション開発
Go言語はスマートフォン向けのアプリケーション開発に使用されています。AndroidのみならずiOSにも対応しており、開発環境を選ぶこともありません。
また、モバイルアプリの制作ツールがパッケージ化された「Go mobile」や「Go Cloud」を利用すれば、Web・アプリ用など書き方を変えることなくスマートフォンアプリの開発ができる汎用性の高さも人気の理由の1つです。
Webサーバー構築
Go言語では、Net/httpパッケージを使用すれば、Webサーバーを簡単に構築できます。他言語でWebサーバーを構築する際に必要なApatchなどは必要とされません。サービスからサーバーの構築まで、Go言語で一貫してカバーできるため、作業効率も向上します。
CLI開発
CLIとは、Command Line Interface(コマンドラインインターフェース)の略で、コマンドを実行する画面で動くツールのことです。
Go言語はクロスコンパイル機能により環境を選ぶことなく、OSやバージョン、プラットフォームによる依存関係を気にせずに開発できるため、CLIで動作するアプリ制作にも最適な言語といえます。
API開発
APIとは、Application Programing Interface(アプリケーションプログラミングインターフェイス)の略で、アプリケーションやソフトウェアなどの一部を公開することで、外部ソフトと機能を共有できるようにするインターフェイスの仕様です。
Go言語でのAPI開発には、さまざまなメリットがあります。
- サーバー移設の場合でも追加開発が必要とされないことが多い
- 並行処理のコーディングが容易
- メンテンナンスや開発者が変わっても対応しやすい
Go言語の「環境にとらわれない」「記述が容易」「誰でも読みやすい」といった特徴が、API開発に最大限に発揮されます。
GO言語のメリット
ここまで見てきたGo言語の特徴から、メリットとなる部分をまとめます。
- プログラミング初心者でも理解しやすい
- 並行処理が可能
- 安全性が高い
プログラミング初心者でも理解しやすい
Go言語は記述がシンプルであることから、初心者でも理解しやすい言語です。経験の浅いプログラミング初心者であっても、比較的習得しやすい言語に位置づけられるでしょう。
並行処理が可能
並行処理とは、複数の動作を同時に処理することです。Go言語では、マルチスレッド機能であるGoroutinesや、Goroutinesにメッセージを送るチャネルを駆使して、CPUへの負荷を気にすることなく処理を実行できます。
また、並行処理に加えて、PHPが苦手とする分野であるエラーチェックにも優れている点から、PHPの代用言語として用いられる場合もあります。
安全性が高い
Go言語は型宣言が必須のため、メモリの解放忘れが起こりにくく、安全性の高い言語として認識されています。また、記述方法のルールが厳格で、複数人が携わっても表記ブレが置きにくいといった点においても、安全性が保たれやすい言語です。
Go言語のデメリット
一方、Go言語にはデメリットも想定され、同じような処理・クラスを作るのに再度記述が必要、エラー箇所が分からないといった点が懸念されます。
- Genericsがない
- コードの継承がない
- 例外処理がない
Genericsがない
Genericsとは、「<>」記号で範囲指定することで、特定のデータ型に依存しないプログラム処理を実行するための機能です。汎用性の高いGenericsがないとなると、同じような処理を作るために都度、型を用意しなければいけなくなります。
コードの継承がない
コードの拡張性を高めたり再利用したりするうえで便利な「継承」のサポートがない点もGo言語のデメリットとなります。すでにあるクラスの構造を発展させて新たなクラスを作ることができないため、新たなクラスを作るのに1から構造を作る必要があるのです。
ただし、埋め込みという形で代用が可能です。継承するよりも少々手間がかかりますが、継承とほぼ同じようなこともできます。
例外処理がない
例外処理とは、コンパイル時には上手くいった処理が、実行時にエラーとなった場合に、「処理を止める」や「エラーメッセージを出す」といった処理のことです。
例外処理がないことで考えられるデメリットは、どこでエラーが起きているのか分からないといった点です。そのため、エラーの原因を突き止めるのに時間を要することが多々あります。
Go言語の高い将来性と「オワコン」の誤解
Go言語は、記述のシンプルさや優れた処理速度、軽量な並行処理といった数々のメリットから、多くのエンジニアや開発現場にて支持されているプログラミング言語です。
しかしその一方で、一部からは「Go言語はオワコン」といった声が聞かれることもあります。その背景には、Go言語ならではの特性が関係していると考えられます。
まずは記述方法のルールが厳格である、Go言語の安定性の高さです。これはGO言語のメリットにも数えられるものですが、安定性を重視している言語であることから目新しさに欠け、ほかのプログラミング言語と比較して新機能の追加などが少ないと見られることがあります。この安定性ゆえに、一部のエンジニアには「進化が遅い」と映るのかもしれません。
また、Rust言語のように、Go言語と同じくパフォーマンスの効率性と安全性を重視した言語の台頭もあり、そのことからGo言語が劣勢と捉えられる場合もあります。
しかし、これらの指摘は正しいとは言えません。むしろGo言語は市場ニーズに合致した進化を続けており、次のような理由から今後も広く利用されると予想される、高い将来性が見込める言語です。
- 安定性の価値:そもそもGo言語の安定性の高さはメリットであり、長期保守が必要な大規模システムや、変化が少ないインフラ構築などに適している。安定したAPIなどは、多くの企業にとって信頼性のある選択肢となり続ける
- 持続的なサポート:Go言語のコミュニティはいまも活発であり、他のプログラミング言語に押されている状態ではない
- 新機能の導入:新たなライブラリやツール、ベストプラクティスが提供され続けている
つまり、Go言語は進化のペースや他言語との競争力が劣ると誤解され「オワコン」と言われることがあるものの、その認識は端的に誤りであり、実際にはそのシンプルさや安定性、並行処理能力などが高く評価されており、今後も成長を続ける見込みです。特にクラウドネイティブや大規模システムにおいて、Goの需要は今後も持続すると予想されます。
Go言語のインストール方法
Go言語はGo公式サイトから以下の手順に沿ってインストールできます。
画像引用元:Go公式サイト
(※リンク先サイトは英語表記です。Google Translateで日本語表示に切り替えています)
画像引用元:Go公式サイト
(※リンク先サイトは英語表記です。Google Translateで日本語表示に切り替えています)
ダウンロードしたファイルを開くとダイアログが表示されるので、「Next」をクリックします。
ファイルの保存先を選択して、「Next」をクリックします。
クリックすればインストールが始まります。
このように、Go言語はGo公式サイトから簡単にインストールが可能です。さらに公式のチュートリアルサイト(※英語版)も公開されており、すぐに習得に取り掛かれます。
エンジニアが「次に学びたい言語」に選ばれ、さまざまな企業や人材市場からも高い関心を寄せられているGo言語。この機会にぜひ学習してみてはいかがでしょうか?
- Go言語は2009年にリリースされた比較的新しい言語
- C言語の処理速度を受け継ぎ、記述はよりシンプルになっている
- コードがシンプルで、初心者でも習得しやすい
- コンパイル言語であるため処理速度が速い
- 標準パッケージが豊富なため、外部ライブラリに頼る必要がない
- アプリケーション・CLI・APIの開発、Webサーバーの構築が可能
- Generics・継承・例外処理がないことがデメリット

