【ロケット技術】ロケットエンジンに必要なバルブシステムとは?
日本のH-IIAロケットは打ち上げ成功率も高く、世界中から日本のロケットエンジンに注目が集まっています。
また、ロケットエンジンをテーマとした大人気小説シリーズ『下町ロケット』もベストセラーになり、実写化されたTVドラマも高視聴率を記録し、エンジンの機構・構造に興味を抱く方も多いのではないでしょうか。
今回はそんなロケットエンジンになくてはならない“バルブシステム”をご紹介します
エンジンに必要不可欠なバルブシステムとは
下町ロケットでは、町工場である佃製作所が開発・設計したバルブシステムと、それを利用したい帝国重工との特許問題が取りざたされていました。
そんな問題が起こるほど高度な技術を要しロケットの主幹部となるのがバルブシステムです。
まず、バルブシステムがないとエンジンはどうなるのでしょうか。
そもそもロケットを推進させるのは、燃料の爆発をエンジンで行ってそれをエネルギーとしたものです。
ところが、ただ燃料を爆発させるだけは過剰に燃料を供給してしまい、エネルギーの暴走を誘発し兼ねません。
そうならないために、燃焼する状況下でも一定の燃料供給を可能にし、安定感を出すのがバルブシステムなのです。
バルブシステムはロケットに限ったことではありません。
バイクのエンジンバブルやトイレの流体を制御するピストンバルブ、オーバースプレーすることなく液剤の塗布量を調整するスプレーバブルなど、ロケット以外のものにも多く使われています。
車はかつて固定されたバルブシステムが使われていましたが、エンジンの回転数や吸排気のタイミングを合わせて開閉するだけのバルブは、効率が悪く燃費もよくありません。
そこで、エンジンに合わせて排気量や吸気・排気タイミングを細かく変化させることのできる「可変バルブ」が開発され、エンジンを効率よく稼働させることに成功しました。
可変バルブは、リフト量を変化させない位相変化型や2種類のカムを使い分けるカム切り替え型といったバリエーションがあり、用途に合わせて使われています。
このようにバルブシステムは、パフォーマンスを大きく変える緻密な技術を要するものと言えます。
どのような会社がバルブを作っているのか
そそんな耐久性が高く緻密な技術を持ったバルブですが、さまざまなメーカーが手掛けています。
一部のメーカーをご紹介しましょう。
■ キッツ
ロケットエンジンよりライフラインで使用されるバルブをメインで作っているメーカー。国内のバルブメーカーとして圧倒的シェアを誇っています。水道やガスのメーター周り、工場内の空気配管、電車の圧縮空気制御にキッツ製品のバルブが使われています。
■ 岡野バルブ
火力発電所や原子力発電所に向けた高温高圧用バルブに定評があるバルブメーカー。高度な鋳造技術で作られた弁は世界中から認められています。
日本のバルブは世界でも認められている?
先ほど挙げましたキッツや岡野バルブは原材料の調達から鋳造、加工、梱包に至るまで一貫した生産体制をとっています。
そのため、サプライチェーンによるコストカットが可能となり、品質も一貫管理によって高品質をキープできるのです。
これにより、キッツはアジアではトップ、世界でもトップクラスの実績を誇っています。
岡野バルブは発電所関係がメインで原子力発電所のメンテナンスなどで売り上げを伸ばしていましたが、海外の発電所開発の呼び声が高く、増益を出しています。
今後は新興国への投資が肝要
ご紹介の通り、バルブはエンジンやインフラにはなくてはならない存在です。
キッツや岡野バルブ以外にも、高純度薬品向けバルブに定評のあるインテグリスや、過酷な環境でも耐えられる精密バルブを製造するフジキンなど、バルブを手掛けるメーカーは少なくありません。
今後、新興国のインフラ投資がより盛んになると予想されます。
日本が他国のバルブメーカーに負けず採用されるよう、今後の精度向上に期待したいです。