産業機器や電気機器の設計で大活躍の3D CAD「SOLIDWORKS」とは?
多くの機器の設計現場で、急速に3D(3次元) CADの普及が進んできました。
3D CADは、機器の部品などを3Dモデルで設計し、コンピューター上で組み立てられるツール。
設計した部品が実際に動く様子や、部品にかかる力を詳細に解析することができ、高品質な製品を迅速に開発することが可能になります。
数ある3D CADの中でも産業機器や電気・電子機器の設計で広く使われているのが米Dassault Systemes SOLIDWORKSの「SOLIDWORKS」です。
ここでは、SOLIDWORKSとはどのような特徴を持つCADなのかを紹介します。
3D CADの普及に合わせて、それを使いこなせる人材へのニーズも高まっています。
3D CADに触れる端緒としてチェックしておきましょう。
そもそもSOLIDWORKSってどんなCADソフト?
「SOLIDWORKS」はミッドレンジの機械設計用3D CADです。
機械の構造設計を行う際に必要な機能と能力を過不足なく備えており、産業機器や電気・電子機器の設計に広く使用されています。
設計現場で使われるコンピューターのOSがUNIX全盛だった1995年に最初の製品が登場し、その当時からWindows完全準拠という先見性で多くのユーザーを獲得しました。
SOLIDWORKSのような機械設計用CADは、緻密なモデリングを追求して開発されています。
この点が製品表面の質感をリアルに表現するレンダリング機能などにこだわった製品が多い、デザイン用CAD との大きな違いです。
特にアセンブリ、モデリングを得意としており、動作チェック、他の部品との干渉チェックなどが可能なため、様々な部品が絡み合った部品の設計に適しています。
ただし、ミッドレンジの3D CADは、部品点数が数十万点までのアセンブリを扱うような製品の設計が対象となります。
自動車や航空機など、それ以上の規模の部品数で構成される製品やより高度な設計要件が求められる場合には、ハイエンド3D CADが使われます。
ミッドレンジの機械設計用3D CADには、他にも米Autodeskの「Inventor」、仏Missler Software の「TOPSolid」、米Siemens PLM Softwareの「Solid Edge」などがあります。
こうした中で、SOLIDWORKSは、直感的なユーザーインターフェイスによる使い勝手の良さ、さらには高い機能性と拡張性から、ミッドレンジCADの最高峰との定評があるツールとなっています。
SOLIDWORKSのユーザーインターフェイス。
出典:ダッソー・システムズ 公式YouTubeチャネルより
また、SOLIDWORKSは、「フィーチャーベース3D CAD」の1つです。
設計対象となるモノの複雑な立体モデルを、「フィーチャー(機能)」と呼ぶ箱のような部品の形状を調整し、それを積み重ねて作り込んでいく3次元設計手法を「フィーチャーベース」と呼び、このモデリング手法は、現在の3次元設計において主流となっています。
フィーチャーの形を整えながら積み重ね、複雑な部品を作っていきます。
出典:ダッソー・システムズ 公式YouTubeチャネルより
SOLIDWORKSでは、フィーチャーに対して「フィレット(角を丸め込み)」「面取り」「勾配」「突起」「切り取り」といった作業を繰り返し、思い通りの形状の部品へと成形していきます。
成形したフィーチャーには作成手順の履歴が残っており、作成過程をさかのぼって変更を加えることも可能です。
このとき、以降の作業で作成したフィーチャーにも新たな変更が自動的に反映されるため、設計変更に取りこぼしがなくなり、確実な設計ができます。
SOLIDWORKSのグレードと主な機能
SOLIDWORKSには、大きく3つのグレード「Standard」「Professional」「Premium」があります。
最も基本的なStandard版でもかなりの高機能が搭載されており、頻繁に行うモデリングや図面作成などの設計タスクを自動化しながら、精巧な部品のモデリングやアセンブリを迅速かつ効率的に作成することが可能です。
ユーザーインターフェイスは直感的で使いやすく、操作の習得も容易です。
また、作成した3Dモデルを変更した際には、1つのファイルへの変更が、それに紐付いた他のファイル、さらには製造部門や組み立て部門が用いる2次元図面にも自動的に反映されます。
さらに、様々な拡張ツールを組み合わせて、生産性をより高めることも可能です。
Professional版には、Standard版の全機能に、生産性や設計品質をさらに向上させ、設計情報をより効果的に伝えるための機能が追加されています。
具体的には
- 作成済みの標準部品のライブラリや加工コストの自動見積もりツール
- 設計段階で製造条件を勘案しながら製造できることを確認するツール
- 設計したモデルを基に製品写真であるかのような写実的画像を作り出すツール
- プリント基板などのデータを取り込む電気系CADとのデータ交換機能
などが挙げられます。
Premium版には、Professional版の機能に、シミュレーションとモーション、設計検証のツールが追加。
ばね、ダンパー、重力、構成部品間の接触、ブッシング(ねじ込み継手)などの影響を勘案して、設計したモノが実世界での動作や荷重に対して想定通りの性能で動くかどうかを検証できます。
さらに、高度な配線や配管のルーティングの機能も備えています。
設計した部品の利用時に加わる荷重などをシミュレーションで確認できます。
出典:ダッソー・システムズ 公式YouTubeチャネルより
近年では、他社製CADデータをSOLIDWORKSに取り込んでネイティブデータと同様の感覚で設計・編集ができる機能も投入され、取込先のデータに設計変更が生じた場合には、変更点を認識して設計内容を自動更新してくれます。
さらにPremium版では、Dassault Systemesのハイエンド3D CAD「CATIA V5」のデータにも対応します。
SOLIDWORKSの学習法と認定試験
SOLIDWORKSには、無料の試用ソフト付き講習が用意されています。
この講習を受講した上で、試用ソフトのチュートリアルで使い方を練習することによって、利用法を効率よく学習することが可能です。
試用ソフトの提供と講習は、SOLIDWORKSを扱う販売代理店などが頻繁に行っています。参加できる機会は多いでしょう。
内容は英語になりますが、オンラインでの120分コースのトライアルも用意されています。
また、3D CADモデリング、設計構想など、SOLIDWORKS を使った機械設計の専門知識を持っていることを認定する「SolidWorks Certification」というプログラムもあります。
認定試験は、スキルの度合いやSOLIDWORKSの利用目的に応じて、様々なものが用意されています。
まずは、初級試験に当たる「Certified SOLIDWORKS Associate(CSWA)」と上級試験に当たる「Certified SOLIDWORKS Professional(CSWP)」に挑戦するとよいでしょう。
このうちCSWAは、SOLIDWORKS の専門知識と、工学の基礎と実践的な知識を持つ人を対象にしており、CSWPは、複雑で多様なフィーチャーを使って部品や稼働するアセンブリの設計と解析を行う技術を持った人が対象です。
これらの試験は、すべてオンライン上で行われます。
さらに、SOLIDWORKS のより高度で専門的なスキルを持つ人を認定する試験も用意されています。
複雑なモデリングを行う際の課題を解決できるスキルを持つ人を認定する「Certified SOLIDWORKS Expert (CSWE)」、管理スキルを認定する試験、シミュレーション・板金・溶接・サーフェスモデリング・金型・図面など、より細分化した分野での知識やスキルを認証する試験などです。
SOLIDWORKSを利用して製品を設計している企業は数多く、プロの機械設計者にとってその使いこなしの巧拙は、設計スキルそのものだといえます。
これらの認定試験は、将来のキャリアアップに向けて自分のスキルを証明する指標にもなるので、チャレンジしてみるといいでしょう。