ビジネスシーンで活躍中!ドローン操縦士に求められるスキルと主な資格を解説
様々な応用分野で活用が急拡大しているドローン。
現在の日本では、飛ばせる場所や機体の大きさなどの様々な法規制が課されている他、ドローンを自在に操って、仕事をこなすには相応の操縦スキルが求められます。
このため、ドローンを安全、確実に操縦できる知識とスキルを持つドローン操縦士が、様々な業界で求められています。
しかしながら、現時点では、急激な需要の高まりに、全く追い付かないほど人材不足の状態です。
ここでは、ドローン操縦士の仕事の内容と、その知識と技能を身に着け認定する制度などを紹介します。
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ドローンは資格や免許がなくても飛行させることができる
現在の日本の法律では、ドローンを飛ばすのに特別は資格や免許は必要ありません。
これには理由があります。
ドローンは技術自体が発展途上の段階にあり、資格や免許として認定すべき知識やスキルを明確に定めることができないからです。
法律や制度は、一度作ってしまうと簡単に変更することができません。
拙速に免許制度を作ってしまい、その後、技術が大きく変わり認定内容が実情とかけ離れてしまうと社会が混乱すると政府は考えているのです。
ただし、空飛ぶ機械であるドローンは、自動車以上に危険性を伴うものであることは事実で、闇雲な利用を放置しておくわけにはいきません。
このため、日本国内ではその利用に際して、飛ばせるドローンの大きさや飛行地域を法規制で厳しく制限しています。
これは民生用だけではなく、産業用についても同様です。
つまり、ドローンを操縦する人は、こうした規制に関する知識や飛行に際して義務付けられる手続きを熟知しておく必要があるのです。
ドローンの操縦に資格は不要だが、どこでも飛ばせるというわけではない
出典:Christophe Fouquin ? stock.adobe.com
日本では改正航空法でドローンの飛行が制限されている
これまでも飛行機やヘリコプターのような空飛ぶ機械の運用の規則を定めた法律として、航空法がありました。
ところが、安価で一般人も操縦できるドローンが登場し、元々あった航空法が実情に合わなくなりました。
そこで、2015年に航空法は63年ぶりに大きく改正され、ドローンも法規制の対象となりました。
その内容を簡単に紹介したいと思います。
改正航空法では、従来ラジコンと同様に規制対象外だったドローンが、規制対象となる無人航空機として定義されました。
機体重量が200g以上の場合に対象となり、以下のような規制が課されています。
まず、地上または水面から150m以上の空域、または人口集中地区の上空では、安全性を確保し、なおかつ許可を受けなければ飛行させることができません。
人口集中地域とは、1km2当たり4000人以上が居住する地区のことで、私有地であっても同様に扱われます。
また、機体重量が200g未満でも、空港周辺の領域では許可なしで飛行できません。
さらに夜間の飛行は禁止され、飛行範囲も操縦者が直接目視して監視できる範囲に限られています。
その他、地上や水上、人から30m以上距離を取って飛行することが義務付けられ、イベントでの飛行は禁止、危険物の輸送や投下も禁止されています。
改正航空法によるドローンの飛行規制
ずいぶん多くの禁止事項があると感じた人も多いかもしれません。
しかし、この改正によってこれまで法律違反かどうか曖昧だったものが明確になり、逆に産業用ドローンの活用の機会が広がったという見方もできます。
もっとも、空港周辺の空域や150m以上の上空を飛行する際には空港事務所長へ、人口集中地区、夜間、人が集まる場所で飛行する際には国土交通大臣の許可を取ることだけは忘れてはなりません。
ドローン操縦者のほとんどは専業ではなく兼業
ドローン操縦士協会(DPA)の予測によると、2020年には、日本国内で14万人以上のドローン操縦士が必要になるそうです。
応用分野から見た内訳は、インフラの点検が7万5,000人、農業が2万4,000人、防犯が2万3,000人、測量が1万1,000人、空撮が5,000人、その他が5,000人というものです。
20年の時点では、まだドローン関連サービスは急激に成長している過程にあり、将来的により多くの操縦士が必要になるでしょう。
ドローンの操縦に興味がある人は、今のうちから知識を付け、スキルを磨いておくとよいかもしれません。
成長産業の常ですが、先行者は後追いする人では得られない、チャンスや利益を得ることができます。
ただし、ひとつだけ注意して欲しいことがあります。
おそらく、ドローンの操縦さえできれば、多くの企業から引く手あまたの状態になるなどとは考えない方がよいということです。
先に挙げた14万人のドローン操縦士は、そのほとんどは、本業が別にある兼業操縦士になるでしょう。
ドローンの応用分野を見れば分かることですが、それぞれの分野での固有の専門的知識が必要なものがほとんどだからです。
例えば、空撮を撮るドローン操縦士は、ドローンを操縦できるだけでは通用しません。
迫力のある映像を撮るカメラのプロとしてのスキルこそが重要なのです。
カメラマンとしての充分な知識とスキルを持つ人がドローンを操縦できれば鬼に金棒になります。
同じように、インフラの点検では点検すべきポイントを熟知している必要があり、農業では生育状態がどのような場合にドローンで肥料をまくべきなのかといった知識が求められます。
ドローン操縦者のほとんどは、応用分野ごとの専門知識を持つ兼業者
出典:kinwun ? stock.adobe.com
語学力、ITスキルと並び、ドローン操縦は高付加価値技能
今、既にインフラやプラントの建設や保守、農業、物流、測量、警備などに関連した業界の企業の中で働いている人は、ドローンの操縦スキルを身に着けることでやりがいのある仕事に就くチャンスが高まることでしょう。
また、これから就職を控える学生は、採用者の目に留まる可能性が高まると思われます。
仕事に役立つ数あるスキルとして、語学力やITスキルなどを養う人がいるのと同じく、ドローンの操縦は、今後様々な業種で従事する人の強力な付加価値となります。
しかも、知識を学び、腕を磨くこと自体を楽しめる珍しいスキルです。
ただし、日本ではドローンの操縦に様々な法規制が課せられているため、自分でドローンを用意して自由に飛ばすことは難しいと思われます。
そこで利用したいのが、ドローンスクールです。
既にドローンの普及と活用を後押しする業界団体が、ドローンの操縦者を育成する講座や学校を立ち上げ、初心者向けから上級者向けまで様々なレベルの講座を用意しています。
ニーズに合ったものを選び、受講してみてはいかがでしょうか。
ドローンの操縦技能を認定する制度を利用しよう
ドローンの操縦スキルを認定する資格制度も整備されてきました。
身に着けたスキルのアピールやスキルを学ぶ際のモチベーション向上のため、こうした資格の取得を目指してみるのも良いでしょう。
また、飛行の許可申請をする際に、こうした資格を持っていると、手続きがスムーズ進む場合もあります。
ここでは、代表的な5つの資格認定制度を紹介します。
無人航空従事者試験(ドローン検定)
ドローン検定協会が主催する、ドローンについての知識と技能を認定する民間の検定試験です。
4級以上の資格を取得すれば、「無人航空機の知識」という、国土交通省への飛行許可申請時に添付できる証明書がもらえます。
試験の実施は年6回で、レベルに応じて4級~1級までが用意されており、既に約8000人の認定者がいます。
1級では、熱力学や流体工学、無線工学などかなり専門的な知識が問われるため、どのようなドローン送受のニーズにも対応できます。
4級と3級は誰でも認定試験を受験できますが、2級は3級合格者、1級は2級合格者であることが受験資格になります。
DPA操縦士資格
一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)が主催する資格です。
飛行レベルと機体の形状によって資格の種別が設けられています。
ドローン操縦士回転翼3級では手動での目視内飛行、2級では自動での目視内飛行、1級では無人地帯での目視外飛行が可能なスキルが求められます。
インストラクター資格も用意され、整備士資格の制度も設計中です。
資格取得には、DPA認定校での受講が条件になります。
無人航空機操縦技能証明証と安全運航管理者証明証
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が執り行っている認定スクールの受講によって得られる証明証です。
無人航空機操縦技能証明証は、ドローンを安全に飛行させるための知識と操縦技能を持つことを証明する資格で、取得にはJUIDAの認定スクールでの受講したうえで、筆記と実技の試験を受験して合格する必要があります。
さらに、飛行業務の経験を積み、安全運行に関する基本知識とリスクアセスメントを修得することで、安全運行管理者証明証を取得できます。
DJI JAPAN公式認定資格
ドローンメーカーであるDJIの日本法人が管理する資格です。
DJI製ドローンの知識、操縦方法、飛行モラルを学習できる「DJI CAMP」と呼ばれる企業向けプログラムを受講し、試験に合格することで取得できます。
DJI CAMPには、「DJIスペシャリスト」「DJIインストラクター」「DJIマスター」の3段階のレベルがあります。
産業用マルチローター技能認定証
一般社団法人農林水産航空協会が運営している農薬散布用のドローンを操縦する人に向けた資格です。
これは公的資格の1つであり、ドローンを使って劇物である農薬を散布するために必要となります。
取得には指定された教習施設での教習を受講後、試験に合格しなければなりません。
また、利用する機体ごとに認定が必要となるため他機種の資格を得る場合には改めて受験し直す必要もあります。
なお、学科試験は免除されます。
現在は資格や免許がなくても操縦できるドローンですが、いずれ国家資格が作られる可能性がささやかれています。
今のうちから最新の知識の蓄積とスキルの鍛錬をしておくことで、長期にわたって有利な仕事ができることでしょう。