ナレッジは「知る」より「使う」が9割!共有の形骸化を防ぐマネジメント術とノウハウとの違い
ナレッジとは「知識」や「情報」の総称として広く使用されている言葉ですが、ビジネス用語においては、組織内に蓄積された専門的な知識やノウハウを指すことが一般的です。
このナレッジを集積・共有し、一元管理する手法は「ナレッジマネジメント」と呼ばれており、組織内での知識および情報の有効活用を目的として、多くの企業が事業に取り入れています。これにより、組織の競争力の向上や問題解決の効率化を図ります。
本記事では、ナレッジとノウハウの違いやナレッジマネジメントの重要性に加え、なぜナレッジ共有は難しいのかを考察。その対案として、ナレッジマネジメントを実践する方法である「SECIテンプレート」について、具体的な事例を交えつつ解説します。
POINT
- ビジネス用語におけるナレッジとは、「有益性の高い情報」「付加価値のある経験」を意味する
- ノウハウは「手順や技術の蓄積」を意味するのに対し、ナレッジは「再利用可能な知識の体系」。
- 目的不明瞭、共有の仕組み不足、マネジメントの機能不全などにより、ナレッジ共有は形骸化しがち
- ナレッジマネジメントとは「暗黙知」を「形式知」に変換する手法
Contents
ナレッジとは?言葉の意味・言い換え
広義におけるナレッジ(knowledge)とは、人が経験や学習を通じて得た知識や情報のことです。一般的には「知識」と訳されますが、ビジネスの現場においてはより実践的で、具体的な意味合いを持つ言葉として使われます。
たとえば、次のような知的資産がナレッジとして扱われるケースが一般的です。
【ビジネス用語におけるナレッジの意味】
- 過去のプロジェクトで得た教訓など、組織内に蓄積された経験やノウハウ
- 熟練社員の判断基準や勘所など、有益性の高い情報
- 付加価値のある経験や体系的な知識
- マニュアルに書かれていない現場のコツ
- ベストプラクティスや改善事例
このように、ビジネス文脈でのナレッジとは、業務の属人化を防ぎ、再現性ある成果を導くための「資産」と言い換えられます。
つまり「ナレッジ」と「情報」の違いは、単に蓄積されているだけでなく、活用されて初めて価値が生まれるという点にあります。そのためには、ナレッジを組織でどう共有・運用していくかが論点となります。
ビジネスシーンにおけるナレッジ活用の重要性
ナレッジをどう活用するかは、企業の成長やチームの成果に直結します。ナレッジを継続的に蓄積・共有している組織ほど、業務効率の向上や、属人化の回避、意思決定のスピードアップといった成果を上げているのです。
その理由はシンプルで、ビジネスの現場では、日々の判断や対応に「経験知」や「過去事例」が求められます。これを個人に留めるのではなく、組織全体で使える状態にすることで、次のようなメリットが生まれます。
- 初めての業務でも、過去の事例をもとにスムーズに対応できる
- メンバーごとのパフォーマンスの差が小さくなる
- 似たようなミスの再発を防げる
- 「個人依存」から「組織的対応」へと移行できる
変化の早い現代は、情報を持っていることよりも、情報をどう活かせるかが問われる時代です。ナレッジの共有と活用は業務の効率化にとどまらず、継続的な競争力のエンジンにもなり得ます。
ナレッジ共有が難しい・うまくいかない本当の理由
こうした重要性から、ナレッジの共有は多くの企業で導入されているものの、実際には「形骸化している」と感じる現場も少なくありません。「せっかくナレッジベースを作ったのに誰も見ていない」「更新されない情報ばかりが残る」といった声が聞かれるのはなぜでしょうか?
ナレッジ共有はシンプルなようで難しい、その主な原因は次の3点に集約されます。
| 目的があいまい | 「とりあえずまとめた」ナレッジベースは、利用者に必要性が伝わらずスルーされやすい |
|---|---|
| 設計の不備 | 構成が分かりづらい、検索性が低いといったナレッジベースは活用されない |
| マネジメントの欠如 | ナレッジを蓄積した後の運用方針や、管理の役割設計がないと、すぐに更新が止まり使われなくなる |
つまりナレッジ共有の形骸化を防ぐには、「誰のために」「どんなシーンで使われるか」を具体的に想定したうえで、業務フローと連動したナレッジ設計・運用が不可欠です。「作って終わり」ではなく、「使われ続ける仕組み」を前提に組み立てる視点が求められます。
ノウハウとナレッジの違い
「ノウハウ」と「ナレッジ」は類似する言葉として使われがちですが、その意味と使われ方には違いがあります。実際の業務では、この2つの言葉を混同した結果、「共有したのに伝わらない」「活用できない」といったミスコミュニケーションにもつながりかねません。
両者の違いをしっかり整理しておきましょう。
| 項目 | ノウハウ | ナレッジ |
|---|---|---|
| 定義 | 個人の経験や手順に基づいた実践的な知識 | 組織やチームに蓄積された体系的な知識 |
| 形式 | 暗黙知に近く、言語化が難しいことが多い | 形式知として、ドキュメント化・共有が前提 |
| 共有範囲 | 属人的で特定の人に依存しがち | 組織全体で活用できるよう整備されている |
| 活用シーン | 現場作業・実務のコツ・裏技などに強い | ノウハウの背景や原理、再現性のある知識として活用される |
| 例 | 経験者しかできない商談トーク、現場の勘 | マニュアル、FAQ、ベストプラクティス集 |
ナレッジは知識資産としての共通基盤であり、誰もがアクセス・理解・活用できるように整えるべきものです。
一方、ノウハウは現場の肌感覚や経験値です。ナレッジで土台を固め、ノウハウで柔軟に運用するのが理想的な活用バランスになるでしょう。
たとえば、新人教育においてはナレッジをベースにしつつ、「OJTの現場ではノウハウで補強する」といったハイブリッドな運用が有効です。
「ノウハウ=現場の知恵」「ナレッジ=組織の知的資産」。この違いを意識するだけで、情報共有や教育の質は顕著に高まるはずです。
ナレッジ共有の仕組みづくり「ナレッジマネジメント」
ナレッジを組織内で活用していくには、「集めるだけ」「書くだけ」では不十分です。情報が共有されたとしても、それが必要な人に届かない、使われない、更新されないといった状況に陥ってしまえば、ナレッジは眠った資産になってしまいます。
こうした課題を防ぐためには、ナレッジが循環し、活用される仕組みを構築することが重要です。この仕組みこそが、「ナレッジマネジメント」です。
ここでは、ナレッジマネジメントの考え方と導入のポイント、実践によるメリットについて深堀していきます。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、組織内にある知識や経験を収集・整理・共有し、必要な人が必要なときに使える状態を維持するマネジメントの仕組みです。
これは情報を貯めるだけでなく、誰が・どこで・どのように活用するかを前提として整備されているのが特徴です。そのためには、業務と連携した「使われる設計」が欠かせません。
つまりナレッジマネジメントの実践においては、次の2つの視点が重要になります。
- 知識の可視化(ナレッジ化)
- 活用を前提とした運用・共有の仕組み
このうち、まずは「暗黙知を形式知へと変える」ナレッジ化の方法について見ていきます。
ナレッジ化の方法:暗黙知を形式知へ変換
ナレッジ化とは、個人の経験や勘、スキルといった「暗黙知」を、他者にも理解・再現可能な「形式知」へ変換するプロセスです。
- 暗黙知:個人の経験に紐づく属人的な知識
- 形式知:文書やデータベースなど形式化された知識
このプロセスは、次のようなステップに分類できます。
- 対象の明確化:属人化している業務や技術を洗い出す
- ヒアリング・観察:実務者に話を聞き、現場での行動を観察する
- 言語化・整理:作業手順・判断基準・背景知識などを文章や図に変換する
- 共有・レビュー:ドキュメント化し、関係者のフィードバックを反映する
特にポイントとなるのは、「なぜそう判断するのか?」といった思考のプロセスまでを言語化することです。これにより、ナレッジは単純な手順書ではなく、再現性と応用性を備えた知識資産へと昇華されます。
ナレッジマネジメントのメリット
ナレッジマネジメントを導入することで得られる効果は、情報整理にとどまりません。組織全体の知識活用力が高まり、業務の効率化やイノベーションの促進にもつながります。
ここでは、代表的な2つのメリット「共有の促進」と「情報の一元化」について解説します。
ナレッジの共有
ナレッジマネジメントを通じて得られる最大のメリットのひとつが、ナレッジの属人化を防ぎ、誰もが情報にアクセスできる状態を作れることです。具体的には、次のような変化が期待されます。
- 経験者の知見を、未経験者が活用できるようになる
- 口頭やOJTだけに頼らない教育が可能になる
- 組織全体で同じ認識・知識を持つ土台ができる
共有の仕組みが整えば、「知っている人に聞かないとわからない」状況から脱し、情報の再利用性が高まります。
情報の一元化
もうひとつの大きなメリットが、情報の散在を防ぎ、一元管理できる環境を整備できることです。情報が部署や個人ごとにバラバラに管理されていると、次のような非効率からは逃れられません。
- 必要な資料が見つからない
- 古い情報が使われる
- 重複ページ・コンテンツが増えていく
ナレッジマネジメントでは、情報の集約ポイント(ナレッジベース)を明確化し、検索性や分類のルールを整備することで、誰もが迷わず・探せる・使える状態を目指します。
また、組織における特定の個人に傾斜した依存度も解消されます。突出した知識や経験を有するメンバーのなかから退職者が出た結果、業務が回らなくなってしまうといったリスクも軽減されるでしょう。
さらに、情報そのものが会社の有効資産として機能するようになり、業績向上や事業拡大の可能性も広がります。
ナレッジマネジメントを実現するSECIモデル
画像引用元:SECIモデル|NPO法人SECIプレイス
ナレッジマネジメントを実現する手法のひとつに、「SECIモデル」が知られています。SECIモデルとは、以下のプロセスのそれぞれの頭文字から構成される、ナレッジの共有や創造を促進するためのフレームワークです。
- Socialization【共同化】
- Externalization【表出化】
- Combination【連結化】
- Internalization【内面化】
Socialization【共同化】
個人が持つ暗黙知を共有するプロセスです。チームミーティングやグループディスカッションなど、対話を通じて経験や知識を共有し、新たなナレッジを生み出します。
Externalization【表出化】
共同化された知識を形式知に変換するプロセスです。経験やノウハウを文書化したり、グラフや図表にまとめたりと、他者との共有が容易な形式に再構築します。
Combination【連結化】
複数のナレッジを組み合わせ、新たな知識を生み出すプロセスです。異なる知識や情報を統合し、新たな洞察やアイデアを創出します。さらに情報の結びつけや関連付けを経て、より豊かなナレッジへと醸成されます。
Internalization【内面化】
共有された知識を個人の暗黙知として吸収・活用するプロセスです。他者から得た知識や情報を自身の経験やスキルとしてインクルードし、自己成長や業務オペレーション改善に活かします。
個々人が学びを実践に昇華させることは、組織全体の能力向上にも寄与します。
ナレッジマネジメント導入の成功事例
では、実際にナレッジマネジメントの導入に成功した事例を紹介します。
自動車製造メーカーの場合
とある自動車製造メーカーでは、国内で培った知識や改善点などの暗黙知を形式知化して、海外の支店へ情報を共有することにしました。
その結果、海外拠点の生産性を国内レベルまで高めることに成功したのです。
看護士の場合
看護現場では、暗黙知と形式知を明確に分けたことによって成功を収めた事例があります。
たとえば、形式知にあたる部分では患者のカルテや問診票、フローシートなどを見ることで患者の状態を把握できます。
それらを使って情報共有すれば、スピーディかつ効率的な引き継ぎが可能です。
一方、患者単位の細かいケアに関しては、一人ひとり異なるため実務経験が重要となります。
この部分は暗黙知にあたり、実際に患者の病状を見ながら引き継ぎを行う必要があります。
このように、業務を「形式知」と「暗黙知」に分けることで、引き継ぎに必要な情報を整理できるため、仕事の効率化を図ることに成功しました。
ナレッジマネジメントシステムを実現するには

ナレッジマネジメントは、社内のツールや企業が提供するサービスを活用すると効率的に行うことができます。
ここでは、ナレッジマネジメントの効率化を図るための方法をいくつか紹介します。
おすすめツールの活用
情報共有ツールを活用することで、ナレッジマネジメントを促進させることができます。
情報共有ツールの製品ラインナップは、幅広い展開を見せています。
求める条件を明確にし、自社に合ったツールを導入することが大切です。
初心者でも簡単「Stock」
「Stock」を利用すれば、多くの話題が入り乱れるチャットの「情報が流れてしまう」というデメリットを解消することができます。
「Stock」には、チームメンバーやプロジェクトごとにフォルダやノートを作ることができ、重要な情報をストックしていくことが可能です。
ストックされた情報はメンバー間で容易に共有ができ、チームのタスクを手軽に管理できる機能も搭載されています。
オープンソース「Knowledge」
「Knowledge」は、無料で利用できる情報共有ツールです。
オープンソースが公開されているため、カスタマイズし自社に適した機能を搭載することも可能です。
自社の業務にカスタマイズ「kintone」
「kintone」は非常に多機能な情報共有ツールです。
多岐に渡る業務に適用可能ですが、その分機能を絞り込まないと実用性に欠けてしまうため、扱いに注意が必要なツールです。
クラウドサービスを扱う会社に依頼
既存のツールを使うのではなく、クラウドサービスを扱う会社に依頼するという手段もあります。
ここでは、ナレッジマネジメントに適した会社を紹介します。
ナレッジラボ
「ナレッジラボ」はクラウドベースの経営サポートサービスです。
普段使っている会計ソフトのデータを、そのままナレッジラボのサービスにインポートすることで、簡単に経営分析を行うことができます。
公式HP「ナレッジラボ」:https://knowledgelabo.com/
ナレッジスイート
「ナレッジスイート」を導入すれば、自社に必要な機能のみが搭載されたシステムを構築することができます。
一般的なツールには、使わない機能が搭載されていることが多く、業務を行うのに不便と感じる可能性があります。
そこでナレッジスイートによって自社専用にカスタマイズすることで、業務の効率化を図ることが可能です。
ナレッジスイートは、情報の共有だけではなく、営業支援や顧客管理を行うこともできます。
公式HP「ナレッジスイート」:https://knowledgesuite.jp/
ナレッジマネジメントで業績アップ
ナレッジマネジメントは、今までの暗黙知に頼った経営に対する解決策の一つです。
暗黙知を形式知化することで、企業の業績アップや拡大につながることもあります。
ナレッジマネジメントを成功させるには、適切なツールやサポートサービスの活用が重要です。
自社に必要な機能や項目を見極めるためには、自社やベンダーのIT部門に相談するのも一つの手です。
もし、カスタマイズが可能なツールを検討しているのであれば、不要な機能を削ぎ落とし、新規項目を追加することもできます。
ナレッジマネジメントの概念と、ツールやサービスの必要性をしっかりと理解し、暗黙知を効率的に形式知に変換しましょう。
- ビジネス用語におけるナレッジとは、「有益性の高い情報」「付加価値のある経験」を意味する
- ノウハウは「手順や技術の蓄積」を意味するのに対し、ナレッジは「再利用可能な知識の体系」。
- ナレッジは業務の属人化を防ぎ、組織のパフォーマンスを底上げする基盤となる
- 目的不明瞭、共有の仕組み不足、マネジメントの機能不全などにより、ナレッジ共有は形骸化しがち
- ナレッジマネジメントとは「暗黙知」を「形式知」に変換する手法
- ナレッジマネジメントを適切に行うために、ツールやサービスの活用がおすすめ

