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VUCAとはなにか?「VUCAの時代」の企業・個人戦略とOODAフレームワーク

新たな感染症に環境問題、そして長期化するウクライナ危機。昨今の世界はさまざまな課題を抱えています。混乱する世界情勢を受け、将来の予測が困難である状況を示す言葉として用いられているのが「VUCA」あるいは「VUCAの時代」です。

本記事では、ビジネスパーソンが知っておきたいVUCAの意味をあらためて整理し、VUCA時代に求められる人材や経営戦略についてわかりやすく解説します。

VUCAとは

VUCAとは、将来の予測が困難化する不確実性の高い状況を意味する言葉です。

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

VUCAはこの4つの単語の頭文字から作られた造語で、将来予測が困難な世界情勢・社会情勢を指して「VUCAの時代」「VUCAワールド」というように使われます。

VUCA を構成する4つの語は、それぞれ次のような意味を持ちます。

変動性(Volatility)

変動性(Volatility)とは、これからどのような変化が起こるのか予測できないほど変動の激しい状態を示しています。

たとえば、スマートフォンの普及によって人々の行動が変わり、ニーズの多様性も増し続々と新たなサービスが生み出されていますが、IT技術の急速な進歩を考えれば、将来に渡ってスマートフォンとそれに付随するサービスが利用され続けるかどうかは予見できません。

SNSひとつ取っても、次々と新たなサービスが生まれ、各サービスにおける利用者数や利用者層も大きく変動しています。このような状況も変動性にあたるものと考えられます。

不確実性(Uncertainty)

不確実性(Uncertainty)とは、気候変動や社会状況の変化、各国の情勢などが不確実で、この先に起こる問題を予測することが困難な状況を示しています。

新型コロナウイルス感染症や気候変動による異常気象など、昨今の世界情勢は少し先も予測することが困難です。もしかすると、明日ゲリラ豪雨で都市が壊滅状態になるかもしれません。あるいは新型コロナウイルスとは異なるウイルスが発現し、世界中が再びパニックに陥ることもあるでしょう。

日本における円安とインフレの高まりも不確実性のひとつといえます。これまで日本が経験してこなかったコストプッシュ型のインフレは、いつから激しさを増してくるのかわからない不安や、少し先も予測できない不確実性の高い状況を招いているのです。

複雑性(Complexity)

複雑性とは、さまざまな要素・要因が複雑に絡み合い、単純な解決策を導き出すことが難しい状況を指しています。

日本経済に目を向けると、消費者のニーズの多様化と技術革新によりさまざまなサービスが生まれ、企業収益も高水準で推移しているにもかかわらず、一般消費者の所得に占める税や保険料の拡大に加え、物価高により消費は伸び悩んでいます。

さらに少子高齢化により、企業はいっそうの人材難に陥り、働き方改革への対応で残業時間も減少しているため、業績を伸ばして給与を増やし、消費を促すことも難しいケースが散見されます。

さまざまな事象が複雑に絡み合う日本経済を、すぐに立て直す単純な解決策はありません。このような状態は、まさに複雑性が高まっている状況といえるでしょう。

曖昧性(Ambiguity)

曖昧性とは、前例がなく絶対的な解決方法が見つからない、正解が分からない曖昧な状態を指しています。

曖昧性は、変動性、不確実性、複雑性が絡み合うことにより陥る状態です。消費者ニーズが多様化し、IT技術の進歩でさまざまなサービスが生まれている昨今では、旧来のようにマスメディアが主導するブームに起因する「大多数のユーザーに受け入れられる商品やサービス」を作り出すことが難しくなっています。

これに対する具体的なひとつの解決策を、どの企業も持てていません。正しい答えがない中模索し続けている、この状態がすなわち曖昧性なのです。

VUCAの時代とは

VUCAの時代(VUCAワールド)とは、2016年の世界経済フォーラム、通称ダボス会議にて用いられ注目されるに至った言葉で、世界が予測不可能な状態にあることを端的に示しています。

  • 世界的に頻発している異常気象による災害
  • 先進国の少子高齢化
  • 中国経済の不安定化による投資家・企業への影響
  • ウクライナ問題による国際的危機

このように、まさに世界はVUCAの時代のただ中にあります。

これらの世界的課題や日本における課題を解決するには、時間をかけ複雑に絡み合う問題を解消する手立てを模索する必要があります。各国政府だけでなく、企業や個々人のスキルを組み合わせて大きな力にし、課題解決に向けた取り組みを続けることが重要になるでしょう。

関連リンク:VUCAを生きる|J-STAGE

VUDAのフレームワーク「OODA」

「OODA(ウーダ)」とは、意思決定と行動を早めるための思考法です。

  • Observe:観察
  • Orient:状況把握
  • Decide:意思決定
  • Act:行動

OODAはこの4つの単語から構成され、さらに「Loop:繰り返し」を含めて「OODAループ」とも呼ばれています。

このフレームワークは、先行き不明確な戦時に、航空戦術家のジョン・ボイド氏が考案したものです。経済面では戦時と異なる部分はあるものの、先の読めないVUCA時代にも有効とされています。

OODAでは、まずは観察し、状況を判断して、どのような行動を取るのかを決定し、実際に行動します。その後、行動の結果を振り返り、再び観察からOODAループをスタートします。

VUCAにおいてこのフレームワークが有効な理由には、「迅速に判断し行動できる」ことが挙げられます。不確実な中で正しい答えを見つけ出すためにはひたすらトライアンドエラーを繰り返すことが重要です。

有名なフレームワークであるPDCAでは、「計画」を立て評価と改善を繰り返すことを重点に置いており、これでは計画を立てることも難しいVUCA時代にマッチしません。一方、OODAの場合は「行動」を重点に置いているため、刻一刻と変わる状況に対応しながら前に進むことができるのです。

VUCA時代に必要なスキル

VUCA時代の人材には、次のようなスキルが強く求められるようになるでしょう。

  • 問題発見能力
  • 考える力
  • 意思決定力

観察し問題を見つける「問題発見能力」、状況を判断するために必要な「考える力」、それに「意思決定力」を兼ね備える人材は、OODAのフレームワークを用いた戦略にマッチします。

これらをまとめると、企業はリーダーシップやマネジメントスキルを有する人材を求めていることがわかります。

問題発見能力

問題発見能力とは、解決すべき課題を見つけ、適切に把握できる能力を指します。

従来は、課題を解決する力を持つ「問題“解決”能力」を有する人材を重用していました。しかしVUCA時代では、そもそもその課題の本質が何であるのか、なぜそのような問題が起きているのかを把握することが困難です。

問題発見能力を有する人材は、周囲をよく観察し解決すべき問題を見つけ、それを解決する必要のある問題として定義づけすることまでを行えます。

考える力

テクノロジーの進歩により、自身で考える力が衰えている人が増えているといわれています。AIがさまざまな情報を分析し答えを導き出せるようになった現代だからこそ、機械では測れない部分を自分で考えられる人材の貴重性が増しているのです。

VUCA時代には、前例にない課題が次々と訪れます。しかし、AIでは過去から得たデータからしか判断を行えません。また、人間のような感性や感情を持ち合わせていないため、人の細かな部分までを考慮した答えを得られない可能性は否定できません。

人間にしかない「考える力」を持ち、発揮できる人材は今後ますます必要になってくるでしょう。

意思決定力

意思決定力とは、複数の選択肢がある中で、何を選ぶのかを決断する能力のことです。ビジネスにおいては、実際に意思決定を行える裁量権も意思決定力のひとつといえるでしょう。

前例のない想定外の事象が次々と起こるVUCA時代においては、想定外の事象にも迅速に対応し判断できる力が必要です。従来、日本企業は正確性や確実性を求めるあまり、意思決定や判断に時間がかかることがままありました

刻一刻と状況が変わるなかでは、意思決定の遅れが重大な損失を招く可能性もあります。状況を見極め、組織を把握し、迅速に判断できる人材が必要なのです。

VUCA時代に必要な経営戦略

VUCA時代の経営で重視すべきは、「人材マネジメント」と「雇用のあり方」です。

前述した通り、VUCA時代に必要な人材は、従来に求められていた人材像と大きく異なります。従来の人材マネジメントから脱却し、経営競争力を強化していくために、具体的にどのような経営戦略を練ればよいのでしょうか?

人材マネジメント

VUCA時代の経営戦略を実現するために、まずは人材戦略を変革させていきましょう。

拡大画像はこちら

画像引用元:人材競争力強化のための9つの提言(案)~日本企業の経営競争力強化に向けて~|経済産業省

従来の日本企業では、新卒一括採用の後に長期的な雇用を前提とし、画一的な人材育成・管理を行うことが重視されてきました。また、企業にとって必要なのは、成功した既存事業に必要な人材を育成し、その強みをさらに打ち出していくことでした。

VUCAの時代では、次々と変わる状況に合わせて生まれる経営戦略に対し、柔軟性を持って応えられる人材とリソースの確保が必要です。経歴や年齢、勤続年数ではなく、個人のスキルと能力を把握し、配置して、人材を最大限に活用できる体制を作ります

雇用のあり方

「人材マネジメント」の項でも少し触れましたが、従来のような新卒一括採用は昨今の状況下にはマッチしません。新卒一括採用が日本企業に適応していた背景には、事業環境の安定があったためです。内部で人材を育成し、自社に最適化する人材を作ることが、事業成長に直結していたとも言い換えられます。

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画像引用元:人材競争力強化のための9つの提言(案)~日本企業の経営競争力強化に向けて~|経済産業省

これからは、雇用においても多様性を重視する必要があります。さまざまなベクトルから問題を見つめ、解を導き出すためには、経歴や経験、年齢、考え方の異なる人材を採用してイノベーションを促進することが重要です。さまざまな人材の採用は、内部でのイノベーションだけでなく、内部の活発化による外部への競争力強化にも波及します。

内部だけで何とかしようとするのではなく、必要に応じてメンバーが出入りできる、柔軟な組織づくりが必要です。

個々が意思決定できる組織作り

これらに加え、迅速な意思決定と行動を起こすためには「個々や小組織が意思決定できる組織」を作る必要があります。多様な人材を採用し、さまざまな視点からの意見が集まったとしても、その判断を経営陣が行うのでは判断と行動がどうしても遅れてしまいます。

たとえば、専門チームを作り意思決定まで委ねる、あるいは組織の階層を減らして意思決定権を持つ上長までに情報が到達するスピードを迅速化するなどの方法が考えられます。

新型コロナウイルス感染症によるパンデミック以降、世界はますます先の見えない混沌のなかにあります。「VUCAの世界」が当たり前になりつつある現在、企業はその場しのぎではない変革に迫られています。

現代において、さまざまな課題を解決するにはテクノロジーの力は欠かせません。問題解決能力、考える力、意思決定力を持つIT人材を目指すことで、これまで解決できなかった社会課題を解決に導く人材になれるかもしれません。

まとめ
  • VUCAとは、将来の予測が困難化する不確実性の高い状況を意味する言葉
  • 「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」の単語の頭文字から作られた造語で、将来予測が困難な世界情勢・社会情勢を指して「VUCAの時代」「VUCAワールド」というように使われている
  • 変動性(Volatility)とは、これからどのような変化が起こるのか予測できないほど変動の激しい状態
  • 不確実性(Uncertainty)とは、気候変動や社会状況の変化、各国の情勢などが不確実で、この先に起こる問題を予測することが困難な状況
  • 複雑性とは、さまざまな要素・要因が複雑に絡み合い、単純な解決策を導き出すことが難しい状況
  • 曖昧性とは、前例がなく絶対的な解決方法が見つからない、正解が分からない曖昧な状態
  • VUCA時代のフレームワークとして、意思決定と行動を早めるための思考法「OODA(ウーダ)」が有効とされている
  • 「計画」を立て評価と改善を繰り返すことを重点に置いたPDCAは、計画を立てることも難しいVUCA時代にマッチしない
  • VUCA時代の人材には、問題解決能力、考える力、意思決定力が強く求められるようになる
  • 企業経営には「人材マネジメント」と「雇用のあり方」の変革が求められる

 

 

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