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アルムナイ採用とは?方法のメリット・デメリット・注目の理由と実際の成功事例を紹介

派遣業界コラム この記事は約 11 分で読めます。

業界や企業規模を問わず、深刻化の一途をたどる人材不足は、ビジネスにおける喫緊の課題です。また、テレワークの広がりなどの外部要因も影響し、OJTをはじめとする従業員研修が機能不全に陥っているケースも少なくありません。

そんな情勢のなか、企業にとって喉から手が出るほど欲しい人材といえば、やはり「即戦力」に尽きるでしょう。

即戦力確保の方法には、中途採用やリファラル採用などが定番のアプローチとされています。そしていま注目度が増しているのが、退職者を対象として採用活動や制度を整える「アルムナイ採用」です。

本記事では、アルムナイ採用が注目される背景や、方式のメリットとデメリット、成功事例などを紹介します。

アルムナイ採用とは

アルムナイ採用とは、離職者を再雇用する制度のことで、「カムバック制度」「出戻り採用」などの名称で呼ばれることもある採用手法です。

本来、アルムナイ採用のアルムナイ(alumni)とは、「卒業生」「同窓生」といった意味を持つ言葉です。人事領域においては、「定年退職者以外の離職者」と解釈されており、一度企業を退職した従業員の再雇用を意味します。

アルムナイ採用が注目される理由と実施状況

終身雇用の崩壊や慢性的な人材不足を受け、一部の企業や業界においてアルムナイ採用は活発化しています。人材の流動性が活発化し、優秀な人材の獲得競争が激化していることも、その要因に挙げられるでしょう。

【アルムナイ採用が注目されている背景】

  • 終身雇用の崩壊
  • 慢性的な人材不足
  • 人材流動性の活発化
  • 優秀な人材の獲得競争の激化

また、求職者側においても離職した企業に再入社したいと考えている人は約8%存在し、実際に2%以上の人はカムバックを果たしています。

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画像引用元: パーソル研究所(コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査)

なお、実際に再入社に至った人のうち、75.7%は「上司や同僚、会社から誘われた」、あるいは「上司や同僚、会社に自分から相談・打診」に起因するカムバックです。企業で設けているカムバック制度などの利用は少数派となっています。

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画像引用元: パーソル研究所(コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査)

つまり、企業の制度として「カムバック制度」や「出戻り入社制度」が用意されていなくても、アルムナイ採用自体は可能です。離職後においても、離職者が「戻りたい」と思えるような良好な関係性を築いておくことが、アルムナイ採用を成功させる重要なポイントになるでしょう。

ジョブリターン制度との違い

アルムナイ採用と同じく、過去の退職者を対象に再雇用を図る制度として「ジョブリターン制度」がありますが、両者がアプローチする退職者には一般に次のような違いがあります。

● アルムナイ採用
家庭の事情やキャリア形成のための転職・起業などの理由で自発的に退職・離職した人が対象

● ジョブリターン制度
結婚・出産、育児、介護など、やむを得ない理由で退職・離職した人が対象

このように、ジョブリターン制度の場合は、職歴にブランクがある人の採用が主となります。一方、アルムナイ採用の場合、対象者は退職後も継続してビジネスシーンに身を置いているケースがほとんどなるため、即戦力の確保により期待が持てます。

リファラル採用との違い

リファラル採用とは、自社の従業員などが自身と関係性のある人材を企業に対して推薦し、その紹介に基づいて人材を採用する仕組みのことです。「紹介」「参照」「照会」といった意味を持つ、referral(リファラル)の言葉に由来します。

多くの場合は、その人材が採用されると、推薦した従業員に対して報酬や特典が与えられます。結果、優秀な人材の獲得や採用プロセスに効率化をもたらす手段として機能する好循環が生まれ、いまでは広く用いられている手法です。

従業員を介した採用手法という点では、「上司や同僚、会社から誘われた」が多くの契機となっているアルムナイ採用と類似する部分もありますが、リファラル採用の対象は離職者ではありません。「カムバック制度」とも解釈できるアルムナイ採用とは明確に異なります。

アルムナイ採用のメリット

アルムナイ採用の実施によって、次のようなメリットが期待されます。

  • 採用コストを抑えられる
  • 育成・研修コストを抑えられる
  • 即戦力の人材を確保しやすい
  • 企業ブランディングにつながる

繰り返しになりますが、アルムナイ採用の最大のメリットは即戦力を確保できることでしょう。以前勤めていた従業員であれば、ゼロからの教育の必要もありません。

さらに、求人広告を用いないため採用コストも削減できるなど、アルムナイ採用には一石二鳥以上のメリットがあります。

採用コストを抑えられる

上述の通り、アルムナイ採用の大半のケースでは「上司や同僚、会社からの誘い」、あるいは退職者自らが「上司や同僚、会社に打診」した結果、再雇用に至っています。求人広告掲載費などは発生せず、採用コストを抑えられます。

育成・研修コストを抑えられる

アルムナイ採用の対象は、元々自社に属していた人材です。すでに基礎的な研修やOJTは経験済みで、企業風土や慣例についても熟知しています。初めての所属となる新卒採用や中途採用などと比較して、教育コストを圧縮できます。

即戦力の人材を確保しやすい

元々自社で働いていた人材は、ビジネスのオペレーションや企業風土、業務内容を熟知していることはもちろん、ある程度の人脈も形成されています。即戦力として戻ってきたその日から、スムーズに業務に取り組めるでしょう。

さらに、他社で磨き上げたスキルをフィードバックする形で、社内に新たな風をもたらしてくれることも期待できます。

企業ブランディングにつながる

企業に対して何かしらの不満を抱くことが、離職の主な理由になりがちです。一方、一旦離れた古巣に戻ってくるということは、「やはりこの企業が良かった」と考えている、高いエンゲージメントをうかがい知れます。

アルムナイ採用に至る好循環を有する企業は、内部的にも対外的にもポジティブな印象を植え付けるでしょう。

アルムナイ採用のデメリット

多くのメリットがあるアルムナイ採用ですが、その反面デメリットも懸念されています。

  • 受け入れ態勢の構築が必要
  • 既存社員のモチベーション管理が必要
  • 選考基準や労働条件・待遇の明確化が必要

大前提として、ケンカ別れのように退社してしまった人が戻ってくることはありません。アルムナイ採用の可能性をつないでおくには、在籍中からの働きかけが重要になると同時に、復帰しやすい制度作りも欠かせないでしょう。

また、在籍中に良い関係性を築けていなかった社員などがいる場合などは、復帰をスムーズに受け入れられるよう、該当社員へのフォローも必要になるでしょう。

既存社員からの理解を得られるべく、選考基準や労働条件の明確化も欠かせません。

受け入れ態勢の構築が必要

一度離職した社員に戻ってきてもらうためには、円満退社が大前提です。さらに、何かしらの魅力を提示できなければ「戻りたい」とは思ってもらえないため、会社と社員のエンゲージメントを高く保ったり、退職者に向けた制度を取り入れたりなどの施策も必須になるでしょう。

なお、退職者の再雇用を想定したオフィシャルな制度を設けていない場合は、「戻りたくてもその手段がわからない」と採用の機会を失っていることも考えられます。制度やプラットフォームを整備して、アルムナイ採用について社員に周知しておくことも重要です。

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画像引用元: パーソル研究所(コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査)

上記の調査結果を見ても分かるとおり、約23%の企業では退職者向けに何かしらの制度やイベント、コミュニティを設けており、受け入れ態勢を整えています。

既存社員のモチベーション管理が必要

アルムナイ採用は、企業全体で見れば良い効果をもたらす可能性が高い施策です。しかし局所にフォーカスした場合、一部の社員のモチベーションを毀損するリスクがある点は否定できません。

たとえば、戻ってくる社員に対しての、既存社員からのネガティブな感情です。退職する際に迷惑を被ったと感じている社員や、そもそも在職中から良い関係性を築けていなかった社員などが該当します。「魅力的な企業が見つかれば、また退職するのでは?」と冷ややかな視線を向ける社員もいるでしょう。

こうした対応を疎かにしていると、職場の雰囲気は悪化します。即戦力を期待して再雇用した人材が、本来の力を発揮できない環境にもなりかねません。

既存社員にアルムナイ採用への理解を促すのはもちろんのこと、採用前に既存社員とカムバック社員が交流できる機会を設けるといった、良好な関係性の構築に向けた配慮が必要です。

選考基準や労働条件・待遇の明確化が必要

既存社員へのフォローアップの一環として、アルムナイ採用の選考基準や労働条件、待遇などの明確化も挙げられます。

再雇用した人材が在籍していた当時と比較すると、現在の企業の状況は少なからず変化しているはずです。事業展開や社員構成、評価基準なども異なるでしょう。アルムナイ採用の実施にあたっては、公正を期すべく、現行の選考基準に基づいた判断や、給与などの待遇の決定が求められます。

在籍当時の人材評価を踏襲するのではなく、現在の人材像に照らし合わせた評価を下すことで、社内の無用なトラブルを避けられるようになります。

アルムナイ採用の成功事例

博報堂やみずほ銀行、トヨタ自動車、富士通など、業種や業態を問わず、いまでは多くの企業がアルムナイ採用を実施しています。ここでは、アルムナイ採用を取り入れ、成功している企業の事例を紹介します。

  • 株式会社クラレ
  • 中外製薬株式会社
  • 株式会社電通

アルムナイ採用は、基本的には「再雇用」が目的ですが、ここで紹介する企業のうち2社は「離職者とのつながり」までを一貫して重視しています。再雇用だけにこだわるのではなく、離職者とのつながりを維持するだけでも、外部からの貴重な意見を獲得できる「関係性構築の手段」として機能するのです。

株式会社クラレ

株式会社クラレでは、若手社員の離職率の高さを受け、アルムナイ採用制度を創設。若手社員の退職理由はけっしてネガティブなものだけではないこともあり、タイミング次第で自社に戻ってきてくれることを期待して、仕組み化を整えていきました。

同社では家庭の事情で退職した人はもちろん、別の企業や業界を経験したうえで「やっぱりクラレが良い」と想起しくれることも予測し、異なるキャリアに進んだ人材も対象者に含めています。結果、他社でのキャリアを通じて得た知見やスキルをフィードバックして新風をもたらす、一種の企業改革を促せます。まさにアルムナイ採用の醍醐味といえるものでしょう。

中外製薬株式会社

中外製薬株式会社では、「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目標に掲げ、多種多様な能力・スキル・経験の必要性が高まっていることに立脚し、アルムナイ制度の導入を推進。形骸化していた「退職者再雇用登録制度」を刷新する形でアルムナイ制度を創設しました。

同社では、制度刷新とともに、再雇用だけに特化するのではなく「離職者とつながりを持ち続けるための制度」に目的を拡張。良好な関係性を維持することで、タイミングが合えば戻れる環境作りに成功しています。

ゆるいつながりを保有し続けることで、社外からの忌憚のない声も取り入れられます。視座の異なるベクトルから見えてくる企業の良さや課題を社内で共有することで、事業の視野も広がります。

株式会社電通

株式会社電通は、出戻る形ではなく、主にビジネスパートナーとしての関係を構築しつづけるHR戦略が有名です。

きっかけは2014年ごろから存在していた「Ex電通人」という、電通の非公式アルムナイコミュニティの公式化を望む声でした。電通OB・OG同士だけではなく、現役社員ともつながりを持ち、積極的にコラボレーションを実現させたいという願いから公式化が加速。2016年からは小規模なプレアルムナイ交流会を試験的に開催するなど、本格的に制度化する以前より慎重に準備を進めました。

制度はスムーズに公式化され、業種や企業規模もさまざまなメンバーと密接な関係性を構築することで、新たなビジネスチャンスや多種多様な情報が集まるようになり、双方向に良い効果をもたらしています。

まとめ
  • アルムナイ採用とは、定年退職者以外の離職者を再雇用する制度や手法のこと
  • 離職後においても離職者が「戻りたい」と思えるような良好な関係性を築いておくことが、アルムナイ採用の重要なポイントになる
  • やむを得ない理由で退職・離職した、職歴にブランクがある人の採用が主となる「ジョブリターン制度」とは異なり、アルムナイ採用の対象者は退職後も継続してビジネスシーンに身を置いているケースが多い
  • アルムナイ採用は、即戦力となる人材を確保できるほか、採用や育成に関わるコスト軽減などのメリットがある
  • 一方、既存社員のモチベーション管理など、アルムナイ採用の導入に向けて解決すべき課題もある

 

 

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