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ジョブ型雇用とは?メリット・デメリットとメンバーシップ雇用との違い

派遣業界コラム この記事は約 14 分で読めます。

欧米で主流となっている「ジョブ型雇用」を、日本企業でも導入する動きが活発化しています。多くの日本企業でこれまで採用されてきた「メンバーシップ雇用」とは異なり、学歴や年齢ではなくスキルを最重視するジョブ型雇用は、ビジネスパーソンにも多くのメリットもたらす雇用手法です。

近年注目されるジョブ型雇用とはなにか、転職やステップアップを考えるビジネスパーソンに向け、その特徴や導入事例を紹介します。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、職務に適するスキルや経験を持つ人材を採用する雇用手法です。欧米では主流となっている手法で、企業が求める特定の職務能力とマッチするスキルを有する専門性を備える人材は、即戦力として活躍できると注目を集めています。

メンバーシップ雇用との違い

日本企業においては、従来「メンバーシップ雇用」が主流でした。メンバーシップ雇用は、長期雇用を前提としてスキルに関係なく採用し、入社後に個々人の適性から担当職務を決定する雇用手法です。

ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用を比較してみます。

ジョブ型雇用 メンバーシップ雇用
意味・概念 職務内容に見合ったスキルを持つ人材を採用する 採用後に適性に合わせた職務に就かせる
役割・業務内容 業務内容や求められる能力、勤務地が明確 業務内容、勤務地が定められていない
評価 成果によって決まる 比較的あいまい
人材の流動性 高い 低い
報酬・給与 職務給(職務によって決まる) 職能給(年功的に上昇する)

ジョブ型雇用では、すでに目の前にある仕事、あるいはこれから必要となる仕事に必要なスキルを持つ人材を採用し、そのスキルを伸ばしていく育成を行います。求められる役割や業務内容が明確であり、かつ評価は成果によって決まるため評価基準もわかりやすく、従業員からも納得感を得られやすいと考えられています。

一方メンバーシップ雇用では、新卒一括採用などで大量採用したのちに、社内にあるさまざまな業務にあたれるよう教育を行っていきます。業務内容や勤務地は入社後に決まり、かつ評価の標準化が難しいことから評価基準もあいまいになりがちです。

日本におけるジョブ型雇用の普及

日本では、かねてよりメンバーシップ雇用制度が主流です。ジョブ型雇用は比較的新しい概念とされており、導入企業もそれほど多くありません。

高度成長期から続く「日本型雇用」

これまでの日本企業は、「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」を中心に形成された「日本型雇用」とも呼ばれる独自の雇用システムを採用してきました。この日本型雇用が誕生した背景には、第二次世界大戦後の労働関連法の改革があります。その後ほどなくして高度経済成長期に入り、大きな成功を収めたことから日本型雇用システムが注目され、多くの企業が導入するに至ったと考えられています。

メンバーシップ雇用では、その企業に適する人材に育成していくことから、長く活躍する人材を自社内にとどめる作用がはたらきます。また、新卒一括採用によって同期が多く存在し、仲間意識が強くなる、チームワークが強化されるといったメリットもあります。

雇用手法はビジネスモデルの転換に対応

こうした利点のあるメンバーシップ雇用ですが、企業を取り巻く環境が大きく変化している昨今にはそぐわない部分が出てきているのも事実です。

たとえば近年でいえば、感染症対策としてリモートワーク・テレワークが拡大したことにより、従来型の教育や人事評価が難しくなったことがジョブ型雇用にシフトする流れを加速させています。

これらの背景から、今後ますますジョブ型雇用を導入する企業は増えていくでしょう。とはいえ、ジョブ型雇用が日本企業で普及するにはいくつかのハードルがあるのも事実です。

日本企業がジョブ型雇用にシフトしづらい問題点

日本企業がジョブ型雇用にシフトしづらい原因はいくつかあります。

まず、すでに浸透している日本型雇用システムからの転換にあたり、企業は採用手法や雇用形態、育成環境を整備する必要に迫られます。これまでと異なる業務を行うためには、多くのコストと時間を要するでしょう。さらに昇給・昇格、人事評価に関する基準も新たに設けなければならず、日本型雇用で採用した人材とジョブ型雇用で採用した人材の間に溝が生まれる可能性も否定できません。

次に、欧米のようなジョブ型雇用への転換にあたっての大きなハードルの存在です。

欧米のジョブ型雇用は、企業横断的なキャリア開発の仕組みが整備されたうえで成り立っているものです。このような環境が整備されている欧米のビジネスパーソンは、転職してもキャリアを継続しやすいため、自分の能力を発揮できる企業への転職に対する心理的ハードルも低いでしょう。

一方、企業横断的なキャリア開発の仕組みが十分でない日本では、メンバーシップ雇用と比較しての保障の低さもあり、ジョブ型雇用を望む人材がいたとしても転職などに踏み切りづらい現状があります。

ジョブ型雇用のメリット

ジョブ型雇用の採用で、企業には次のようなメリットが考えられます。

  • 専門分野に強い人材を採用できる
  • リモートワーク・テレワークと相性がよい
  • 評価しやすい・適正な報酬を決めやすい

ジョブ型雇用では、企業が想定する職務内容に必要なスキルを持つ人材を的確に獲得できます。たとえば、社内での育成が難しいIT人材のような専門分野に強い人材を採用できるようになるでしょう。

また、ジョブ型雇用はリモートワーク・テレワークとも相性がよく、テレワークにともなう人事評価の問題やチームワークの再構築における課題を解消する可能性が期待されます。

専門分野に強い人材を採用できる

ジョブ型雇用の最大の強みは、すでに専門分野における知識・スキルを有する人材の採用のしやすさにあります。近年ニーズが急激に高まっているIT人材をはじめ、さまざまなスペシャリストを自社に呼び込むための原動力になるでしょう。

たとえば、「新たなITツールを導入したいけれど既存の従業員では対応しきれない」という場合、そのツールを熟知する人材を募集・採用することで迅速な対応が可能になります。入社後にさらなる育成を行えば、自社に適する専門人材へと成長していくでしょう。

また、専門性を有する人材として、正社員以外の登用が増加する可能性も示唆されます。必要に応じて専門性を有する派遣社員などを重用すれば、採用コストを抑えながらビジネスを推進できます。

今後は大手企業だけでなく、中堅・中小企業でも専門性を有する人材へのニーズが高まっていくでしょう。とはいえ、すべてを正社員でまかなうのは難しい企業も少なくありません。専門性を有する派遣社員などの人材はより強く求められるようになり、なかでもよりニーズの高いIT人材は引く手あまたとなるでしょう。

リモートワーク・テレワークと相性がよい

ジョブ型雇用は、テレワークを導入している企業にも有効です。これまで業務内容や担当者があいまいになってしまっていた業務環境の場合、テレワークに切り替えた結果、業務がうまくまわらないといった問題は至るところで発生しています。

ジョブ型雇用の場合、誰が何をするのかを明確にしたうえで採用を行うため、テレワークに移行しても業務が停滞するボトルネックがありません。各々が自身の職務内容に合わせて、的確に業務を推進できます。

評価しやすい・適正な報酬を決めやすい

ジョブ型雇用で採用された従業員は、自身のスキルを用いて職務を遂行し、成果を上げることで評価が決定します。メンバーシップ雇用と比較して評価基準が明確なため、企業側も評価がしやすく適正な報酬を決めやすくなるでしょう。

一方、メンバーシップ雇用の評価では、評価者である上司や人事の主観が含まれてしまうことも少なくありません。評価基準が明確なジョブ型雇用なら、評価される側である従業員からの評価への納得感も得やすいと考えられます。

ジョブ型雇用のデメリット

メリットの一方、ジョブ型雇用には以下のようなデメリットも考えられます。

  • 条件次第で離職されやすい
  • 転勤や異動はさせにくい
  • 特定の業務に限定される
  • メンバーシップ雇用からの急な転換は難しい

専門性を有する人材は貴重な存在です。より条件のよい企業に転職されてしまう可能性は常に考えられるほか、職務内容や勤務先を定めて採用するため、転職や異動を求めることは難しいでしょう。

業務内容も特定の業務に限定されることから、ほかに着手してもらいたい業務があっても従事させることができません。また、メンバーシップ型雇用で採用した人材をジョブ型雇用に転換することも困難です。

条件次第で離職されやすい

専門性を有する優秀な人材は引く手あまたです。給与や勤務体制、福利厚生などの条件が悪ければ、より条件のいい他社にすぐに転職してしまうでしょう。

これを防ぐためには、ジョブ型雇用での採用条件や職場環境の整備が必要です。競合他社におけるジョブ型雇用の条件をリサーチして、他社よりもよりよい条件で採用できるよう努めましょう。

転勤や異動はさせにくい

ジョブ型雇用では、職務内容を明確にするため求人情報に「職務記述書」を明記します。職務記述書には配置部署や職務内容、勤務先を明記するため、採用後に企業側の都合で転職や異動をさせることが難しくなります。

なお、職務記述書と異なる部分がある場合は、職務記述書を変更して従業員に合意を求め契約を更新する必要があります。

特定の業務に限定される

メンバーシップ雇用では、従業員にさまざまなスキルを身につけさせ幅広く業務を行ってもらうことができましたが、前述した通り、ジョブ型雇用では職務記述書に記載された業務以外を行うことはほとんどありません。

ジョブ型雇用では特定の業務に従事することが基本です。マルチスキルを有する人材を育成したい、職務記述書にある業務以外も行ってもらいたい場合は、そのたびに職務記述書を更新して従業員の合意を得る必要があります。

メンバーシップ雇用からの急な転換は難しい

これまでメンバーシップ雇用を行ってきた企業が、ジョブ型雇用に転換しようとしてもすぐには実行できません。採用条件や育成内容、労働環境、評価体制の整備が必要になるほか、ジョブ型雇用に知見のある人事・採用担当者の存在もかかせません。

これからジョブ型雇用を導入したい企業は、まずはメンバーシップ雇用との併用を目指し取り組んでいきましょう。

たとえば、あらたにプロフェッショナルコースを設け、30歳代まではメンバーシップ雇用で運用し、40歳代以降は役割を明確化してジョブ型雇用に転換するという方法もあります。プロフェッショナルコースに移行するかどうかを本人の自主性に委ねれば、既存の従業員から不満が上がることもないでしょう。

このように社内を整備した後に、新たな人材をジョブ型雇用で採用することで、社内にある程度の知見が集まった状態でジョブ型雇用を浸透させられます。

ジョブ型雇用を導入している日本企業の例

これまで見てきたような課題を乗り越え、ジョブ型雇用を導入・運用している日本企業もでてきています。

ジョブ型雇用を導入している企業の多くは、グローバル化や市場競争力の向上を視野に入れ制度改革を行っているようです。個のスキルを高めることを重視するなど、既存の価値観からの脱却に成功しています。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所では、2020年4月よりジョブ型雇用を強化する動きに乗り出し、2021年1月にはジョブ型雇用を全社員に広げる方針を定めました。以前より技術系職種で行っていたジョブ型採用を全社に広げた形です。

2020年度からは、一部のジョブを対象として学歴別の一律初任給額をやめ、対象者の技能や経験、職務内容によって個別の処遇設定を行うようにしています。事務系の職種でも「職種別採用コース」を新設し、メンバーシップ雇用から脱却しています。

同社がジョブ型雇用を強化した背景には、直面するグローバル化がありました。約30万人の従業員のうち、過半数が外国籍である日立では、同じ場所・同じメンバーとともに働くメンバーシップ雇用は通用しなくなっていたのです。欧米のスタンダードであるジョブ型雇用の導入で、グローバル共通の人事制度を整備できるようになりました。

富士通株式会社

富士通株式会社では、2022年4月よりジョブ型雇用を国内グループの一般社員4万5,000人を対象に導入しています。2020年にはすでに幹部社員に導入していたものを、すべての職層に拡大したものです。

具体的には、ジョブ型雇用の拡大と合わせてスキル教育の拡充や1on1ミーティングの浸透により、個々の成長を支援していく形です。また、従業員一人ひとりに職務記述書を作成し、同社グループ企業を含むグローバル共通の仕組み「FUJITSU Level」を導入し、報酬はレベルに応じたものにするとしています。

富士通株式会社は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスを掲げており、イノベーション創出に向けて社内外の多彩な人材を採用する方向へと転換するためにジョブ型雇用に転換しています。

株式会社資生堂

株式会社資生堂では、「グローバルで勝てる組織」を目指し、2021年から国内の管理職・総合職を対象としたジョブ型雇用を導入しています。従業員のレベルを図る基準を能力から職務に移行し、客観的な格付け・処遇を実施しているとのことです。

各部署の職務内容と必要な能力を明確化することで、個々のキャリアの自立性を高めたいねらいがあります。同社は、ジョブ型雇用の導入とあわせて全社共通の人材像「TRUST8コンピテンシー」を策定。これをグローバル共通の選抜、評価、人材育成プログラムのベースとすることで、全社一律の基準により個々のスキルアップ、キャリア構築をサポートしています。

KDDI株式会社

KDDI株式会社では、2020年8月からジョブ型雇用「KDDI版ジョブ型」をスタートしています。同社のジョブ型雇用は、働いた時間ではなく、成果や挑戦、能力を評価して処遇へ反映することを目的として導入されています。これにより、DX人材の獲得・育成を行い、かつ先進的なテクノロジーを活用して新たな働き方を支援しているのです。

IT技術の進展によって、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。そうした中、さまざまな企業が異業種間連携によりイノベーション創出に励む流れが生まれています。KDDI株式会社も例外ではなく、異業種とのコラボレーションにより事業領域を拡大しています。

ここで必要になるのが、既存事業にとらわれない専門性を有する人材です。「プロを創り、育てる」をコンセプトに、職務領域の明確化とあわせ、成果、挑戦、能力を評価する制度を整えました。企業の持続的成長と従業員の成長を実現すべく、ジョブ型雇用を運用しています。

株式会社ニトリ

株式会社ニトリが実施するジョブ型雇用は、メンバーシップ雇用とジョブ型雇用をミックスさせたような仕組みで運用されています。

ジョブ型雇用制度の適用の有無を職種で分け、かつ3~5年単位で職種を変えさまざまな視野とスキルを身につける「配転教育」を実施。一方、配転教育を実施しない、専門職に従事する従業員に対してはジョブ型雇用制度を適用しているのが特徴です。

また、配転教育は専門職になるまで行われます。配転教育の終了後、従業員自らがキャリアを選択できるよう体制を整えているのです。

まとめ
  • ジョブ型雇用は、職務に適するスキルや経験を持つ人材を採用する雇用手法
  • 欧米ではジョブ型雇用が主流となっているのに対し、日本企業では長期雇用を前提としてスキルに関係なく採用し、入社後に個々人の適性から担当職務を決定する「メンバーシップ雇用」が根付いている
  • リモートワーク・テレワークが拡大し、従来型の教育や人事評価が難しくなったことや、ビジネスモデルの転換に対応できる人材育成の必要性に迫られ、企業がジョブ型雇用にシフトする流れが本格化している
  • 専門分野に強い人材の採用や、テレワークとの相性のよさ、明確な評価基準など、ジョブ型雇用には多くのメリットがある
  • 専門性を有する人材として、派遣社員など正社員以外の登用が増加する可能性も示唆されており、なかでもニーズの高いIT人材は引く手あまたになると予想される

 

 

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