今注目されているデータサイエンティストの年収はいくら?
暮らしやビジネスの中で、日々、大量のデータが生まれ続けています。
その中から価値ある情報を抜き出してビジネスやサービスを作り出すデータサイエンティストは、将来性の高い注目の職種です。
積極的なデータ活用に取り組む企業は急激に増えており、データサイエンティストは引く手あまたの状態です。
ただでさえ人手不足の雇用環境の中で特に需要が高い職種であるため、手厚い待遇を約束する企業も多く、1000万円を超える年収を得られるケースも珍しくありません。
ここでは、多くの業界・業種の企業が採用を急いでいる、データサイエンティストの懐事情を解説します。
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あらゆる業界・業種の企業がデータサイエンティストを求めている
インターネット上での検索・SNS・小売り・金融などのサービスを提供する企業は、ユーザーや消費者の属性や行動履歴などを基に、他社より少しでも効果的で効率的なサービスを提供すべく競い合っています。
今後はIoTの活用が進み、交通、物流、ビルやインフラの管理、製造業、農業などの業種でもデータ活用が一気に進んでいくことでしょう。
例えば、日本の基幹産業である自動車産業では、クルマを売るビジネスから、移動手段をサービスとして提供するビジネス「Mobility as a Service(MaaS)」へと、ビジネスモデルを変えていく見込みです。
このようにデータを扱うビジネスシーンはさらに増え、扱うデータの種類と量も増大の一途をたどっています。
データサイエンティストは、価値あるビジネスの創出に欠かせないデータの取得と解析、活用を一手に担う重要な職種です。
現在、優秀なデータサイエンティストの確保と育成が多くの企業にとって、価値あるビジネスを展開していくための重要な経営課題となりつつあります。
そのため、データサイエンティストを取り巻く雇用環境は圧倒的な売り手市場であり、雇用条件もおしなべて好待遇です。
若い世代が高い報酬を得ている
では、実際のところ、データサイエンティストはどのくらいの報酬を得ているのでしょうか。
パーソルキャリアの転職サービス「doda」が公表している「平均年収ランキング2018」によると、データサイエンティストの2018年の平均年収は515万円となっており、全職種・業種の平均と比べると高水準を保っています(図1)。
データサイエンティストと同様にデータを扱う機会が多く、比較的業務内容が近い職種と比較すると、マーケティングが490万円、システム開発・運用が472万円で、それらと比べても好待遇であることが分かります。
データサイエンティストの年収データの特徴として、集計対象者の平均年齢が他の職種よりも若い点が挙げられます。
職種自体が新しいため若い人材が多く、その若い人材が全年齢合わせた日本の平均年収を大きく上回る報酬を得ているのです。
実は、データサイエンティストの2017年の平均年収は528万円でした。
「なんだ下がっているではないか」と感じる人がいるかもしれませんが、これにはからくりがあります。
多くの企業が若い人材を集めてデータサイエンティストを社内で育て始めたことにより、経験に乏しい若い層が増加。
全体の平均年収が下がったのです。
それでも、20代の平均年収だけで2017年と2018年を比較すると、419万円から456万円へと8.8%も伸びています。
1000万円プレイヤーも多く、1億円越えの年収の可能性も
平均年収が高いデータサイエンティストですが、この職種の報酬面から見た本当の魅力は平均ではなく、より高額な報酬が得られるチャンスが多い点にあります。
求人サイト上の待遇を見渡すと、他の職種よりも1000万円以上の求人を見つけやすい稀有な職種です。
中には、1億円もの収入を提示できる可能性があることを、一般的な求人サイト上ではっきりと示している例さえあります。
待遇面では、とても夢のある仕事だと言えます。
ただし、データサイエンティストを名乗れば、誰でも高収入が得られるわけではありません。
目立つ求人例だけをかいつまんで見ても、提示年収は約250万円から2000万円までとても大きな幅があります。
これもデータサイエンティストの年収事情の特徴です。
提示される年収に幅があるのには理由があります。
近年になって、突然データを上手に扱える人材が必要になり、ビジネスの現場も人事も必要なデータサイエンティストのスペックを定義しかねている企業が多くあるためです。
極めて高度な知識とスキルが求められる仕事が明確に見えている企業は高収入を提示している一方で、データ活用を強化したいが具体的業務がはっきりと定義できていない企業はそれなりの収入しか提示できていません。
ただし、こうしたバラツキは、各企業の人事上の知見が蓄積するにしたがって、次第に相応の相場に落ち着くことでしょう。
データサイエンティストなど先端IT人材は慢性的な人不足
長期的な視野から見れば、データ活用社会が拡大していくことは確実です。
それに伴い、データサイエンティストを育成する仕組みが整い、志望者の数も増えることでしょう。
待遇や求人数などの雇用環境は、需要と供給のバランスで決まります。
今後、データサイエンティストの雇用環境は、どのように変化していくのでしょうか。
経済産業省が2016年に公開した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、日本では、「先端IT人材」と呼ばれるビッグデータ、IoT、人工知能(AI)などを担う人材は、2018年時点で3万1000人、2020年には4万8000人不足すると予測されています(図2)。
データサイエンティストも先端IT人材にくくられる職種の1つです。
現時点でも企業間での熾烈な争奪戦が繰り広げられているデータサイエンティストですが、今後ますます需要過多になっていくと見ているわけです。
年収は属する業界、さらに個人の実務経験で決まる
データサイエンティストの年収は、下限と上限の間で大きな開きがあるということを紹介しました。
では、その年収は何によって決まるのでしょうか。
まずは、求人企業が属する業界によって大きく変動します。
データサイエンティストを求める業界・業種は千差万別です。
たとえ同じスキルを持つ人が同じ業務内容の仕事に就いたとしても、業界ごとの給与水準の違いが反映されてしまいます。
この傾向は、職制と給与体系がきっちりと定まっている企業同士で比べた場合がより顕著でしょう。
当然のことですが、平均年収は実務経験に裏打ちされた知識とスキルの度合いによっても大きく変わります。
データサイエンティストは、他の職種に比べて、この実務経験が年収に顕著に反映されやすい職種だと言えます。
これは、実務経験の違いが、生み出す成果を大きく左右する傾向があるからです。
現時点で、データサイエンティストとして輝かしい実務経験を持っている人材は、それほど多くありません。
このため、若くても目立った成果を上げた経験を持つ人材に対する需要は高く、高収入が約束されます。
逆に、いかにそれぞれの業界の中での職歴が長くても、データサイエンティストとしての経験が乏しければ高い評価は得られません。
このことから、高収入を得るためにはいかなるキャリアパスを描くか考えることが極めて重要な職種であると言えます。
データサイエンティストに求められる3つのスキル
現在、若い世代のデータサイエンティストの育成を強化する企業が増えているという話を紹介しました。
これは、今後もますます拡大する先端IT人材不足に備えて、社内でイチからデータサイエンティストを育てていこうとする企業の事情があります。
一方で、データサイエンティストの年収は業界によってバラツキがある他、知識やスキルの差が年収に如実に反映されます。
現時点で実務経験に乏しいデータサイエンティストが、最初から高収入を得ることは困難でしょう。
しかし、将来のキャリアアップを見据えて実務経験を積む場はたくさん用意されています。
現在、データの分析スキルに長けた若い人材を採用して、まずは育ててみようとする企業が多く見受けられます。
こうした企業のニーズに応えて、滋賀大学、武蔵野大学、横浜市立大学など複数の大学で「データサイエンス学部」が新設されるなど、人材の輩出を後押しする動きも出てきました。
データサイエンスには、統計学や数学、プログラミング、さらには経営学など既存の学問を超えた複合的知識が必要になります。
大学で、必要な知識を体系的に学んでおけば、企業での実務に携わる際に有利になるでしょう。
データサイエンティストを目指す若い人材にとって、今こそ新しい世界に踏み込みやすい時期なのかもしれません。