Siriの起源となった人工知能(AI)最初の「イライザ」とは
一昔前まではSF映画で出てくる技術とされていた「人工知能(AI)」ですが、最近では私たちの家庭でも身近な存在となってきました。
iPhoneやMacに搭載されている「Siri」もその技術のひとつです。
そしてSiriの起源とされているのが「イライザ」という人工知能です。
この記事では、1966年に発表された「イライザ」について詳しく説明していきます。
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人工知能(AI)「イライザ」とは
イライザ(ELIZA)とは、文章を用いて自然言語を処理し、人と対話することで知られるプログラムのことです。
人間の言葉を解析することで文意を読み取り、キーワードとなる単語を抽出して、定型文に組み込むことで、応答する仕組みになっています。
このような仕組みから「イライザ」は、人間とのコミュニケーションが可能とされていました。
人工知能(AI)について
人工知能を表す「AI」は、「Artificial Intelligence」という言葉の略称です。
Artificialは「人工的な」、Intelligenceが「理解力・知性・知能」という訳語があてられます。
この言葉を最初に提唱したのは、米国のジョン・マッカーシーという人物でした。
彼が提唱する人工知能の目的は、「コンピューター上のプログラムにより、人間のような知能を再現する」ことです。
このような特性を持つプログラムは、音声認識や翻訳、画像認識など、現在もさまざまな分野で研究が進められています。
ダートマス会議が発祥
イライザが生まれるきっかけになったのが、1956年にダートマス大学で開かれた「ダートマス会議」です。
この会議の議論によって、人工知能という分野を研究する方針が定められました。
他にもこの会議では、新しいプログラミング言語である「IPL」を誕生させるきっかけとなっています。
「IPL」はプログラミング言語の基盤となり、現在でも「LISP」として人工知能の研究には欠かせない言語です。
Siriの起源となったイライザの歴史
ダートマス会議を経て、1960年代からは急速に人工知能分野での研究が進みました。
その中で生まれたプログラムのひとつが、イライザという人工知能です。
ジョセフ・ワイゼンバウム(Joseph Weizenbaum)が生み出した人工知能
イライザの開発した人物として有名なのが、マサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウムです。
患者の悩みや怒りの気持ちに注意を傾け、主体的に自らの回復させていく治療プロセスに着目したのがはじまりでした。
彼はこのプロセスから「人の話を聞き、対話する」という機能を持ったイライザを作り上げたのです。
相手の話す内容を聞き、核心をついた質問を投げかけ、悩みからそれないように誘導する動作は、まるで精神科医やカウンセラーのようでした。
このイライザに触れた人の中には、感情移入して号泣したり、悩みを自分から打ち明ける人がいたといわれてます。
イライザに新たなプログラムを組み込む
Siriにとっては、イライザはいわば母親のような存在です。
イライザに新たな機能を組み込み、文章だけではなく音声でも対話できるようになったのが、Siriをはじめとする現代の人工知能です。
ちなみに、Siriに向かって「イライザ」のことを何度も尋ねると、興味深い返答が返ってくることがあります。
Y?o?u?T?u?b?eなどでは「都市伝説だ!」と話題になっていたこともありますので、イライザについて深く知りたい方は聞いてみるといいかもしれません。
人工無脳のポイント
人と対話するプログラムを指す「人工無脳」という言葉があります。
近年でいう「チャットボット」のことです。
イライザはこのチャットボットのような動作をしていたことから、人工無脳の起源ともいわれています。
人工無脳としてのイライザのポイントは、扱う言語が英語だったということを忘れてはいけません。
日本語と比べてシンプルな構文だからこそ、単語の一つひとつではなく構文全体でパターンを記憶することができました。
「人の話を聞いて、どの構文のパターンに当てはまるかを認識し、それに対応する構文で答えを返す…」
イライザの仕組みを簡単に説明すると、このような表現が適切でしょう。
代表的なAIの種類
人工知能といえばSiriが最も有名で、私たちにとっても馴染み深い存在です。
しかし世の中には、Siri以外にもさまざまな人工知能があります。
人工知能への理解を深めるためにも、代表的なAIの種類を紹介します。
Siri(シリ)
Appleによる携帯電話「iPhone」、コンピューター「Mac」に搭載されているのが、Siriという音声アシスタントです。
Siriの代表的な性能は、次の4つです。
- 音声認識
- 自然言語理解
- 命令の実行
- 返答
これらの性能はアップデートを繰り返すたびに向上しており、日本語の認識精度も高くなってきています。
女性・男性の性別変更が可能で、予定の追加やメールチェック、SNSへのコメント投稿もサポートしてくれます。
Viv(ビブ)
Siriの開発者でもあるダグ・キトラウス(Dag Kittlaus)が立ち上げたチーム「Viv Labs」によって開発されたのが、「Viv」と呼ばれる人工知能です。
話し手の言葉の意味だけではなく、その先の行動を予測して質問を提示する賢さを持っています。
他のAIと異なる点は、「Viv」自身が日々学習し、使用するたびに性能が高まっていくことです。
最新技術を持ち合わせた「Viv」は、次世代型のAIシステムといえます。
Cortana(コルタナ)
マイクロソフトが提供するパーソナルアシスタントが「Cortana」です。
Windows10バージョンから搭載されるようになり、天気やアラーム設定、WEB検索などの機能でユーザーを手助けしてくれます。
キーボードが苦手な人でも、コルタナの音声機能を使用すれば、PC操作を簡単に行うことができます。
りんな
「Cortana」と同様にマイクロソフトが開発した人工知能が、女子高生AIの「りんな」です。
他の人工知能とは違いユーザーをサポートする機能はありませんが、SNSアプリ「LINE」上で多彩な会話を繰り広げることができます。
話しかける言葉によっては、ゲームやクイズを楽しむこともできる、会話型のAIシステムです。
Tay(テイ)
Tayは、ユーザーとのメッセージをやり取りすることで学習していく、りんなと同タイプの人工知能です。
マイクロソフトによってTwitter公式アカウント上でスタートしましたが、一部のユーザーが人種差別的な言葉を多用し、暴力的な発言が多くなるといったトラブルが発生しました。
そのため、Tayはデビュー数時間後に休止・非公開という処置が取られています。
人工知能(AI)を作るために学ぶべきこと
プログラミングを学ぶことで、私たち個人でも人工知能を開発することが可能です。
人工知能を作るために、エンジニアが最低限知っておきたい分野について紹介します。
プログラミング言語「Python」
人工知能を作るには機械学習の知識が必要になりますが、この分野で最も高いシェアを獲得しているプログラミング言語が「Python」です。
Pythonのライブラリを使えば、人工知能の開発に取り組むことができます。
そのため、人工知能に関する分野の求人は「Python」を条件としている企業もあります。
プログラミング初心者がトレーニング目的で学ぶことにも適しているため、人工知能に興味がある方は、Pythonから学習しはじめるのがおすすめです。
機械学習を学ぶ
「ディープラーニング」は日本語で「深層学習」と呼ばれ、プログラムが自動的にデータを区別して分類する学習方法を指す用語です。
大量の画像やテキストといった情報を分析することで、データの中に存在するパターンを解析する「機械学習」のひとつとなります。
これを用いることで、自ら学習し続けるプログラムを実現させることが可能です。
Pythonと合わせて重要な知識のため、人工知能開発に携わる方は機械学習について、しっかり学んでおく必要があります。
人工知能(AI)の危険性
人工知能が発達すると、AIが人間の能力を上回る「シンギュラリティ」というタイミングが訪れると予測されています。
人間主体で回っている社会が、人工知能主体で回ることになるとさまざまな危険が及ぶかもしれません。
将来的になくなる職業が出る
人工知能の発達によって、私たちが携わっている仕事の大半が、人工知能に置き換えられることになります。
たとえば、スーパーやコンビニのレジの無人化は、近い将来広がりを見せることになるでしょう。
さらには、法律の専門家である弁護士といった士業までもが、人工知能に置換されることが見込まれています。
人間の頭脳を超える可能性がある
人間の理解を超えた人工知能が誕生することで、人々に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
自分たちよりも優れている機械が身近に存在していたとして、私たちは安心して毎日を過ごせるでしょうか。
説明書がないAIたちに危機感を覚え、バグ・動作不良への恐怖感も高まることが予測できます。
人工知能は、このようなデメリットや危険性が潜んでいることを覚えておくことが大切です。
イライザは現代に大きな影響を与えた人工知能の起源
人工知能の起源であるイライザは、Siriをはじめとする多くの人工知能に影響を及ぼし、未来の私たちの生活を大きく変えようとしています。
今後間違いなくトレンドになる人工知能の起源や成り立ちを知っておくことで、専門的な知識も理解しやすくなります。
また、プログラマーとして人工知能の知識があれば、スキルアップや業務の幅が広がるため、今後のために勉強しておいて損はありません。
- イライザは1966年に発表された人工知能(人工無脳)のひとつ
- ダートマス会議がAI誕生のきっかけとなった
- イライザの生みの親は、ジョセフ・ワイゼンバウムという人物
- 人工知能の開発には、Pythonと機械学習の知識が不可欠