Edtech-エドテック教育とは?市場規模と企業一覧・文部科学省も推進する取り組み
2020年度から順次施行される「新学習指導要領改定」により、日本の教育分野に大きな変革が起ころうとしています。
学習者の「学び」と教育者の「働き方」の改革が求められる今、日々進歩する技術の力で教育現場の課題解決をめざすエドテックについて取り上げます。
Contents
Edtech(エドテック)とは?教育 × IT技術で教育改革!
Edtech(エドテック)とは、教育を意味する「Education」と、IT技術を指す「Technology」を掛け合わせた造語です。最新技術が融合された「イノベーション教育」として、新しい形の教育ビジネスやサービスが展開されています。
私たちの身のまわりではすでに「教育×IT技術」が利用されています。たとえば、スマートフォンやタブレットで語学の習得や受験対策ができる学習アプリは、その代表といえるでしょう。
今後さらに教育改革に大きく寄与すると予測される、教育×IT技術を語るうえで頻出するキーワードにエドテックとeラーニングがあります。
この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
さらにエドテックの可能性についても説明します。
eラーニングとエドテックの違い
エドテック(Edtech)とは、Education(教育)とTechnology(テクノロジー )を組み合わせた造語です。
ITを活用して、教育業界や 教育市場にイノベーション(技術革新)を起こすような、 新しいビジネス領域、 教育サービス、教育手法 、スタートアップ 企業などの総称として、広範囲で使用されます。
まだ新しい言葉のため、聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。
一方、eラーニング(e-learning)という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
eラーニングとは、インターネット技術 をもちいて 学習することであり、また学習をおこなうための教材 や学習管理システム の総称としてもちいられる言葉です。
eラーニングの「e」は、e-mailのeと同様、electronic(電子的)を意味します。
エドテックにできること
エドテックが広がっている背景は、教育業界・市場にもたらされるイノベーションに多くのメリットがあることに他なりません。
- 「いつでも、どこでも」好きなだけ授業を受ける
- 人材不足の解消
- 教室運営にかかる賃料等のコスト削減
- 社会人学習・リカレント教育の活発化
教育の効率化やコスト削減、人的リソースの有効活用、そして「学び直し」の機会の創出と、教育を取りまくあらゆる要素へのポジティブな作用が期待されています。
「いつでも、どこでも」好きなだけ授業を受ける
大学の講義をオンラインで受講できるMOOC(Massive Open Online Course)は、大学教育におけるエドテックであるといえます。
決まった時間に学校に行かなくても、インターネット環境さえあれば「いつでも、どこでも」好きなだけ授業を受けることができます。
ほとんどの講義が無料で配信され、学位の取得も可能です。
人材不足の解消
エドテックは人材不足の解消にも役立ちます。
学校教育の現場においてタブレットなどのICT機器が生徒に配布されれば、英語の授業などは遠隔地からのストリーミングによる配信、AIによる発音判定などが可能になります。
教室に教師を呼ばなくて済むため時間と距離の壁による人材不足の解消に役立ち、海外のネイティブによる質の高い教育を生徒に提供することも可能になります。
教室運営にかかる賃料等のコスト削減
教室を設けず、自宅でオンライン受講ができる学習システムであれば、教室運営にかかる賃料等の費用削減が可能です。
諸経費の削減によって、質の高い教育を受講代をおさえて提供できるようになるため、学習者の経済力の差により生まれる教育格差の抑制効果も期待できます。
社会人学習・リカレント教育の活発化
教育は学生だけが対象ではありません。社会人の学習にも一役買うことが期待されています。
特にIT分野はエドテックと親和性が高い分野です。完全なオンライン学習によるプログラミング教育がおこなわれており、学習者に対してメンターとよばれる講師がリモートで対話的にプログラミングをサポートするケースもあります。
また、義務教育を受けた後、社会人になってから個人の希望で教育機関に戻って学び直すという教育システム「リカレント教育」にもエドテックの活用が見込めるでしょう。
このように、エドテックにより可能になった「いつでも、どこでも」のメリットは、社会人も享受できます。
また、集合研修ではなく、eラーニングによるオンライン研修を採用することで、交通費や宿泊費、教材費など社員研修にかかるコスト削減が叶い、社員の学習状況の管理も容易になります。
リカレント教育とは|企業・個人のメリットと助成金・補助金について
成長するエドテックの市場規模と参入企業一覧
日本におけるエドテック市場は2017年に2,000億円を突破し、2017・2018年におこなわれた「新学習指導要領改訂」、2019年に施行された「働き方改革関連法」を背景に2023年には3,000億円にまで成長すると予測されています。
エドテック関連のサービスを提供する多くの事業者が参入しているのは、学習塾や語学教室などの「学校外教育」の分野です。子供向け学習のほか、受験生や社会人向け学習、プログラミング学習など、多彩なサービスがラインアップしています。
企業・事業者名 | 対象・テーマ | 概要 |
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株式会社ジャストシステム | 子供向け学習 |
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株式会社ベネッセコーポレーション | 子供向け学習 |
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株式会社リクルートマーケティングパートナーズ | 子供~社会人向け学習 |
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株式会社学びエイド | 受験向け学習 |
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株式会社Z会 | 受験向け学習 |
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株式会社葵 | 受験向け学習 |
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株式会社レアジョブ | 英会話学習 |
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合同会社DMM.com | 英会話学習 |
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株式会社グロービス | 社会人学習 |
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株式会社Schoo | 社会人学習 |
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キラメックス株式会社 | プログラミング学習 |
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コードキャンプ株式会社 | プログラミング学習 |
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エドテックツールの導入補助金
エドテック市場が拡大し、事業者の参入が続いている背景には、エドテックツールツールの導入補助金の存在も見逃せません。
経済産業省が採択した導入補助金「EdTech導入補助金2021」は、エドテック教材などを導入する事業者に対して、導入経費を補助する制度です。2021年8月から順次交付が決定されており、教育イノベーションのさらなる普及をバックアップしています。
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経済産業省・文部科学省のエドテックへの取り組み
エドテックは国策としてどのような位置づけなのでしょうか。
経済産業省・文部科学省の取り組みと、未来の日本でエドテックが普及するためにはどのような課題があるのかを説明します。
経済産業省「『未来の教室』とEdTech研究会」を簡単に解説
「『未来の教室』とEdTech研究会」とは、経済産業省が設置した未来の学びの姿を模索するための有識者会議です。
論点を初等中等教育分野にしぼり、「学びのSTEAM化」「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤の整備」の3つの柱で構成される「未来の教室ビジョン」を2017年度に第2次提言としてまとめました。
このビジョンのなかで、子供たち一人ひとりが自分に適した教育を受けられるインフラとして、エドテックを活用する方針が示されています。
「未来の教室ビジョン」の主旨である「学びのSTEAM化」「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤の整備」は、いずれもエドテックの教育環境プラットフォームを前提としており、今後ますます浸透していくことがうかがえます。
未来の教室ビジョン↓↓
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mirai_kyoshitsu/pdf/20190625_report_gaiyo.pdf
文部科学省はエドテックを活用した教育改革推進プロジェクトを推進
文部科学省では、「Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性」を打ち出し、エドテックを下記の位置づけとして定義しています。
- EdTechを「教育におけるAI、ビッグデータ等の様々な新しいテクノロジーを活用したあらゆる取組」と整理
- EdTechは、児童生徒と教師にとって使いやすく、教育の質の向上につながるものでなければならない
なかでも、早急に着手すべき課題として、外国語教育や特別支援教育に関わる領域でのエドテック活用や、学習状況の見える化および結果に応じた指導の推進に言及。有識者会議による深掘り、自治体の取り組み、研究開発の加速化を三位一体で進めていく方針を発表しています。
日本でエドテックは普及するのか? 今後の課題は何か
このように、エドテックは今後日本の教育プラットフォームとして普及していくと考えられます。
しかし、エドテックの普及には課題もあります。
日本の学校教育現場では、エドテックを活用するためのICT環境 が未熟です。
政府主導で早急に学校教育現場におけるICT環境の整備を進めていく必要があります。
また、エドテックを産業として普及させるには、提供する教育サービスの収益化も必須です。
一般的にMOOCのようなオンライン教育を主体とする学習スタイルの場合、 学習効果 がオフライン講義よりも低いことが指摘されています。
収益を得るためには対価となる学習効果を上げる必要があります。
学習内容を改正し、これらの課題をクリアすればエドテックが普及していく可能性は十分にあるでしょう。
エドテックに関するおすすめ本3選
エドテックは多くの教育関係者からの関心も高く、数多くの書籍が発売されています。
ここでは、エドテックに関するおすすめ書籍を紹介します。
EdTechが変える教育の未来
出典:https://www.amazon.co.jp/EdTechが変える教育の未来-佐藤昌宏/dp/4295004510
本書ではエドテックを「デジタルテクノロジーを活用した教育のイノベーション」と位置づけています。
誰でも手軽に使えるようになったテクノロジーをもってイノベーションを起こせること、エドテックの持つ未来の学びの可能性を教えてくれます。
教室にICTがやってきた 本田小学校のフューチャースクール 導入から定着まで
出典:https://www.amazon.co.jp/教室にICTがやってきた-本田小学校のフューチャースクール-導入から定着まで-葛飾区教育委員会/dp/4757143265
総務省の「フューチャースクール推進事業」および文部科学省の「学びのイノベーション事業」実証校に選ばれた葛飾区立本田小学校。
本田小学校が実際に3年間取り組んだ、ICT導入プロセスや教員研修、ICT活用事例などが紹介されています。
導入から定着までの詳細がわかる一冊です。
ウェブで学ぶ ―オープンエデュケーションと知の革命
出典:https://www.amazon.co.jp/ウェブで学ぶ-――オープンエデュケーションと知の革命-ちくま新書-梅田望夫/dp/4480065679
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)からはじまった「ウェブ」を利用した新しい学びの形にあたる「オープンエデュケーション」。
これはオンラインで無料で大学の講義を受けられるMOOCの原点です。
本書は全世界に広まった革命的ムーブメントの核心をとらえ、学びの進化とウェブの可能性についてを提示しています。
好きなときに好きなことを学べるエドテック時代の到来
エドテックは、教育とテクノロジーの融合により生まれた【教育革命】と言っても過言ではありません。
ICTやウェブの進化により、「いつでも、どこでも」効率よく学ぶことが可能になりました。
「学び」を得ようとしている人にも、「学び」を与えようとしている人にも、エドテックは今までにない可能性をもたらします。
多様性と自由な選択ができるエドテックは、学生のみならず、働きながら学びたい社会人の需要も予測できるあらたな市場です。
好きなときに好きな場所で、エドテックを自身のキャリアアップに役立てましょう。
- エドテックとは教育とテクノロジーの融合でイノベーションを起こすビジネスやサービスの総称
- エドテックの市場規模は拡大が予測されており、個性的なベンチャー企業も参入している
- 日本の教育政策にエドテックを取り入れる場合、「ICT環境」「学習効果」「収益化」といった課題がある