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フィルターバブル・エコーチェンバー現象とは?発生アルゴリズムと危険性・偏った情報の回避対策

IT/Web派遣コラム

私たちが疑問に感じたことや解決したい課題の答えを示してくれる、WebサイトやSNS。便利な反面、その機能や仕組み、アルゴリズムに起因して、情報の多様性が失われ考え方や視野が狭まってしまう危険性があることをご存じですか?

本記事では、私たちユーザーを社会から孤立させる可能性をはらむ、情報バイアスを誘発する「フィルターバブル」「エコーチェンバー」現象について解説。パーソナライズされた情報フィルターに潜む落とし穴に目を向けて、目にする情報の偏りを回避する方法を考えていきます。

POINT

  • フィルターバブルとは、「見たい情報が優先的に表示される」「見たくない情報が遮断される」環境が構築され、ユーザーの視野が狭くなっていくという“仕組み”
  • フィルターバブルと近しい「エコーチェンバー」は、X(Twitter)やFacebookなどのSNS上で似たような意見が集まる“現象”で、フィルターバブルという“仕組み”によって引き起こされている
  • 相手側の意見が全く見えない状態となるのがフィルターバブルの問題点であり、特定の思想や意見に傾倒し、人々の視野や思考の幅を奪ってしまう危険性が懸念されている

 

フィルターバブルとは

総務省の「情報通信白書」では、フィルターバブルを以下のように定義しています。

アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を指す。

つまりフィルターバブルとは、ユーザーの過去の行動や検索履歴に基づきパーソナライズされるインターネットアルゴリズムによって、「見たい情報が優先的に表示される」「見たくない情報が遮断される」環境が構築され、情報の偏りが生じ、ユーザーの視野が狭くなっていくという仕組みです。

これにより、ユーザーは自分が関心を持つ情報ばかりに接触し、多様な視点や意見へのアクセスが困難になります。

なお、フィルターバブルは、提唱者であるアップワージー社のCEOイーライ・パリサーが自身の著書「The Filter Bubble」で触れたことによって世間に浸透したといわれています。

フィルターバブルの影響はWebページの検索結果のみならず、Webサイト閲覧時に表示される広告やニュースにおいても同様です。なにげなく目にしているインターネットの情報はランダムに表示されているのではなく、検索エンジンやソーシャルメディアのアルゴリズムの仕組みに則り、パーソナライズされて表示されているのです。

 

フィルターバブルとエコーチェンバーの違い

フィルターバブルと類似する言葉として、「エコーチェンバー」の言葉がたびたび言及されます。こちらも総務省の「情報通信白書」に記載があります。

ソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたものである

エコーチェンバーはX(旧Twitter)やFacebook、YouTubeなどのソーシャルメディア(SNS)上で似たような情報や意見が繰り返され、認識が先鋭化される “現象”を意味しており、その現象はフィルターバブルという“仕組み”によって引き起こされていることになります。

また、エコーチェンバーの特徴には、異なる意見が排除される傾向も挙げられ、特定の見解が過剰に強化されるメカニズムも指摘されています。

フィルターバブルとエコーチェンバーの言葉は混同されがちですが、「形成の仕組み」「影響範囲」といった点において、厳密には両者は異なる概念です。

フィルターバブル エコーチェンバー
形成の仕組み アルゴリズムによる情報選別 ソーシャルネットワーク内での意見の強化
影響範囲 個々のユーザーが特定の情報にしかアクセスできなくなる コミュニティ全体で特定の意見が強化され、異なる意見が排除される
事例
  • Google検索結果がユーザー個別の検索履歴に基づきカスタマイズされ、異なる情報に触れる機会が減る
  • Xのおすすめフィードがユーザーの「いいね」やシェアに基づきカスタマイズされ、ユーザーは同じ意見の投稿ばかりを見るようになる
  • 特定の政治的見解を持つクラスタやSNSグループに同じ意見の人々が集まり、その意見が過剰に先鋭化される
  • 特定の健康情報を信じるコミュニティで、科学的な反論が排除され、誤った情報認識が強化される

 

フィルターバブルが起こる仕組み

フィルターバブルが起こる仕組みは、以下に挙げる機能と密接に関係しています。

  • トラッキング機能
  • フィルタリング機能
  • パーソナライゼーション機能

これらは本来、ユーザーの利便性向上のために開発された機能です。しかし高性能化が進んだ結果、フィルターバブルを引き起こす原因にもなっています。

 

トラッキング機能

Web上におけるトラッキング機能とは、Webサイトに訪れたユーザーを追跡し、データを収集する機能のことです。

  • 閲覧履歴:ユーザーが訪問したWebサイトや閲覧したページ、および滞在時間など
  • 検索履歴:ユーザーが検索エンジンに入力した検索キーワード
  • クリック行動:ユーザーがクリックしたリンクや広告

これらの情報は、Cookieと呼ばれるテキストファイルによって収集できます。

Cookieが適用されると、Webサイト閲覧時に小さなテキストファイルが発行され、ユーザーのPCやブラウザに保存されます。検索エンジンはこの情報を収集することで、ユーザーの好みや趣向を把握。定量データ化することによって、Web広告などの効果測定に利用されています。

 

フィルタリング機能

フィルタリング機能とは、トラッキング分析したユーザーの好みや傾向に合わせて、ユーザーに表示される情報を選別する機能です。

ユーザーの好みや傾向に合致したWebサイトを優先して表示させるということは、ユーザーが好まない情報を表示させない機能であるとも言い換えられ、フィルターバブルを構成する要因となります。

なお、フィルタリング機能には、以下のような方法があります。

概要
URLフィルタリング

URLを基にWebサイトを表示するか否かの判断が行われる。

  • ブラックリスト方式:URLを指定してブロック。該当しないURLのみ閲覧可能
  • ホワイトリスト方式:閲覧を許可するURLを指定する。許可されていないURLは閲覧不可
  • カテゴリフィルタリング方式:カテゴリを指定して(例:SNS、アダルトなど)、該当するURLの閲覧をブロック
  • レイティング方式:Webサイトを評価基準によって判断。基準を超えるとブロック
コンテンツフィルタリング コンテンツ(内容)を基にWebサイトを表示するか否かの判断を行われる
協調フィルタリング 同様の興味や関心を持つ他のユーザーの行動データを利用して、似たような興味を持つコンテンツを推奨する
検索フィルタリング 検索エンジンがユーザーの過去の検索履歴やクリック行動を参照し、関連性の高い検索結果を優先的に表示する

たとえば子どもにスマホを持たせる際、表示させたくないコンテンツをブロックするといったように、フィルタリング機能が利用されています。

 

パーソナライゼーション機能

トラッキング機能やフィルタリング機能をさらに個人最適化するのが、ユーザーごとにカスタマイズされたコンテンツを提供する「パーソナライゼーション機能」です。

具体的には、次のような方法でパーソナライゼーションがなされています。

  • ニュースフィードのカスタマイズ:SNSやニュースフィーダーがユーザーの過去の行動データを参照し、興味を持ちそうな記事や投稿を優先的に表示する
  • 広告のターゲティング:広告プラットフォームが、ユーザーの興味や関心を追跡し効果的な広告を表示する
  • コンテンツの推奨:動画ストリーミングサービスや音楽配信サービスが、ユーザーの視聴履歴やリスニング履歴から興味を持ちそうなコンテンツをレコメンドする

つまり、パーソナライゼーション機能がおよぶ範囲は、検索結果だけに留まりません。ニュースサイトの「おすすめ記事」やSNSの「知り合いかも」、YouTubeのレコメンデーションなども、パーソナライゼーション機能によってカスタマイズされています。

ユーザーに便利な機能である一方で、ユーザーに最適でないと判断されたWebサイトや情報は表示されないこととなり、フィルターバブルを加速させる要因になっています。

 

フィルターバブルの危険性と問題点

では、フィルターバブルの仕組みはどのような問題を誘発し、悪影響を生じさせるのでしょうか? 総務省の「情報通信白書」では、以下の3つを問題点として注意喚起しています。

  • ひとりずつが孤立する
  • 目に見えない
  • ユーザー自身が選んだわけではない

テレビや新聞、雑誌などのメディアは、閲覧するか否かを能動的に選択できます。特にテレビ番組は不特定多数が視聴するため、情報の共有も容易です。

一方、フィルターバブル環境では、ユーザーは知らず知らずのうちにパーソナライズされた状況下に置かれています。同じ検索ワードを入力したとしても、個々人によって行き着く先は異なるため、同じ意見を持ち合わせた人でも同じ検索結果に行き着くとは限りません。情報や体験の共有も難しくなってくるため孤立する危険性をはらむ、という点で問題視されているのです。

具体的には、次のような危険性が懸念されています。

  • 情報の偏り
  • 社会的分断
  • 誤情報やフェイクニュースの拡散
  • イノベーションと創造性の阻害

 

情報の偏り

フィルターバブルの顕著な悪影響は、ユーザーが特定の視点や意見にのみに接することで、ほかの重要な情報を見逃してしまうことにあります。ユーザーは自分の既存の信念に基づいた、「心地よい」情報ばかりを受け取ることになり、異なる意見や視点に触れる機会が減少していきます。

こうした自己強化バイアスの醸成や情報多様性の欠如は、次に挙げる社会的分断とも深くかかわってきます。

 

社会的分断

フィルターバブルによって、社会的分断が助長される危険性も指摘されています。異なる意見を持つ人々が互いに理解し合う機会が減少し、結果として社会全体が分裂するリスクが高まっていくためです。

その代表的な例が、前述したエコーチェンバー現象です。特定の情報や意見が強化され、極端な思想や行動に走るリスクはすでに顕在化してきています。

 

誤情報やフェイクニュースの拡散

フィルターバブルは、誤情報やフェイクニュースが広まりやすい環境を作る温床にもなりかねません。フィルターバブルの悪影響によって信頼性の低い情報への接触頻度が高まってしまうと、正確な情報は埋もれていきます。

結果、フェイクニュースが拡散されやすくなってしまうと、社会的な混乱や誤解を招くことになります。

 

イノベーション・創造性の阻害

そもそも、多様な情報や視点に触れることは、イノベーションや創造性の発露に欠かせません。同じような情報ばかりに接すると、新しいアイデアや発想が生まれにくくなるのは自明でしょう。

フィルターバブルによる思考の制限により、個々のクリエイティビティが阻害されるリスクには常に注意しなくてはいけません。

 

フィルターバブルが問題となった事例

フィルターバブルの代表的な事例として有名なのが、2016年に行われた米国大統領選挙でのFacebookの投稿表示です。

トランプ氏を支持する人たちの間で有名となった「Why I’m Voting For Donald Trump」は、選挙期間中、Facebook上でトランプ支持派の人たちに150万回以上もシェアされました。しかし、対戦相手となったクリントン氏の支持者たちには、選挙期間中に該当の記事は一回も表示されなかったといわれています。

また、新型コロナウイルスのパンデミックにおいても、フィルターバブルは大きな問題となりました。特にワクチン接種や感染防止対策に関する情報の偏りや社会的分断は顕著であり、SNSなどで見られた誤情報や陰謀論の拡散は記憶に新しいところです。

2020年のBlack Lives Matter(BLM)運動においても、フィルターバブルの影響が指摘されています。インターネット上での情報の分断は、運動の支持者と反対者の間で異なる現実認識を生み出し、対話や相互理解をさらに難しくしてしまいました。

このように、相手側の意見が全く見えない状態となるのがフィルターバブルの問題点です。自身が望まなくても特定の思想や意見に自然と傾倒してしまい、人々の視野や思考の幅を奪ってしまう危険性が懸念されています。

 

フィルターバブルへの対策

フィルターバブルを回避するために、2つの方法が挙げられます。

  • プライベートブラウズを使用する
  • インターネット以外からも情報を収集する

トラッキングやフィルタリングなどが機能する環境下でフィルターバブルを回避することは不可能です。それらの機能がおよばない、プライベートブラウズを使用することが、フィルターバブル対策には不可欠となります。また、情報収集の場をインターネット以外にも求めることで、幅広い情報を得られるようになるでしょう。

 

プライベートブラウズを使用する

プライベートブラウズとは、過去の検索履歴やログイン時のデータが、ブラウザを閉じると同時に自動的に削除される機能を有したモードです。プライベートブラウズには次のような利点があり、過去のアクティビティに検索結果を左右されることなく、フラットな検索結果を表示できます。

  • Cookie保存の回避:プライベートブラウズでもCookieは一時的に保存されますが、セッションが終了すると削除されます
  • 検索履歴の非保存:プライベートブラウズでは、検索エンジンが過去の検索履歴を保存しないため、中立的な検索結果が表示されます
  • 一時的な情報非保存:Webサイトの閲覧履歴や入力データがセッション終了時に破棄されるため、ユーザーのオンライン行動は追跡されにくくなります

なお、プライベートブラウズは使用するブラウザによって名称が異なります。

ブラウザ名 プライベートブラウズ名
Google Chrome シークレットモード
Safari プライベートブラウズモード
Internet Explorer InPrivateブラウズ
Fifefox プライベートブラウジング機能
Opera プライベートウィンドウ

プライベートブラウズを開くのは至って簡単です。一例としてGoogle Chromeのプライベートブラウズであるシークレットモードの開き方を紹介します。

【シークレットモードの開き方】

  1. Google Chromeを起動させる
  2. 画面右上にある「・・・」をクリック
  3. 「新しいシークレットウィンドウ」をクリックする

解除方法は、通常のブラウザを閉じる際と同じく右上の「×」マークをクリックするだけです。

 

インターネット以外からも情報を収集する

プライベートブラウズを利用すれば、自分が欲しい情報以外の情報に触れる機会が増えますが、それでもなお「不必要な情報は検索しない」点において、閉ざされた環境にいることに違いはありません。インターネット以外のメディアにも、情報収集の場を広げていくべきでしょう。

いまではオールドメディアと捉えられる向きもあるテレビや新聞ですが、こちらが望むと望まざると、全ての人に平等に日本や世界で話題になっているトピックを届けてくれます。そのこと自体は一長一短ではありますが、「視野を広げる」という観点では有力な選択肢となりえるメディアです。メイントピックとは別ジャンルのコラムなどが掲載されている雑誌や紙媒体も、読む人の知見を広げてくれるでしょう。

 

まとめ
  • フィルターバブルとは、「見たい情報が優先的に表示される」「見たくない情報が遮断される」環境が構築され、ユーザーの視野が狭くなっていくという“仕組み”
  • フィルターバブルと近しい「エコーチェンバー」は、X(Twitter)やFacebookなどのSNS上で似たような意見が集まる“現象”で、フィルターバブルという“仕組み”によって引き起こされている
  • フィルターバブルとエコーチェンバーは、「形成の仕組み」「影響範囲」といった点において異なる概念
  • フィルターバブルは「トラッキング機能」「フィルタリング機能」「パーソナライゼーション機能」と密接に関係している
  • 相手側の意見が全く見えない状態となるのがフィルターバブルの問題点であり、特定の思想や意見に傾倒し、人々の視野や思考の幅を奪ってしまう危険性が懸念されている
  • 特に政治など、公平性を期す必要がある情報を収集する際には注意が必要
  • 多角的な視点を持てるよう、プライベートブラウズやマスメディアを利用するなど、フィルターバブルの影響を受けない環境下での情報収集も有効活用すべき

 

 

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