「クリーンルームってなに?」未経験でも知っておきたい【基礎知識】
半導体製造や医薬品製造で使われるクリーンルームがどのようなものかご存知でしょうか?
聞いたことはあっても、未経験だと身構えてしまうかもしれません。
今や半導体製造だけでなく、様々な分野のものづくりで活用されているクリーンルームとは、一体どのような職場なのか?
職場環境について見ていくことで、これから働く方の参考になればと思います。
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そもそもクリーンルームとはどんなものか
その名のとおり非常にクリーンな部屋で、清掃では取り除けないパーティクルと呼ばれる目には見えない微小な塵埃や浮遊微生物などの汚染物質を、できる限り室外へ排出するように設計されています。
空間を高い乱流方式清浄度レベルに保つための設備には「HEPAフィルタ」という高性能フィルタを使用しています。
扱うものによっては、温度や湿度、圧力、静電気、電磁波などの環境条件も管理されているクリーンルームもあるのが特徴です。
そしてパーティクルの発生を抑える為に、紙類などの発生元となるような物は持ち込まないことや、入室するにはクリーン服と呼ばれる埃の発生しない服に着替え、エアシャワーを浴びてから入出します。
ほかにもさまざまな部屋の内部を清浄に保つ工夫がされています。
クリーンルームは給排気システムの違いによって2タイプに分かれます。
ひとつは「一方向流方式」です。
天井全面もしくは壁の一面にHEPAフィルタなどの高性能フィルタを設置し、気流が一方向に流れるようにする方式です。
塵埃や浮遊微生物を押し出すように室外に排出するのが特徴です。
天井全面から床面に気流が流れるようにするものは「垂直層流方式」と呼ばれています。
もうひとつは「非一方向クリーンルーム(乱流方式)」です。
天井や壁の一部にHEPAフィルタなどの高性能フィルタを設置し、他の一部に排気口を設け、清浄空気を室内に取り入れ、発生している塵埃や浮遊微生物を希釈して室外に排出するのが特徴です。
より高い清浄度を保てるのは「一方向流方式」なので、覚えておくとクリーンルームで働くことになったときに、その現場がどれだけ空気清浄に気をつかっているかがわかります。
クリーンルームの空気清浄度規格とは?
ここでクリーンルームの空気清浄度規格についてお話しします。
清浄度目安となる「空気清浄度規格」としてはじめて制定されたのは、1963年の米国連邦規格(FED-STD-209)です。
米国連邦規格では、1立方フィートに含まれる粒径0.5μm粒子の粒子個数を規定しており、清浄度クラスでいう「クラス100」というと、1立方フィート中に含有される0.5μm粒子が100個以内であることを意味していました。
この規格は「ISO14644-1」がISO規格として新たに制定されたため、2001年に廃止されています。
ISO14644-1では1立方メートル内に含まれる0.1μm以上の粒子数を規定しており、米国連邦規格でクラス100にあたる「Class5」では1立方メートル内に含有される0.5μmの微粒子は3,520個までとされています。
どの様なものづくりの現場で活用されているのか?
クリーンルームは工業用とバイオ用に大きく分類されます。
工業用では主に半導体やMEMS部品などの精密部品の製造に用いられます。
1/1000㎜単位の構造を持つこれらの製品は、目には見えないサイズのわずかな埃があるだけでショートや接着不良などの不具合を発生させる為です。
バイオ用は薬品や化品などの製造や開発、最近では食品の製造でも活用されています。
埃だけでなく、菌も入らないように滅菌後の空気を供給するなどの工夫が施されており、菌や異物の混入を避けるために採用されています。
気になるクリーンルームでの作業環境と注意点
製品によって求められるレベルによりますが、基本的には埃のでる物は持って入れません。
携帯やハンカチなどの私物はもちろんのこと、メモやペンもクリーンルーム専用品を使用します。
入室には専用のクリーンウエアを着て、手袋やマスクを着用してから入室する場合がほとんどです。
着替えて入室するだけで数分必要なため頻繁に出入りするのは非常に面倒です。
もちろんクリーンルーム内にトイレや飲食するようなスペースは基本ありません。
入室したら、所定の休憩時間までは退室しないことが基本になります。
簡単にトイレに行けない環境のため、中には作業前に水分の摂取を控えたりする人もいるほどです。
「クリーンルームだから」と気にしなくても大丈夫!
クリーンルームは多くの業種で利用され一般的になってきており、半導体、医療にかかわらず、精密部品加工でも利用する場合が増えてきています。
もしあなたがクリーンル―ムで作業する事になっても、あまり身構えずに、きちんと注意事項を守り作業にのぞめば、それほど心配する事はないでしょう。