機械設計者なら知っておきたい金属の機械的性質
機械設計を行う上で、材料選択は重要な課題の1つとなります。
部品の特性を把握しておくためにも、選定する金属材料の材料特性や機械的性質をよく知っておかねばなりません。
金属材料はそれぞれに異なった特徴や機能を有しているため、「引張り強さ」や「硬さ」などを数値化してその利用目的を明確にしています。
今回は金属の機械的性質を表す各要素をご紹介します。
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金属の引っ張りや伸びに対する強さを示す材質の要素
金属材料が持つ、変形や破壊に対する抵抗力の強さを表す要素を以下に示します。
①引張り強さ
材料の引張り荷重に対する抵抗力の大きさのことです。引張り強さの大きい材料は「高強度(highstrength)」と表現され、その反対に小さいものは「小強度(lowstrength)」と表現されます。
②伸び
材料が伸びて切断した時の長さから元を引いた値を、元の長さで割り、%で表した値です。材料の伸びる割合を示しています。伸びの良い素材は、塑性加工向きで、切削加工には不向きです。
③降伏点
材料は引張力に対して降伏強度を持ち、抵抗を続けますが、ある段階で急速に抵抗力を失う現象を起こします。その現象を起こす点を降伏点と呼び、特に鋼の場合は顕著に現れます。
外力に対する耐久性や曲げの強さを示す材質の要素
外力が加わる時、その力に耐えるための破壊に対する抵抗力を表す要素を以下に示します。
①硬さ
外からの力による変形に耐え得る抵抗力の大きさを示す値です。試験の方法としてはブリネル、ビッカース、ロックウェル、ショアの4つを規定しています。
②圧縮強さ
引張り強さとは逆の性質を示す値のことです。圧縮強度試験により、値を計測します。押し縮める力に対する抵抗力のことです。
③曲げ強さ
材料をどれだけの力で曲げれば折れるかという値。最大荷重に抵抗する力の強さを表しています。
衝撃に対する耐久力や脆さなどを示す材質の要素
材料に急激な力を加えた場合の破壊や欠損に対する抵抗力の要素を以下に示します。
①じん性
材料のねばり強さを表したもので、物質のぜい性破壊に対する抵抗の度合いのことです。衝撃力などに耐え得る抵抗力の値でもあります。評価方法としてシャルピー衝撃試験などがあります。
②ぜい性
ぜい性とは材料の脆さを表す数値のことです。硬くても衝撃に弱い場合は脆いと判断されます。ぜい性破壊とは弾性変形を超えた応力によって起こる破壊であり、金属材料の応力状態や温度に強く依存しています。
材料の熱伝導度や磁気を帯びる性質を示す材質の要素
金属の熱が伝わる割合や、磁気を帯びる性質を表す要素を以下に示します。
①熱伝導度
距離1cmについて1度の温度差がある場合、1cm?の断面を通って1秒間に伝わる熱量を示す値のことです。熱伝導が最も高い材質で銀や銅、金などがあり、次いでアルミニウム、亜鉛、鉄の順となります。
②磁性
磁気を帯びる性質をもつ金属材料のことです。強い磁気を帯びるもので鉄、コバルト、ニッケルなどがあり、これらを強磁性体と表現します。また、磁場とは逆向きに磁化され、磁石に反発する力が生じる性質の金属を反磁性体と表現しています。
金属・素材の機械的性質を知るために試験を
金属・素材には、さまざまな機械的性質があります。どのような性質を持っているかは試験によって評価されます。
母材と同様の素材で試験片を作り、多種多様な試験方法で、弾性率・疲労強度・継手強度などを測り、金属・素材を評価するのです。
構造材料としての適正や加工方法の選択、JISなどの国家規格に準しているか判断するためにも、強度試験は必要不可欠になります。
単純な金属だけでなく、鋼鉄材料の炭素鋼やアルミ合金といった合金にも機械的性があり、試験は大切です。
安全な製品を設計するために必要な金属材料の知識
設計における金属材料の選定は重要な作業項目の1つです。
高強度のボルトとアルミ合金製のめねじを組み合わせるとめねじが壊れやすいなど、間違った金属材料を選べば、将来、機械部品の破壊に結び付くことも珍しくはありません。
個々の部品に使用される材料の機械的性質を知ることで、安全な製品を生み出すことにも繋がるので、ぜひ学習しておきましょう。