機械設計図面における最適な「寸法」の配置法をご紹介
製造業界には欠かせない製図の技術。機械設計の場合、三次元の物体を平面で表現する「投影法」技術の取得は肝心です。
立体は、高さ、幅、奥行きの三面図で成り立ちます。ですが、投影法とは立体図で書くわけではありません。
投影図は主に第一角法と第三角法がありますが、日本の機械設計のほとんどの場合、第三角法が使われています。
第三角法は上から投影した図を、そのまま上に配置し図面に書き起こしたものです。
しかし、第一角法は上から投影図したものを下へ、左からの投影図は右へ配置します。
第一角法は頭の中で一度整理する必要があるので、第三角法が使われているのです。
実際、日本のJIS製図の製図法においても、第三角法を使うことが規定されています。
設計図面における寸法の配置は、図面を読みやすくするためにも配慮が必要です。
上から垂直に、もしくは横から水平に見ても、わからない箇所もあります。例えば、傾斜部に穴があったり、加工箇所がある場合です。
こういった場合は「補助投影図」という、第三角法では表現できない箇所を表現するための投影図を用います。
図面を見て、製品の完成形を把握できるようなわかりやすい図面作りが肝心なのです。
機械の組立図から、個々の部品図においても、寸法配置の基本ルールはそれぞれ存在します。
製図とは言葉に頼らない情報伝達方法なので、細かい設計図作成は欠かすことができません。
製図技術者は、設計者の意志が確実に伝わるような図面に仕上げなくてはならないのです。
この記事はJISの一般規則に倣った、最適な寸法の配置法をご紹介します。
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最低限必要な寸法配置のルールとは
寸法配置には、最低限必要なルールがあります。確認してみましょう。
①対象物の機能・製作・組立などを考慮した寸法を正確に配置する。
※製造の工程の中で、基準となる箇所(基準部)があれば、まずそここから寸法を入れるなど配慮する必要があります。この基準部(面・線・点)は取り付ける相手との関係から決まる場合が多くなります。
②寸法は対象物の大きさや形、そして位置などを明確に表すために必要十分なものを記載する。
※一般図面での寸法は「大きさ」、「位置」の二つを表す場合が多く、「大きさ」は品物の大きさを示し、「位置」は品物と品物の相対位置を示すものがあります。
③対象物の機能的な要素を表す寸法を必ず記載する。
④寸法は、寸法線や寸法補助線、補助記号などを用いて数値により明確に表す。
製造現場スタッフにも見やすい図面にするために
設計図は、設計者の考えが伝わらないと意味がありません。
大切なことは製造現場のスタッフにその考えが伝わるようにすることです。
①寸法はバラバラに配置せず、なるべく主投影図に集中させる。
②寸法の重複は避ける。
※図面を描く場合、寸法の重複を避けるように意識します。ただし特別な理由があり、図面を見やすくするために、正面図や側面図などに記載する場合もあります。これらは製造現場の都合によって臨機応変に対応します。
③寸法は、なるべく計算して求める必要がないように記載しておく。
④関連する寸法は、なるべく1箇所にまとめて記載しておく。
※フランジなどの製作を例に挙げると、穴の加工は別の工程になるため、正面図よりもピッチ円の描かれた側面図に記入する方が分かりやすく、寸法もまとめることができます。
⑤寸法は、必要に応じて基準とする点や線、または面から記載する。
他にも心がけておきたいサポートするための寸法配置
その他、より設計者の意図を正確に伝えるために必要な寸法配置を確認しましょう。
①図面に示す寸法は、他に明示する必要がない限り、その図面に指示する対象物の仕上がり寸法を示す。
②寸法は製作の工程ごとに配列を分けて、記入することを心がける。
※寸法はなるべく工程別に記入した方が、各種の作業者・担当者にとっても便利です。ただし、二つ以上のいずれにも必要な寸法は、最後の工程に含めて補助的に記入します。
③寸法の内、参考寸法に関しては数値に括弧をつけて表記しておく。
※全体の寸法を記入する場合は、個々の部品の外側に配置し、その寸法の中でも重要度の少ない数値に関しては括弧をつけます。
設計図の作成には、設計者の意図を図面やデータとして表現するCADオペレーター(図面を基に、コンピューター上で操作できる3Dデータを作成する)も活躍しています。
もちろん、寸法公差(図面の寸法に対して許される程度のわずかな寸法の誤差)や幾何公差(図面の寸法に対して許される程度のわずかな形状の誤差)はありますが、誰が見てもわかりやすい図面づくりは必要不可欠です。
分かりやすい図面にするために気を付けたいこと
何も考えず図面を作成することは、製作の妨げにもなりますので注意が必要です。
特に設計技術者は、無意識に寸法を配置することが多々あります。
「自分がわかればいい」というような無責任な図面では、図面を制作する意味がありません。
思った通りの製品が完成しないという事態が起こってしまいます。
図面を作るということは、完成形の基礎段階を作るということです。
製造現場における作業をスムーズにするためにも、寸法の配置には日頃から工夫する必要があることを覚えておきましょう。
また工学系の大学によっては、カリキュラムで製図実習を学ぶこともできます。
技術資料を読み取ったり、疑問に回答できる知識の習得も大事なことですが、図脳CADといった製品を使った実践も大事です。
そして、金型の知識も蓄えておきましょう。設計図によって、金型を作ることができないこともあります。
このように製図者はしっかり基礎と製図スキルを学ぶことで、現場から求められる求人に適した人材になれるでしょう。