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ツェナーダイオードとは?逆方向電流で働くダイオードの特性や使い方・回路記号を解説

機電派遣コラム

ツェナーダイオード (定電圧ダイオード)とは、半導体を用いた基本的な電子部品のことです。トランジスタやICと同様に、能動部品(半導体デバイス)に分類されます。

通常のダイオードは整流やスイッチング、検波などさまざまな用途に用いられていますが、ツェナーダイオードは、逆方向に働く「ツェナー電圧」が使用される特性から、異なる役割が存在します。一般的なダイオードの場合、急激な逆方向電流は破壊・故障の原因となります。これがツェナーダイオードと通常のダイオードの大きな違いです。

ツェナーダイオードの特性や使い方について、詳しく解説していきます。

ツェナーダイオードとは?仕組みと用途の特徴

ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)は半導体デバイスであるダイオードの一種であり、一定に保たれた電圧を得る目的で使用される電子部品です。

電子回路の見た目をスマートに整えたり、制作する電子デバイスのコスト削減を実現したりと、「一定の電圧を保つ」ツェナーダイオードの特性からさまざまな用途に活用されています。

逆方向に働く「ツェナー電圧」「ツェナー電流」

一般的なダイオードは順方向の電圧を印加し使われるのに対し、ツェナーダイオードは逆方向に働く降伏電圧(ツェナー電圧:VZ)が使用されます

  • ツェナー電圧(VZ):逆方向に働く降伏電圧
  • ツェナー電流(IZ):ツェナーダイオードがツェナー電圧を作り出す際の電流の値

一般的なダイオードは、降伏電圧が増加する領域(降伏領域)を超えると急激な電流が流れ、破壊されてしまうことがあります。一方、ツェナーダイオードを使用していると、降伏領域を超えても故障することなく、安定した電圧を作り出すことが可能です。

つまり、ツェナーダイオードは逆方向に働く電圧の値を調節し、目的の電圧を得るという仕組みになっています。

ツェナーダイオードの回路記号

ツェナーダイオードの回路記号は、下図のとおり矢印の先に英語の「Z」のような縦線を加えて表し、他の種類のダイオードと区別できるようになっています。

ツェナーダイオードの温度特性

ツェナーダイオードの特徴に、温度に応じてツェナー電圧が変化する「温度特性」も挙げられます。これは、ツェナーダイオードが「トンネル効果」と「アバランシェ効果」で機能することに由来します。

  • トンネル効果:負の温度係数(負特性)を持つ
  • アバランシェ効果:正の温度係数(正特性)を持つ

この正負切り替えは5V~6Vが基準となり、基準よりも電圧が低いツェナーダイオードは、トンネル効果によって負の温度係数(ツェナー・ブレークダウン)が優位になり、基準よりも高い電圧の場合は正の温度係数(アバランシェ・ブレークダウン)が優位に働きます。

そして、基準となる5V付近ではふたつの効果が拮抗し、温度係数は打ち消しあう形になります。つまり温度の影響を最小限に制御したいと考える場合は、5V付近のツェナーダイオードを用いることで、温度が変化してもツェナー電圧は変化しにくいという特性が発揮されます。

ツェナーダイオードの使い方

ツェナーダイオードは、どのような回路で使用されているのか、具体的に見ていきます。

直列接続について

ツェナーダイオードを直列接続することで、目的のツェナー電圧を作り出すことが可能です。

しかし、流すツェナー電流(IZ)の値には注意が必要です。全体の最大許容電流値は、接続されるツェナーダイオードの許容電流のどちらか小さい方が適用されます。

つまり、許容損失が相対的に小さいツェナーダイオードの範囲内での使用が求められます。

電源回路の作り方

ツェナーダイオードは、一本の抵抗と組み合わせることで目的の電圧を得られます。

しかし、抵抗一本というシンプルな基本回路で5Vを取り出せたとしても、そのまま使用することはできません。つまり、基本回路では大きな電力を扱うことができないということです。

その解決策は、ツェナーダイオードを使って得られた電圧をトランジスタに肩代わりさせることです。このような電源回路を作る場合は、以下の2つの点に注意してください。

  • 電流に余裕をもったトランジスタを選ぶ
  • ツェナーダイオードの動作を安定させるために十分な量の電流を流す

大きな電力を必要とする場合、大容量のトランジスタを用意しないと回路が焼けてしまう可能性があります。十分注意しましょう。

大電流で使用する場合

回路を設計し実際に大電流で使用する場合は、帰還補償・保護回路の追加などが必要です。

ツェナーダイオードは、電流を流すことで一定の電圧を得られる便利な電子部品ですが、実際に使用する際にはいくつかの注意点があることを覚えておきましょう。

ツェナーダイオードのノイズ発生の原理・対策

ツェナーダイオードはノイズの原因となる電子部品でもあるため、ノイズ対策が欠かせません。

ノイズの原理

通常のダイオードと同様に、ツェナーダイオードもノイズを発生させる素子のひとつです。

なお、ツェナーダイオードから発生するノイズ量は、ツェナー電圧が高いほど大きくなる性質があり、電流量が大きいほど小さくなる傾向があります。

ノイズ対策

ツェナーダイオードのノイズ対策には、以下のようなものが挙げられます。

  • ツェナーダイオードと並列にコンデンサを接続する
  • ツェナー電圧の低いツェナーダイオードを直列に複数本接続する
  • ツェナーダイオードに流す電流量を大きくする

たとえば20Vの電圧が欲しい場合では、ツェナー電圧が20Vのツェナーダイオードを用いるよりも、10Vの2つのツェナーダイオードを直列接続する方が、発生するノイズ量を軽減できます。

さまざまなメーカーから販売されているツェナーダイオード

回路の見た目を整えたり、電子デバイスの制作コスト削減につなげたりできるツェナーダイオードは、ローム株式会社や東芝デバイス&ストレージ株式会社などさまざまなメーカーから販売されています。

販売代理店などの取扱店情報を参考にして適切なものを選ぶほか、電子部品は数量が必要なことも多いため前もって在庫を確認しておきましょう。

まとめ
  • ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)はダイオードの一種
  • 逆方向に働く降伏電圧「ツェナー電圧」が使用される
  • ツェナー電圧が得られる際の電流量をツェナー電流と呼ぶ
  • 一般的なダイオードは、降伏電圧が増加する領域(降伏領域)を超えると急激な電流が流れ、破壊されてしまうことがある
  • ツェナーダイオードは逆方向に働く電圧の値を調節し、目的の電圧を得る仕組み
  • ツェナーダイオードは「トンネル効果」と「アバランシェ効果」で機能する
  • ツェナーダイオードはノイズ発生の要因となるためノイズ対策が必要

 

 

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