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半導体エンジニアとは?向いている人と必要スキル・仕事内容から考える「きつい」「やめとけ」の誤解

スマートフォンやエアコン、冷蔵庫など、身近な電化製品の多くに使用されている半導体。半導体不足が世界的な関心事となりメディアを賑わせた記憶も新しく、いまでは半導体は私たちの生活と切っても切り離せない材料になっています。

「21世紀の石油」とも称されるように、半導体の存在感は増す一方です。この半導体の設計や開発を担う、「半導体エンジニア」の需要が高まっているのも自明でしょう。

本記事では、これからのモノづくりの中核を担う半導体エンジニアについて、具体的な仕事内容とそれに応じた適正、取得が推奨される資格のほか、明るい将来性やキャリアパスも含め解説します。

半導体エンジニアとは

半導体エンジニアとは、半導体の設計や開発、製造、あるいは品質管理などを担うエンジニアです。

そもそも半導体とは、金や銀などの金属のように電気を通す「導体」と、ガラスやゴムのように電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を備えた物質であり、具体的にはシリコンのような素材を指します。この半導体が使用された集積回路(IC)やトランジスタなどを含め、広義な意味で「半導体」の言葉が使われているのが一般的です。

半導体を開発し、電化製品などに組み込んでいくために、半導体エンジニアには機能要件に沿った集積回路を設計したり、要求事項に十分な水準を満たすような品質チェックを実施したりと、幅広い業務に関連する知識やスキルが求められます。

 

半導体エンジニアの仕事内容と種類

半導体エンジニアの具体的な仕事内容は、設計から品質管理に至るまで広範におよびます。そのため、仕事内容に合わせて半導体エンジニアは「プロセスエンジニア」の種類に区分されることもあります。

半導体エンジニア
  • 主に半導体を用いた集積回路の設計を担当する
  • 新製品の開発に携わったり、製品の品質チェックを行ったりと、仕事内容は幅広い
  • 半導体に関する知識や技術のほか、半導体を用いた製品の知見も求められる
プロセスエンジニア
  • 主に半導体製造の設備や材料、コスト調整などの管理業務を担当する
  • 生産効率アップや品質向上が主目的となる
  • 製造した半導体の品質や安全性のチェックも行う

いわゆる「半導体エンジニア」は、主に半導体を用いた集積回路の設計を担当します。新製品の開発プロジェクトに参画したり、完成した製品の品質チェックを担ったりと仕事内容の幅は広く、個人差が大きく見られることも特徴です。

半導体設計の仕事については、以下の記事も合わせてご確認ください。

一方、プロセスエンジニアは半導体製造現場の総合的な「管理」に携わるエンジニアの立ち位置になります。

 

半導体エンジニアは「やめとけ」「きつい」とされる理由と誤解

半導体エンジニアの仕事は「きつい」「やめとけ」などと、一部からはネガティブな声が聞かれることがありますが、その背景には、半導体製造に関する次のようなイメージの先行があると考えられます。

  • 通気性のないクリーンスーツの着用
  • 製造業に蔓延する「3K(きつい・汚い・危険)」イメージ

ただし、これらのイメージは明確に誤りです。半導体の製造過程では、チリやホコリなどの侵入を防ぐためにクリーンスーツを着用する場面があること、それに伴い作業者に強いストレスがかかるケースがあること自体は事実ですが、それはあくまでも工場における「製造」工程の話です。半導体エンジニアの担当領域である「設計」「開発」領域では、クリーンスーツの着用は多くの場合では求められません。

また、「3K」の観点も設計領域には当てはまらないほか、温度や湿度などの厳密な制御が求められるクリーンルームで行われる半導体製造工程においても該当しません。

ただし、半導体エンジニアは簡単な仕事ではありません。

  • エンジニアに要求される高度な技術力
  • 変動の激しい市場の動きをキャッチアップする能力
  • 半導体製造プロセスの複雑性へのコミットメント力
  • 厳格な品質管理基準への対応力

半導体エンジニアの業務では、これら多様な能力が求められることから、次に挙げるような業務適性も重要になります。

 

半導体エンジニアに向いている人

次のような特徴に該当する人は、半導体エンジニアに向いていると考えられます。

  • モノづくりが好き、興味関心がある
  • テクノロジーへの強い探究心がある
  • 高いコミュニケーション能力がある

半導体エンジニアには、半導体に関連する知識やスキルはもちろんのこと、開発などに携わる半導体を用いた製品への知見なども求められます。そのため「モノづくりが好き」といった情熱が前提となるほか、電気製品や新たなテクノロジーへの強い探究心も半導体エンジニアにおける欠かせない適性です。

また、開発プロジェクトでは多くのメンバーや複数のレイヤー間における連携も必要になるため、コミュニケーション能力も重要な素養です。

 

半導体エンジニアに活かせるスキル

半導体の製造・開発に関連する知識のほか、電気製品に関する知見、さらにコミュニケーション能力などの適正が求められる半導体エンジニア。そのなかでも注力したい3つの具体的なスキルについて掘り下げていきます。

  • 英語力
  • プログラミングやソフトウェアのスキル
  • 電気・電子工学の知識

 

英語力

半導体エンジニアの仕事では、英語力が有利にはたらきます。

半導体開発はグローバルな職域です。半導体に関する研究開発は国内外を問わず活発であり、最新情報や論文は英語で公開されているものも多いです。英語の論文を読みとく力は、最新情報の迅速なキャッチアップに直結し、進化の速い半導体情勢にも素早く対応できるようになります。

また、世界最大の半導体製造企業として知られる台湾のTSMC社が熊本に新たな製造拠点を構えたように、外資系企業の進出が今後トレンドになっていくことも考えられます。そこで働くエンジニアにとって、英語力は必須ともいえるコミュニケーションスキルになるでしょう。

 

プログラミングやソフトウェアのスキル

集積回路の設計におけるシミュレーションやテストでは、プログラミングスキルが欠かせません。そのため、半導体エンジニアには一定レベル以上のプログラミングスキルが求められます。なかでも、組み込み系エンジニアリングに欠かせないC言語、さらにC#、C++などのスキルが重要です。

また半導体の設計には専用のソフトウェアが使用されることが多いです。CADCAMなど、コンピュータ上での製図や設計を実行するツールの基礎操作スキルも活かされます。

 

電気・電子工学の知識

大学や専門学校で電気・電子工学を学んだ経験も、半導体エンジニアの仕事に活きてきます。特に業務未経験者にとっては、これらの素地は極めて重要です。電子回路の設計方法やICチップ内部のレイアウト方法などの深い理解は、半導体エンジニアとして活躍するベースとなるでしょう。

また、電気・電子工学の知識をつけるために資格の勉強をすることも有効です。後述する「半導体製品製造技能士」や「半導体技術者」などの資格は、半導体エンジニアの求職フェーズでも有利にはたらきます。

 

半導体エンジニアになるために役立つ資格

半導体エンジニアとしての活躍を目指す、あるいは自身のスキルを証明するにあたっては、取得が推奨される資格があります。以下の2つは、半導体エンジニアになるために有利にはたらく資格の一例です。

名称 区分 制度所管
半導体製品製造技能士 国家資格 厚生労働省
半導体技術者検定 民間資格(検定試験) 一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会(PDEA)

 

半導体製品製造技能士

「半導体製品製造技能士」は厚生労働省を制度所管とする国家資格で、半導体製造に関連する知識やスキルを客観的に評価する技能検定です。取得により、半導体の製造に関する知識や作業環境の管理など、半導体製造にまつわるあらゆる知識と技術水準を証明できます。

なお、試験内容は「集積回路チップ製造作業」「集積回路組立作業」の2種類があり、いずれも実技試験と技能検定に合格する必要があります。

試験の受験資格は以下のとおりです。

  • 2級:2年以上の実務経験 ※職業訓練歴や学歴により実務年数は異なる
  • 1級:最大7年の実務経験または2級取得後2年以上の実務経験
  • 特級:1級合格後5年以上の実務経験

1級以上の試験を受けるためには、最低でも2年以上の実務経験が必要になること、また合格率は多くの年度にて4割を下回るように難易度は比較的高めであることから、すでに一定の業務経験を積んだうえで、スキルアップを目指す人に推奨される資格です。

参考:令和5年度技能検定受験案内|厚生労働省

 

半導体技術者検定

半導体技術者検定は、一般社団法人パワーデバイス・イネーブリング協会(PDEA)が主催する検定試験です。入門的な位置づけの3級や中堅エンジニア向けの2級、指導的立場にあるエンジニア向けの1級など、3つの区分で構成されています。

半導体の製造に関する知識はもちろんのこと、半導体を利用する家電メーカーなどの「ユーザー側」の知識も求められる点が特徴です。そのため、取得によって半導体にまつわる幅広い知識をアピールできます。

参考:半導体技術者検定とは|一般社団法人 パワーデバイス・イネーブリング協会

 

半導体エンジニアの将来性とキャリアパス

半導体エンジニアの将来性は高く、その需要は長期的に続くとされる情勢に疑いの余地はありません。

現代社会は、スマートフォンやコンピュータ、自動車など、あらゆる電子機器に半導体が搭載されています。さらにIoTや自動運転車、5G通信、AI、ブロックチェーンといった、メガトレンドともいえるテクノロジーの発展に伴い、高性能な半導体の需要は増す一方です。

これらの技術革新が半導体業界の成長を強力に後押しし、半導体エンジニアの需要を高めています。常に最新の情報をキャッチアップして自己研鑽する姿勢を崩さなければ、半導体エンジニアとして安定した活躍が見込めるでしょう。

キャリアパスも豊富であり、大きく技術的専門性を深める方向と、管理職やプロジェクトマネジメントへと進む方向に分類できます。

  • 専門エンジニア:技術のエキスパートとしてキャリアを築く道です。設計や開発、プロセスエンジニアリング、品質保証など、半導体製造における特定の分野で高度な知識とスキルを有する人材が求められます。

  • プロジェクトマネジメント:技術的なバックグラウンドを活かしつつ、チームやプロジェクトの管理に携わる道です。製品の開発から生産、販売までのプロセスを管理し、プロジェクトを成功へ導く役割を担います。

  • 研究開発(R&D):最先端の半導体技術の研究開発に携わり、業界のイノベーションを推進します。新しい材料、デバイス構造、製造技術の開発なども含まれます。

  • ビジネス開発・マーケティング:技術的知識を活かし、新しいビジネス機会の発掘や市場戦略の策定に関わる役割です。技術とビジネスの橋渡しを行います。

このように、半導体エンジニアは技術革新の最前線で活躍できるだけでなく、多様なキャリアパスも選択できます。将来性は非常に高く、安定したキャリアを築くうえで魅力的な選択肢となるでしょう。

 

まとめ
  • 半導体エンジニアとは、半導体の設計や開発、製造、あるいは品質管理などを担うエンジニアのこと
  • 具体的な仕事内容は、設計から品質管理に至るまで広範におよび、半導体製造現場の総合的な「管理」に携わるエンジニアは「プロセスエンジニア」と呼ばれることもある
  • 「きつい」などと批判的に見られることもあるが、その認識は誤り
  • ただし、高度な技術力や市場の動きをキャッチアップする能力が求められるため、簡単な仕事ではない
  • 英語力やプログラミングスキル、電気・電子工学の知識を活かせる
  • 半導体エンジニアの将来性は高く、技術的専門性を深めたり、マネジメント方面へ進んだりと、キャリアパスも豊富

 

 

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