フレックスタイム制とは?メリット・デメリットと労働基準法に応じた仕組み
働き方やライフスタイルの変化に合わせ、出退勤や労働時間を自分で決められるフレックスタイム制を取り入れる企業が増えています。特にITエンジニアやWEBデザイナーといった職種で積極的に導入が進められています。
また、よりフレキシブルな働き方を考えるなら、「働く期間」にも注目して検討すると良いでしょう。フレックスタイム制のメリットと期間就労、派遣社員のメリットを掛け合わせれば、より自由な働き方を実現できます。
こちらでは、フレックスタイム制のメリット・デメリットや仕組みについてご紹介。今後ますます広がり、オーソドックスな働き方になるフレックスタイム制について理解しておきましょう!
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、一定期間において、総労働時間内で出退勤および労働時間を自分で決めることができる、変形労働時間制のひとつです。
フレックスタイムの語源は、英語のflex(フレックス)に由来します。Flexは「曲げる」「畳む」の他に、「柔軟な」「順応性のある」といった意味も持つ単語です。この言葉の意味が表す通り、働く時間を柔軟に変更できることが、フレックスタイム制の特徴になります。
フレックスタイム制の目的
フレックスタイム制は、生活と仕事のバランスを保ち、効率的な働き方の実現を目的として制定されました。
- 自由に労働時間を決めることで、ワークライフバランスを整える
- ワークライフバランスを整えるために無駄を省き、仕事の生産性を向上させる
フレックスタイム制の導入による好循環が期待されるため、労働者、雇用者側の双方にメリットがある制度です。
労働基準法での決まり
日本でフレックスタイム制が導入されたのは1988年のことです。導入当初は、1日8時間・週48時間が上限でした。しかし、段階的に労働時間の減少を図り、1997年4月からは1日8時間・週40時間に変更されています。
なお、フレックスタイム制は導入要件として、下記の2点を満たす必要があります。
- 就業規則の規定
- 労使協定への記載
勤務先が要件を満たしているか、一度確認してみましょう。
就業規則の規定
フレックスタイム制を適用する場合、労働基準法第32条の3により、就業規則にフレックスタイム制の導入を規定するよう義務づけられています。
特に「従業員が始業終業時刻を自主的に決定できる旨」を記載して、決定権を委ねていることを示す必要があります。
労使協定への記載
労使協定では以下のような項目を定める必要があります。
- 対象となる労働者の範囲
- 精算期間
- 精算期間における総労働時間
- 標準となる1日の労働時間
- コアタイム ※任意
- フレキシブルタイム ※任意
フレックスタイム制を利用する際は、この決定事項の枠組み内での調整が必須となります。
フレックスタイム制の仕組み
コアタイムを設けるかどうかにもよりますが、フレックスタイム制では通常の働き方とは異なり、必ず勤務しなければいけない時間帯は存在しません。
フレックスタイム制では、あらかじめ決定した精算期間(上限3ヶ月)と精算期間内の総労働時間に沿って日々の労働時間を決めることができます。基準さえ満たしておけば、就業時間も自由に決められるという仕組みです。
フレックスタイム制には種類が2つある
フレックスタイム制の仕組みを理解するには、下記2つの時間帯について把握する必要があります。
- フレキシブルタイム
- コアタイム
いずれも設定が必須となる項目ではありませんが、労使協定で規定している企業も見られるため、誤解が無いように理解しておきましょう。
フレキシブルタイム
フレキシブルタイムとは、働く時間を自分の裁量で決めることができる時間帯のことを指します。必ずしも設定する必要はありませんが、設定する場合は、フレキシブルタイムの開始・終了時刻を労使協定に規定する必要があります。
コアタイム
コアタイムとは各企業が決めた、必ず勤務しなければいけない時間帯のことを指します。こちらもフレキシブルタイム同様、必ず設定しなければいけないということはありませんが、設定する場合は、コアタイムの開始・終了時刻を労使協定に定めなければいけません。
フレキシブルタイム・コアタイムの設定例
上の例でフレキシブルタイム・コアタイムを設定した場合は、9:00に出社して15:00に退社したり、10:00に出社して19:00に退社したりといった働き方ができます。
残業は総労働時間で計算
通常労働であれば、1日のうち、法定労働時間である8時間を超えた分が残業時間となります。一方、フレックスタイム制では、あらかじめ決めておいた総労働時間が精算期間内に超えた場合に残業としてカウントされます。
計算方法は以下の様になります。
精算期間における法定労働時間の総枠
=1週間の法定労働時間(40時間)×精算期間の暦日数/7日
例えば、精算期間が1ヶ月の場合、法定労働時間の総枠は以下の通りです。
【精算期間1ヶ月の場合】
精算期間の歴日数 | 法定労働時間の総枠 |
---|---|
28日 | 160時間 |
29日 | 165.7時間 |
30日 | 171.4時間 |
31日 | 177.1時間 |
1ヶ月の歴日数が31日の場合では、月間で177.1時間を超えた時間数が残業時間となります。
フレックスタイム制のメリット
フレックスタイム制には、さまざまなメリットがあります。
- ライフスタイルに合わせた働き方が可能に
- 通勤の負担を減らせる
- 残業時間の軽減につながる
ライフスタイルに合わせた働き方が可能に
出勤や退勤時間を自分で選べるため、プライベートを優先しやすくなります。例えば、子どもの病気や親の介護など、都合に合わせて出退社時間を選ぶことが可能です。
一方、フレックスタイム制が導入されていない場合は、プライベートか仕事か、この二者一択になりがちです。どちらかを犠牲にすることなく、生活と仕事のバランスを取りやすくなることは、フレックスタイム制を利用する大きなメリットです。
通勤の負担を減らせる
たった数分でも、通勤ラッシュの密な状態で電車に揺られるのはストレスフルな時間です。フレックスタイム制を利用した時差出勤でストレスを軽減し、余裕を持った気持ちで仕事に取り組めれば、生産性の向上にもつながります。
残業時間の軽減につながる
フレックスタイム制では、上限3ヶ月の精算期間が設けられています。例えば、3ヶ月中1ヶ月が労働時間を超過してしまったとしても、残りの2ヶ月で労働時間を減らして、総労働時間を超過しないように調整することができるのです。
この超過した労働時間を月内もしくは翌月以降でしっかり精算することで、残業時間が軽減されます。
フレックスタイム制のデメリット
メリットの一方、フレックスタイム制には課題もあります。
- コミュニケーションが取りにくい
- 自己管理能力が必要
- 職種によっては不都合が生じる
コミュニケーションが取りにくい
出勤時間がずれるため、社員同士でのコミュニケーション不備が発生しやすくなることがあります。
コミュニケーション不足は仕事上でのすれ違いを招き、重大なミスを誘発します。定期的に全員参加のミーティングを設けたり、コミュニケーションツールを充実させたりなど、円滑な社内コミュニケーションの仕組みづくりが求められます。
自己管理能力が必要
フレックスタイム制は、就業時間を自由に決められる反面、生活リズムを崩すことにもつながりかねません。日によって就業時間を変えることで、就寝時間が不規則になるなどの悪影響が懸念されるため、これまで以上に自己管理の徹底を心がけましょう。
また、予定を漏れなく把握しておくことも大切です。「午前中に取引先との打ち合わせが入っていたのに、うっかり午後出社にしていた」など、致命的なミスを犯すことの無いよう、フレックスタイム制を利用するなら、スケジュールや仕事の進捗などの管理方法をあらためて見直してください。
職種によっては不都合が生じる
個人で大半の作業が進められる職種であれば問題ないかもしれませんが、迅速な対応が求められる情報システム系や、内外部との連携が必要な営業職など、職種によってはフレックスタイム制を取り入れることによって不都合が生じることがあります。
取引先や関係部署と就業時間を合わせておくなど、できる範囲での対策を講じるべきでしょう。
フレックスタイム制を採用している企業の職種
フレックスタイム制を採用している企業で多く見られる職種は、ITエンジニアやWEBデザイナーなど、WEBやインターネットに関連する職種です。また、事務職などでも導入が進み、総じて個人業務中心の職種や業界が多い傾向にあります。
なお、求人で「フレックスタイム制導入」の記載があっても注意が必要です。フレックスタイム制を導入していたとしても、規定において「全従業員」や「特定の部署」、さらに「コアタイムの存在」など、適用範囲は企業個別に決められています。フレックスタイム制を導入していても、適用範囲が希望する働き方と合致していなければ、制度の利用ができないことがある点に留意しておきましょう。
また、就業時間などを自由に選択できる柔軟な働き方には、フレックスタイム制のほかに派遣社員という選択肢もあります。自分に合った働き方はどのようなものか? ワークライフバランスをどのように整えるか? ニューノーマルの時代にあたり、今後の働き方をいま一度見つめ直す機会を設けてみてはいかがでしょうか?
- フレックスタイム制とは、出退勤および労働時間を自分で決めることができる変形労働時間制の1つ
- フレックスタイム制の目的はワークライフバランスを保ち、仕事の生産性を向上させること
- フレックスタイム制には、いつ出退勤しても良い時間帯のフレキシブルタイムと必ず勤務する必要がある時間帯のコアタイムという考え方がある
- 残業時間は、精算期間をベースに総労働時間を超えた分をカウント
- フレックスタイム制のメリットは、「ライフスタイルに合わせた働き方」「通勤の負担軽減」「残業時間の軽減」
- フレックスタイム制のデメリットは「コミュニケーション不備」「自己管理能力が必要」「職種による不都合」
- フレックスタイム制が適している職種は、ITエンジニアやWEBデザイナーなど、個人で完結しやすい職種