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DX人材とは|IPAが定義する7職種と必要なスキル・知識・マインドを解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を政府が後押しするなか、企業規模にかかわらずデジタル化やIT技術を用いた新たなビジネスモデルの創出に取り組む企業が増えています。

DXを成功させるためには、デジタルスキルを有する人材が不可欠です。多くの企業が求めるデジタル人材とは、具体的にどのようなスキルを持つ人材のことを指すのでしょうか?

本記事では、DX人材の定義から必要なスキル、DX人材になるための方法について説明します。

DX人材とは

DX人材とは、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みに必要なデジタル技術を有する人材のことです。明確な定義はありませんが、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(2018年12月)」には、DXの実行に必要な人材についての記載があります。

同ガイドラインに記載されている人材の要件について、次項より詳しく解説します。

経済産業省によるDX人材の定義

前述した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、DX推進のための体制整備のひとつに「人材」を掲げ、企業がどのような人材を育成・確保する必要があるのかを次のように記しています。

  • DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材の育成・確保
  • 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DX の取組をリードする人材、その実行を担っていく人材の育成・確保等
  • ※人材の確保には、社外からの人材の獲得や社外との連携も含む
引用元:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0|経済産業省

このことから、政府が考えるDXの推進に必要な人材とは、デジタル技術やデータ活用についての知見を有し、業務内容にも精通したDXの実行を担っていく人材であることがわかります。

しかし、これらの要件をクリアする人材の採用はハードルが高く、DXを推進しようにも人材確保の難しさを課題に感じている企業も多いようです。総務省の「令和3年版 情報白書」によると、「デジタルトランスフォーメーションを進めるうえでの課題」として、日本企業の53.1%が「人材不足」を挙げています

一方、DX推進を求める経済産業省は、便利な行政サービスの提供と職員の業務効率化を目指し、自らもDXに積極的に取り組んでいます。経済産業省内にDX室を置き、DX室長を筆頭としたデジタル専門人材チームを作り、ベンチャー企業との協業やプロフェッショナル人材の採用を進めつつ、フロントサービスやバックオフィスのデジタル化を行っています。

2019年にスタートした、法人デジタルプラットフォームの「gBizID」、中小企業向け補助金・支援サイトの「ミラサポplus」も、経済産業省のDXへの取り組みから実現したもののひとつです。

DX推進における「DX人材不足」という課題

DXの推進に必要不可欠なDX人材は、日本全体で不足しています。上で取り上げた「令和3年版 情報白書」では、DXの推進にあたって不足している人材として、下記のような複数のポジションを挙げています

  • DXの主導者
  • 新たなビジネスの企画・立案者
  • デジタル技術に精通している者
  • UI・UXに係るシステムデザインの担当者
  • AI・データ解析の専門家

いずれのポジションでも「大いに不足している・不足している」と回答した企業は約7割にのぼっており、DX人材不足の深刻さがうかがえます。

さらに、IT人材の不足は将来にわたって拡大する見込みです。「IT人材需給に関する調査(経済産業省、2019年3月)」でのIT人材の需給ギャップの試算によれば、2030年には需要に対して最大で78.7万人の不足が生じると考えられています。

また、DX人材に求められるスキルはIT技術に限られないため、同調査の試算以上に人材不足が広がる可能性もあります。

企業はDX人材を採用・育成し確保するアクションが必要

深刻な人材不足を解決するためには、企業が採用市場からDX人材を確保するだけでなく、自ら育成する必要にも迫られています。人材不足を外部リソースの活用で補う方法は現時点で有効ではありますが、長期的に見るとコストがかさみ、人材もノウハウも定着しない可能性も懸念されるためです。

企業が自社のDX人材を増やすためには、次のような方法が考えられます。

  • 新卒だけでなく中途採用も積極的に行う
  • 配置転換でスキルのある人材にDX関連業務に就いてもらう
  • OJTや社外研修などを用意して育成する環境を整える
  • 資格取得を推奨し、試験料の補助や特別休暇などを用意する

自社内にDX人材がほとんどいない場合、新卒採用よりも中途採用の方が効果的な場合があります。すでにスキルや実績を有する人材は、これからDXに取り組む企業にとって大きな価値のあるキーマンです。新たに採用するだけでなく、既存社員にも目を向けてスキルを洗い出し、DX推進に取り組めそうな人材をピックアップして配置転換を行う方法もあるでしょう。

また、DX人材を自社でつくりだす意識も重要です。OJTや各種社外研修を用いて、社員が学べる環境を構築しましょう。DXに関連する資格取得を推奨し、各種補助や休暇制度を用意することで、学習へのモチベーションも高められます。

IPAが定義するDX人材の7つの職種の役割と求められるスキル・知識

企業のDX推進に必要な職種は主に次の7つがあります。この7つの職種は、情報処理推進機構(IPA)が「DXに対応する人材」と定義しているものです。

  • プロダクトマネージャー
  • ビジネスデザイナー
  • テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
  • データサイエンティスト
  • 先端技術エンジニア
  • UI/UXデザイナー
  • エンジニア/プログラマ

DX人材の採用では、この7つの職種に着目しましょう。なお、これからDX関連の業務にあたりたい方も、7つの職種に必要なスキルを身につけることで、DX人材として活躍できます。職種ごとの役割や求められるスキル・知識については、次項より説明します。

プロダクトマネージャー

プロダクトマネージャーは、DXやデジタルビジネスの実現を主導する役割を持つ、リーダー人材です。開発する製品やサービスのビジョンを明確にして、目標を設定しチームを先導する役割を担います。

プロダクトに関わるさまざまな職種をまとめる必要があることから、マネジメントスキルに加え、UI・UXビジネスやデザイン、ITに関する幅広いスキルと知識が必要です。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、DXやデジタルビジネスの企画立案、推進を担う人材です。ITを用いたビジネスアイデアを創出し、事業を構築します。

ビジネスデザイナーには、着想力や企画構築スキル、ファシリテーションスキル(≒調整能力)が求められます。市場や顧客のニーズから新たなビジネスアイデアを生み出し、それを事業化するためにアイデアやコンセプトを企画に落とし込みます。

ビジネスの現場や議論の場で、ファシリテーターとして意見をまとめ合意形成や相互理解をサポートするのもビジネスデザイナーの仕事です。

テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)

テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)は、DXに関するシステムの設計から実装までを担うチームのリーダーです。

リードエンジニアやテクニカルリードとも呼ばれ、IPAのDX人材の必要要件におけるテックリードには、エンジニアチームのマネジメントを行うエンジニアリングマネージャーや、ITシステムの企画・設計をメイン業務とするアーキテクトの役割も含まれています。テックリードには、チームをまとめて生産性を高め、品質を担保する役割があります。

テックリードには、チームをまとめ生産性を高め、品質を担保する役割のほか、システムを作り上げるためのマネジメントスキル、他部署との折衝の場面などでは高いコミュニケーションスキルも求められます。経営判断にも関わる領域のため、経営視点も欠かせません。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、事業や業務に精通した、事業に必要なデータの分析・解析を行える人材です。DXにおいてはビッグデータを分析・解析して、事業に必要な情報を引き出します。

データサイエンティストには、データを分析・解析するための統計解析スキルに加え、データ分析ソフトを扱うためのスキル、数学に関する知識、ITに関する幅広い知識が必要です。データベースやプログラミング、ビジネスへの理解も求められます。

先端技術エンジニア

先端技術エンジニアは、AIやブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を扱う人材です。

最先端技術への理解とスキルが求められるのはもちろんのこと、変化の速い領域のため、常に情報をキャッチし取り入れる情報感度の高さも必要です。

UI/UXデザイナー

UI/UXデザイナーは、システムのユーザー向けデザインを担当する人材です。優れたデザインを考案し、顧客体験や顧客満足の向上を図るために欠かせない役割を担います。

UI/UXデザイナーには、デザインスキルや情報収集能力、コミュニケーションスキルなどが求められます。なかでも重要なのは、「デザインで誰もが理解しやすいユーザー体験」を作るスキルセットになるでしょう。

エンジニア/プログラマ

エンジニア/プログラマは、システムの実装やインフラの構築、システムの保守などを担当する人材です。新たなシステムだけでなく、既存システムの運用・保守なども担います。

エンジニア/プログラマは、ソフトウェアエンジニアリングから業務分析、プロジェクトマネジメント、知的資産管理・活用と幅広い業務にあたります。ソフトウェア開発などのエンジニアリングスキルやプロダクトの設計図面を作成する設計スキル、プロジェクトマネジメントスキルが求められるほか、業務の一部を外部に委託するケースでの調整能力なども必要です。

DX人材に必要なマインドセット

DX人材には、これらの知識やスキルに加えて次のようなマインドセットが必要です。

  • リーダーシップ
  • 主体性・好奇心
  • 課題設定力
  • 諦めずやり遂げる力
  • 変化を求め柔軟に対応する力
  • 企画力 など

DXは単なる「業務のデジタル化・効率化」を指す言葉ではありません。デジタルを用いて新たなビジネスモデルや産業を生み出し、変革によって業界や経済に影響を与えることを目指します。どのような事業でもIT技術を少なからず用いているいま、DXの実現は企業経営に大きな価値をもたらすものです。

しかし、社内でのDXの重要性への理解不足、あるいはIT技術への理解不足から、思ったようにDXを推進できないケースは少なくありません。そのため、DX人材は企業がDXを実現するための舵取りも担うポジションになります。企業全体を巻き込み変革を進めるためにも、リーダーシップはDX人材に必要不可欠なマインドセットです。

また、自ら課題を解決する主体性や、トレンドをキャッチする好奇心も必要です。実際に変革を進めていくなかでは、課題を見つけ仮説を立て情報収集する課題設定力や、時間がかかっても変革を成し遂げる粘り強さも求められます。

就職や転職でDX人材になるには

近年、さまざまな企業がDX人材の採用を進めています。とはいえ、未経験かつスキルや知識のない求職者が、企業のDX関連の職に就くのは簡単ではありません。就職や転職を機にDX人材として活躍するには、スキルや知識を確実に身につけ、実績を積む必要があります。

DX人材になるには、プログラミングやマーケティング、データサイエンスに関する資格やスキルの取得を目指しましょう。プログラミングにおいては、代表的な5つのデジタルテクノロジー「SMACS:Social、Mobile、Analytics、Cloud、Sensor」のうち、いずれかひとつでも理解を深めて専門的なスキルを獲得しておくことを推奨します。

前述したDX人材に必要なマインドセットのなかで、すでに獲得しているマインドセットがあれば、面接時などにアピールするのもよいでしょう。

まとめ
  • DX人材とは、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みに必要なデジタル技術を有する人材
  • 経済産業省のガイドラインから、デジタル技術やデータ活用についての知見を有し、業務内容にも精通したDXの実行を担っていく人材と位置付けられる
  • 「デジタルトランスフォーメーションを進めるうえでの課題」として、日本企業の53.1%が「人材不足」を挙げている
  • 企業は採用市場からDX人材を確保するだけでなく、自ら育成する必要にも迫られている
  • IPAが定義するDX人材の7つの職種は「プロダクトマネージャー」「ビジネスデザイナー」「テックリード」「データサイエンティスト」「先端技術エンジニア」「UI/UXデザイナー」「エンジニア/プログラマ」
  • DX人材は企業がDXを実現するための舵取りも担うポジションであり、リーダーシップや主体性、課題設定力などが求められる
  • DX人材になるには、プログラミングやマーケティング、データサイエンスに関する資格やスキルの取得を目指すとよい

 

 

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