非構造化データとは?構造化データとの違い|具体的なユースケースと活用における課題
さまざまな企業がDXへの取り組みを活発化させている現在、商品開発や業務効率化などへの活用を目的に、「非構造化データ」への注目度が高まっています。
非構造化データの分析や活用を最適な形で進めていくためには、非構造化データの特性を理解し、活用に向けた体制の構築が重要になってきます。
本記事では、非構造化データの概要とともに、「構造化データ」との違いや活用における課題、非構造化データ活用の今後の可能性などについて考察します。
Contents
非構造化データとは
非構造化データとはなにか、わかりやすく説明すると、テキストデータや音声データのように「整形されずに」保存された、使用時まで処理されないデータのことです。
たとえばSNSの投稿文や各種音声・画像データは、適切な処理がなされることで、はじめてデータを分類して利用目的に応じた形式に保存できるようになります。非構造化データとは、こうした処理を行う前段階のデータの位置づけです。
具体的には、次のようなデータが非構造化データに該当します。
【非構造化データの例】
- 電子メールデータ
- 音声データ
- 気象データ
- 地理空間データ
- 監視データ
- センサーデータ
- デザインデータ
- 企画書
- SNSの投稿 など
構造化データとの違い
一方、構造化データとは事前に定めた構造に整形されたデータです。たとえば、顧客データや予約システムにおけるデータなどは、事前に一定の構造を定めておくことで、すべてのデータに同じ属性を加えることができます。
構造化データには、次のようなものがあります。
【構造化データの例】
- POSデータ
- ウェブフォームの結果
- 在庫管理データ
- 予約システム
- 顧客データ
- SQLデータベース など
データが整形されていない状態で保存されている非構造化データは、データに規則性がないため表形式などへの変換が難しく、また、そのままでは検索や分析が困難という特徴があります。
一方、活用を前提に整形された構造化データは、検索や分析を円滑に実行できます。その反面、構造化データは事前に設定された目的以外での活用は困難ともいえるでしょう。
半構造化データとの違い
半構造化データとは、非構造化データのうち、ある程度の構造を持つデータです。半構造化データは、通常は非構造化データとして扱われますが、情報を補うことで構造化データへの変換が可能です。
半構造化データには、次のようなものがあります。
【半構造化データの例】
- XMLファイル
- グラフ
- Webファイル
- 圧縮ファイル など
半構造化データは、構造を持たない非構造化データよりも活用しやすい点が特徴です。
非構造化データのユースケース【AI・機械学習】
近年では、一定の構造を持たない非構造データであっても、ツールを用いることで従来よりも比較的容易に解析できるようになっています。これにより、特にAI・機械学習領域での非構造化データの活用が活発化するようになりました。
実際に非構造化データが活用されているプロダクトや機能には、次のようなものが挙げられます。
- 車の自動運転
- 店舗カメラの顧客判別
- チャットボット
- システムの予知保全
車の自動運転では、自動車から取得した画像ファイルを機械学習にフィードバックし、障害物などの認識精度の向上が図られています。店舗に設置したカメラで顧客を判別するシステムでは、画像から顧客行動を分析したデータをマーケティングに活用できます。
また、多くの企業での活用が進んでいるチャットボットでは、ユーザーが求める返答を自動化するために、非構造化データであるテキストデータを分析し機能に反映しています。
システムや設備の異常・故障を予知し、管理するための予知保全における機械学習でも、非構造化データの活用は重要です。センサーなどから収集した非構造化データを機械学習に取り入れることで、異常を事前に検知できるようになる仕組みです。
非構造化データの活用がなぜ重要なのか?
非構造化データの活用が重要視されている理由には、主に次の2つが挙げられます。
- ビッグデータの8割が非構造化データ
- 企業のDX推進の加速
まず、企業が保有するビッグデータの大部分は非構造化データであることです。事業のさらなる発展には、非構造化データの活用は欠かせません。また、企業におけるDX推進の加速も見逃せない要件です。
ビッグデータの8割が非構造化データ
ビッグデータとは、データベース管理システムなどでは管理や解析が困難な、膨大なデータのことです。明確な定義はありませんが、データベース管理システムが分析できる能力を超えるサイズのデータがビッグデータと認識されています。
このようなビッグデータのうち、8割ほどが非構造化データであるといわれています。また、近年では複数のITツールやIoTシステムを業務に使用する企業が増えています。これにより、企業が持つ非構造化データはさらに増加すると見られます。
非構造化データは、そのままでは解析・分析が困難であるものの、多様な情報を含むため、活用次第で経営にポジティブな影響をもたらすポテンシャルは十分です。たとえば、SNSのポストからニーズを推察し新たな商品を企画・販売する、あるいは業務に関連するデータを整理・分析して業務効率化を図るなど、競争力強化に大きく貢献します。
企業のDX推進の加速
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して、業務効率化のみならずビジネスモデルまでをも変革していく取り組みを指す言葉です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査によると、企業がDXに期待する成果や効果として、業務効率化やコスト削減に加え、データに基づく意思決定やビジネスモデルの変革などにも期待が寄せられていることがわかります。
非構造化データの解析は、これまでに気付かなかった自社の強みや新たな事業の可能性の発見にも貢献します。DX推進においては、ITツールの導入や活用に主眼が置かれてしまうこともありますが、すでに保有するデータやこれから取得するデータを新規事業立案に役立てたり、意思決定に用いたりするアプローチも欠かせません。
非構造化データ活用における課題
経営にさまざまなメリットをもたらすポテンシャルを有する非構造化データの活用においては、いくつかのハードルがあることも理解しておきましょう。
- 大規模なストレージにかかるコスト
- データの管理体制
- データを検索・更新する仕組みづくり
- セキュリティ対策
非構造化データの有効活用には、膨大なデータを保存しておくことが前提となります。そのため大規模なストレージが必要になり、ストレージに関連するコストが高上りになってしまいがちです。
また、データの管理や検索・更新を実行するための仕組みづくりも同時に進めなければなりません。大量のデータには個人情報や機密情報も含まれることから、保存・管理にはセキュアな環境も不可欠です。
大規模なストレージにかかるコスト
企業が保有する膨大な非構造化データを保存・管理するためには、大規模なストレージが欠かせません。また、大規模なストレージを確保した後も、それを維持するコストに加え、保存するデータ量の増加にともなってストレージを拡張するためのコストも発生します。
データの管理体制
非構造化データにはさまざまな形式のファイルが含まれます。そのため、データの増加に伴いファイルの管理が煩雑化しがちです。
データの管理にあたっては、データ基盤の構築が重要です。データ基盤では、非構造データを含むさまざまなデータを整理して活用できるよう、複数のシステムやアプリケーションを用います。
これらのことから、データの管理体制の構築・保守・運用部門には専門的な知識やスキルが求められます。社内の人材で対応できない場合には、外部委託なども検討することになるでしょう。
データを検索・更新する仕組みづくり
非構造化データは日々増加するものです。データが増えるほど、検索や更新も難しくなります。そのため、非構造化データを活用するには、データを検索・更新しやすくする仕組みづくりも重要です。
非構造データを検索・更新するために必要な施策は、データへのタグ付けやラベリングです。AIを用いてこの作業を簡易化できるツールもあるものの、すべてのデータに対応できるわけではなく、人力による地道な作業が必要になるケースも散見されます。
セキュリティ対策
非構造化データには多くの個人情報や機密情報が含まれるため、不正アクセスやウイルス感染から情報を守るセキュリティ対策は必須です。
非構造化データのセキュリティ対策として考えられるのは、データの保存・管理に対応するセキュアなソリューションの導入です。データの保管場所が散乱している状態では、管理が煩雑化するだけでなく、サイバーリスクの危険性も高まります。あるいはクラウド型のプラットフォームを用いて、社内にある情報をまとめて管理する方法もあるでしょう。
生成AIによる非構造化データの可能性
生成AIとは、データと人による指令をもとにさまざまなコンテンツを生成するAIです。ChatGPTがもっとも有名なプロダクトといえるでしょう。
非構造化データから業務上重要な情報を容易に引き出せるなど、生成AIの活用は大きな可能性を秘めています。そのままでは活用が難しい非構造化データを、生成AIを用いて容易に利用できるようになれば、大幅な業務効率化などが実現するでしょう。
たとえばマニュアルの作成作業には多くの手間がかかりますが、生成AIに業務に関するデータを送り、マニュアルのたたき台を作成してもらうことも可能です。
前述した通り、非構造化データには構造化データにない多様な情報が含まれます。これを活用しきれない事業は、非構造化データを活用する事業と比較して、情報不足から成長が鈍化するなどの影響も考えられます。
生成AIを通して非構造化データを利用する環境が整えば、データ活用に専門的な知識やスキルがない企業であっても非構造化データの恩恵を受けられるようになるでしょう。
- 非構造化データとは、テキストデータや音声データのように「整形されずに」保存された、使用時まで処理されないデータのこと
- 一方、構造化データとは、事前に定めた構造に整形されたデータのこと
- ビッグデータの8割が非構造化データとされており、多様な情報を含むため、活用次第では経営にポジティブな影響をもたらす十分なポテンシャルが見込まれる
- 非構造化データの活用にあたっては、ストレージに関連するコストやデータ管理体制の構築など、複数の課題をクリアしなければならない
- 非構造化データを、生成AIを用いて容易に利用できるようになれば、大幅な業務効率化などが実現すると期待されている