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国家資格「ITストラテジスト」の難易度と合格率・必要な勉強時間の目安

ITストラテジストは、数あるIT系資格のなかでも難易度の高い国家資格です。

その一方で取得のメリットは大きく、ITに関する高度な知見や、戦略的な経営・ビジネス指向の視点を証明できることから、キャリアアップやマネジメントレイヤーへの転身を検討するエンジニアを中心に注目されている資格でもあります。

本記事では、ITストラテジストの試験概要や合格率、資格を取得するメリットのほか、キャリアの将来性に貢献するポジティブな効果などについて考察します。

国家資格「ITストラテジスト」とは

ITストラテジストは、ITを活用して企業の課題解決や業務効率化を推進する「IT戦略のスペシャリスト」としての高度な知見やスキルを証明する国家資格です。

参考:ITストラテジスト試験|独立法人情報処理推進機構(IPA)

資格取得者の主な仕事内容には、「IT戦略の策定」「戦略の実行・統括」などが想定されます。つまり、ITに関する幅広い知識や技能を有することは大前提であり、その際立ったスペシャリティから、ITストラテジスト試験は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が認定する「高度情報処理技術者試験」に該当しています。

参考:試験区分一覧|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

ITストラテジストの試験概要は下表のとおりです。

試験日程 毎年春期(4月)
開催場所 日本全国
受験料 7,500円(税込)
受験資格 特になし
免除科目 以下のいずれかに該当する場合は、午前Ⅰ試験が免除される
  • 応用情報技術者試験に合格
  • 情報処理安全確保支援士試験または情報処理技術者試験の高度試験に合格
  • 情報処理安全確保支援士試験または情報処理技術者試験の高度試験の午前Ⅰ試験で基準点以上を獲得

所持資格によっては一部試験が免除されるため、ITストラテジスト試験を受ける前には試験概要を確認しておきましょう。

参考:午前Ⅰ試験免除 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

なお、令和5年時点の試験は、以下のように4つの区分けがなされています。

試験区分 解答数 試験時間 内容
午前Ⅰ 30問 9:30~10:20 IT全般の基礎的な選択問題
午前Ⅱ 25問 10:50~11:30 ストラテジ系を中心とした選択問題
午後Ⅰ 3問中2問解答 12:30~14:00 ストラテジ系の記述問題
午後Ⅱ 2問中1問解答 14:30~16:30 ストラテジ系の論述問題

試験内容は、ITに関連する内容全般からストラテジ(Strategy:目標達成に向けた計画や戦略の立案)などビジネス領域に根差した論述問題までと幅広いため、合格するためには十分な勉強時間の確保が欠かせません。

 

ITストラテジスト試験の難易度が高い理由

ITストラテジストは、IPAが定義する「高度情報処理技術者試験」に該当しているように、簡単な試験ではありません。ここでは、数あるIT系の資格のなかでもITストラテジスト試験の難易度が特に高いとされている理由を、以下の観点から考察します。

  • ITストラテジスト試験の合格率が低い
  • ITストラテジスト試験の内容が難しい
  • 合格には100時間単位での勉強時間が必要

 

ITストラテジスト試験の合格率が低い

ITストラテジストの難易度を客観的に示しているのが、合格率の低さです。IPAが公開している統計資料では、ITストラテジスト試験の令和3年度~令和5年度の合格率は以下のようになっています。

  • 令和3年度春期:15.3%
  • 令和4年度春期:14.8%
  • 令和5年度春期:15.5%

比較として、こちらも難関資格とされている「応用情報技術者試験」の合格率を見てみます。

  • 令和3年度春期:24.0%
  • 令和4年度春期:24.3%
  • 令和5年度春期:27.2%

ITストラテジスト試験の合格率は毎年15%前後となっており、応用情報技術者試験と比べても合格へのハードルの高さが示唆されます。

参考:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

なお、ITストラテジスト試験の合格基準は以下のように設定されており、すべての試験区分で合格基準を満たす必要があります。

試験区分 合格基準
午前Ⅰ 100点満点中60点以上
午前Ⅱ 100点満点中60点以上
午後Ⅰ 100点満点中60点以上
午後Ⅱ Aランク評価

全区分において基準点が高く、出題される内容もITの基礎からストラテジスト系の論述問題までと広範であり、ビジネスパーソンとしての総合的なスキルセットが求められる点も、合格率が低い要因となっています。

 

ITストラテジスト試験の内容が難しい

合格率のみならず、試験内容の難しさも、ITストラテジスト試験の合格ハードルを高めています。

例えば、令和5年度春期の午後Ⅱ試験(論述式)では、ITシステムに関わる改修要望の分析と対応方針の立案に関する出題がありました。この問題に対しては、自身の実務経験を交えて以下のような観点で論述しなければいけません。

  • 事業特性や利用部門の問題認識
  • 情報の収集・分析方法や問題の真因を特定した方法、工夫した点
  • 対応方針の内容や関係者との協議方法 など

十分な業務経験や実践的な知識がないと回答が困難な出題もあるため、相応のスキルを有するエンジニアであっても簡単には合格できないでしょう。

 

合格には100時間単位での勉強時間が必要

試験の内容の難しさから、必要とされる勉強時間も少なくありません。

資格の取得に取り組むにあたり、保有しているスキルや業務経験によって上下するものの、エンジニアやプロジェクトマネージャー、あるいはコンサルタントとしてIT関連職での業務経験を3年以上積んだ人材であっても、合格には150〜300時間程度の勉強時間は欠かせない目安とされています。

 

ITストラテジスト試験のポイントは「過去問」や「記述対策」

ITストラテジスト試験に合格するために、次のポイントは最低限押さえておきましょう。

  • 過去問題を繰り返し解いて問題に慣れる
  • ストラテジ系やセキュリティ分野を中心に重要な用語やキーワードを押さえる
  • 文字数制限以内で論理的かつ分かりやすく記述する練習をしておく
  • 午後Ⅱの論述式では、実務経験を元にネタやストーリーを考えておく
  • DXに関する知識をつける

数年分の過去問を繰り返し解きながら、出題傾向を十分に把握し、記述・論述のイメージを持っておくことが重要です。鉛筆やペンで長い文章を書く練習もしておきましょう。また、午後Ⅱの論述試験では、実務経験をベースに事前準備(ロールプレイング)を繰り返しておくことで、戦略立案や実施結果の考察に役立ちます。

なお、情報処理技術者試験全般において、近年では「DX」に関連する知見を重視する傾向が見られます。実際にITストラテジスト試験でもDX関連の問題が出題されているため、経営戦略におけるDXの視点も磨き上げておくべきでしょう。

 

ITストラテジストの資格を取得するメリット

ITストラテジストは難易度の高い国家資格であるため、取得するメリットは大きいです。一般的には、次のようなメリットが考えられます。

  • キャリアアップや転職に有利
  • 仕事の幅を広げられる
  • JISTA(日本ITストラテジスト協会)の正会員になれる

 

キャリアアップや転職に有利

ITストラテジストの資格取得により、高度な知識・スキルを有するIT人材として客観的な評価を得られることから、キャリアアップや転職にあたっては自身の強力な訴求要素となります。

また、合格者も毎年数百名ほどと少ないため、希少性の高いIT人材としてのアピールにもなります。

 

仕事の幅を広げられる

現職での仕事の幅や転職先の選択肢も広がります。たとえば、現在はシステム開発業務を担当している場合であれば、新規事業のシステム化構想、プロジェクトの新規企画など、上位レイヤーの職務に転身するチャンスも出てくるでしょう。

転職する場合においても、ITコンサルタントなど新たなキャリアを開拓できる可能性も十分です。

 

JISTA(日本ITストラテジスト協会)の正会員になれる

JISTAはITストラテジスト試験やシステムアナリスト試験など、高度試験の合格者を中心に構成されている組織であり、情報化戦略などに関する情報交換や人脈形成を主な目的とし活動しています。

JISTAにはITのスペシャリストがそろっており、自身のキャリアアップに向けた知見のブラシュアップや、モチベーションの維持向上にもつながるでしょう。

参考:日本ITストラテジスト協会(JISTA)とは|一般社団法人日本ITストラテジスト協会

 

ITストラテジストに必要なスキル・能力とキャリアパス

ITストラテジストには次のようなスキル・能力が求められます

  • IT戦略を策定する戦略立案力
  • IT戦略の責任者としてのリーダーシップ
  • 工程管理や正確なリスク分析を担うマネジメント能力
  • 多くの人と関わりプロジェクト推進するコミュニケーション能力

ITストラテジストは、いわばITの戦略家です。経営戦略をIT戦略へと的確に落とし込むための立案力や、組織を率いるリーダーシップが重要です。加えて、開発工程の進捗管理やリスク管理などのマネジメント能力なども欠かせません。

こうした特性から、ITストラテジストには多様なキャリアパスが想定できます。

  • ITコンサルティングファーム
  • ITコンサルタント(独立開業)
  • CIO(Chief Information Officer)最高情報責任者
  • システム開発の責任者/リーダー

ITストラテジストには「経営×IT」の高い視座が求められることから、経営層を相手にITコンサルタントとして活躍するケースが多くなります。ITコンサルティングファームで経験を培い、ITコンサルタントとして独立するケースも珍しくありません。

事業会社に勤める場合は、CIOなど企業内のIT部門の責任者を務めたり、システム開発プロジェクトのマネジメントを担当したりする機会が多くなるでしょう。

 

ITストラテジストの市場価値と年収・将来性

想定されるキャリアパスからもわかる通り、ITストラテジストの市場価値は高く、将来性も明るいです。

実際にITストラテジストは、開発エンジニアを含むIT系職種のなかでも、高年収が用意されています。経済産業省の「IT関連産業の給与などに関する実態調査結果」では、ITストラテジスト(コンサルタント)の年収水準は928.5万円と、IT職種のなかでもっとも高年収になっています。

※画像引用:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省

社会におけるITやDXへの取り組みは、ますます活発化しています。「経営とIT」の高い視座から業務に取り組むITストラテジストの将来性に、疑いの余地はありません。

 

まとめ
  • ITストラテジストは、ITを活用して企業の課題解決や業務効率化を推進する「IT戦略のスペシャリスト」としての高度な知見やスキルを証明する国家資格
  • IPAが定義する「高度情報処理技術者試験」に該当しており、取得難易度は高い
  • ITストラテジスト試験の合格率は毎年15%前後
  • 試験内容も簡単ではなく、十分な業務経験や実践的な知識がないと回答が困難な問題も出題される
  • 合格には100時間単位での勉強時間が必要であり、過去問を通じた記述問題への対策や、DX関連知識の習得が欠かせない
  • ITストラテジストの市場価値は高く、IT職種のなかでも年収は高水準

 

 

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