まるで絵を描くように回路が書ける電子回路ペン「AgIC」
通常、電子回路では基板上に端子などを組み込みながら通電させます。それが、まるで魔法のように回路を描くと通電可能になる電子回路ペンがあるのをご存知でしょうか。電気を通すことができる特殊なインクを使ったペンということで注目を集めています。今回はそんな魔法のペン、AgICについてご紹介したいと思います。
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開発したのは東大発のベンチャー企業
回路を描くことができる画期的なこのペンは、東大発のベンチャー企業AgIC社によって開発されました。その秘密は、「銀ナノ粒子インク」という電気を通すインクでできており、紙に書くだけで通電するという画期的システムで、日本のみならず、世界中から注目を集めています。世界中から注目を集めるきっかけとなったのが、電気設備会社・関電工が製作した動画でした。街を模した白いキャンバスにペンで線を描くことによって伝統の模型が点灯していくというもので、AgICのPRにも一役買ったのです。
プリンテッドエレクトロニクスという新しい分野
AgICの功績は単にペンで回路を描けるというだけではありません。通常回路を作る場合、大型の設備が必要であったり、エッチングなどの劇薬を使ったりするため、コストがかかっていました。ところが、ペンで描くことによってそれらのコストの低減が図れるのです。その結果、本来工場で作る回路でも、事務机の上で作ることができるようになりました。これは、今までの金属を除去する手法ではなく、必要な部分に金属を塗布することから、プリンテッドエレクトロニクスと呼ばれています。
魔法のペンAgICの活躍の場は幅広い
それでは、AgICはどういった分野で活躍できるのでしょうか。AgICはインクを塗布するという特性上、紙や生地など薄い対象に回路を描くことができます。これを活用すれば、薄型電光掲示板やFPC(フレキシブルプリント回路基板)といったもの、超薄型のLED掲示板を使った広告などで活躍することでしょう。そのほか、フィルムヒーターと呼ばれる薄型の電熱器も製造されています。また、試作から量産まで時間がかからないのも特徴と言えるでしょう。
あの接着剤メーカー・セメダインも投資
そんなAgICに注目している企業は多々あります。その中のひとつが接着剤メーカー、セメダインです。セメダインはなぜAgICに投資したのでしょうか。従来、セメダインは非導電性の接着剤を作っていましたが、AgICに投資することにより誘電性の接着剤を開発し、プリンテッドエレクトロニクスの分野へ展開する狙いがあります。どこにでも描ける技術と、どこにでも接着できる技術の融合で、画期的なフレキシブルデバイスが誕生するかもしれません。
IoTのキーアイテムとなるのか
IoT化が進む昨今、どこにでも回路を描けるというAgICは注目を集めています。回路を作る素材が広がるこのアイテムは、大きな可能性を秘めています。ちなみに、このペンはAmazonでも手軽に買えるので、購入してみてはいかがでしょうか。