シンギュラリティとは?技術的特異点がもたらす2045年問題を解説
人工知能の研究開発が進み科学技術が発展すると、シンギュラリティが到来するといわれています。
科学技術の発展は私たちの生活をより豊かにする可能性を秘めている一方、社会が大きく変化するため、あらたな問題を引き起こす可能性もあります。
この記事では、シンギュラリティが起こる可能性や人類にもたらされる生活の変化について解説します。
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シンギュラリティの意味
シンギュラリティを日本語に直訳すると「技術的特異点」となります。
これは、レイ・カーツワイル博士が提唱した未来予測における概念です。
昨今のAI技術の進化は目覚ましく、2015年には囲碁AIがトップレベルのプロ棋士を破ったことでも話題になりました。
このニュースは、AIを含むテクノロジー分野に大きな影響を与えたことは間違いありません。
このような科学技術の発展によって、人工知能やコンピューターがやがて人間の脳を超える日が来るであろうと予想されています。
人間の知性を超越するレベルで人工知能が発達し、社会が大きく変わる転換点、これが「シンギュラリティ」の概念です。
シンギュラリティがもたらす2045年問題
シンギュラリティが到来すると予測されているのは「2045年」です。
2045年に技術的特異点が訪れ、人工知能の知性が人間を超越し、予測不可能な領域に到達するといわれています。
現時点で人工知能や各種ロボットの開発に携わっているのは人間ですが、シンギュラリティ到来後は人工知能がより優れた人工知能を作り出すとも予測されています。
それが現実化すればテクノロジーは飛躍的に進化し、私たちの生活に大きな変化をもたらすことになるでしょう。
人工知能やロボットをコントロールする主導権さえも人工知能に移り、私たち人類はあらゆることを機械に依存する生活になるかもしれません。
シンギュラリティの到来時期には諸説ある
シンギュラリティが2045年に到来するというのはあくまでも一つの仮説です。
人工知能研究の権威であるジェリー・カプラン教授は、「シンギュラリティ説は誇張された話であり、すぐに訪れるということはない」と話しています。
カプラン教授はシンギュラリティ説が過度に誇張された原因について、次の3つを挙げています。
- 科学的事実に基づいていないエンターテインメント作品の普及
- 根拠のない情報を拡散するメディアの報道
- AI研究プロジェクトへの選出を希望する研究者たちの過剰なアピール
また、ジェリー・カプラン教授は「人工知能は未来を明るくする技術である。より良い世界を作るためにその利活用法を考えるべきだ」と語っています。
このように、シンギュラリティは早々に来るものではないという説がある一方で、2045年を待たずして到来するという見解も出ています。
フロント業務をロボットがおこなうホテルが開業するなど、近年のテクノロジーの発達速度を考えれば、2045年よりも早期にシンギュラリティが起こる可能性も否定できません。
いずれにせよ、シンギュラリティ到来の時期はまだまだ議論の段階であり、研究者のなかでも見解が異なります。
シンギュラリティにより進化する分野
シンギュラリティにより進化する分野はさまざまです。
シンギュラリティが到来すると、次のような分野が飛躍的に進歩する可能性があります。
深層学習
深層学習は「ディープラーニング」とも呼ばれており、人工知能に大量のデータやサンプルケースを学習させ、人間に近いパフォーマンスを発揮できるようにすることです。
シンギュラリティが到来すると、深層学習の研究がさらに進むため、人工知能の発達が見込まれています。
その結果、人工知能があらゆるビジネスシーンで活用され、業務の効率化が図られる可能性が高くなります。
ロボット
高齢化により労働人口が年々減少している日本において、ロボット技術の研究開発に注目する人は多いでしょう。
シンギュラリティが到来すると、ロボットの性能はより飛躍的に向上し、さまざまな業界で活用されることが予測されます。
優れた人工知能を搭載したロボットが開発されれば、人間からの指示はほぼ不要になるかもしれません。
ロボット社会の実現は、人件費の削減や大幅な生産性の向上につながります。
したがって、利益率の大きな改善も期待されます。
IoT
IoTは「Internet of Things」の略であり、直訳すると「モノのインターネット」です。
この分野も、シンギュラリティによって飛躍的な進化を遂げる可能性が高いと予測されています。
IoTの一例としては、音声でさまざまな指示を出せるスマートスピーカーや、私たちの生活を多方面にわたってサポートするウェアラブルデバイスなどが挙げられます。
シンギュラリティ後はIoTにまつわるテクノロジーがさらに進歩し、私たちを取り巻くさまざまなモノがインターネットとつながる時代が到来すると予測されます。
より快適な生活が実現することは確かでしょう。
ナノテクノロジー
ナノテクノロジーも、シンギュラリティによって進化する分野とされています。
ナノテクノロジーは、極小単位の物質を制御することで、製品に新しい機能や性質を与える技術です。
ナノテクノロジーの技術を駆使した超小型な人工知能を体内に取り込むことで、さまざまな病気や環境の変化に耐えられる身体を手に入れられる可能性があります。
シンギュラリティの到来によって、ナノテクノロジーの技術が加速度的に進化することが期待されています。
シンギュラリティの影響による生活の変化
シンギュラリティによって、私たちの生活は大きく変わることが予測されます。
現実に起こりうる変化を確認しておきましょう。
人の労働力が削減される
シンギュラリティが到来すると、テクノロジーレベルが格段に上昇します。
すでに多くの業務が機械に置き換えられていますが、その流れがさらに加速することが予測されます。
それによって期待されるのは、労働による過剰な負担の軽減です。
社会問題となっている過重労働や過労死の防止策としても、シンギュラリティの到来は期待されています。
仕事がなくなる
「AIによって消滅する仕事」という話題を最近よく耳にします。
たしかに、シンギュラリティの到来により多くの分野で、それまで人の手でおこなっていた業務が人工知能の搭載された機械に置き換えられる可能性があります。
たとえば、データ入力業務や電話オペレーターなどは、人工知能でカバーできるといわれています。
シンギュラリティ後の社会が実際にどのようになるかは誰にもわかりません。
けれども、将来的に自分の業務が人工知能で代行可能なものだと予想できるのであれば、今から手を打っておく必要があるかもしれません。
「人間でなければ」「自分でなければ」できない仕事をこの機会に考えてみるのもよいでしょう。
物価が下がる
モノの生産にまつわる作業を人間の代わりに人工知能がおこなうと、人的コストがかからなくなるため、モノの価値が下がります。
つまり、物価が下がるということです。
人工知能やロボットは人間のように定期的な休息を必要とせず、稼働時間を長くとれるため、生産量を上げることが可能だということもあります。
物価が下がるのは消費者にとって嬉しいことである一方、生産工程における人の需要は減ることが予想されます。
しかしながら、いわゆる「ものづくり」にあたる職人技が必要となる分野では、人の力が引き続き必要となるでしょう。
ウェアラブルの普及が進む
現在でもスマートウォッチなどのウェアラブル機器が販売されていますが、シンギュラリティによって、さらに便利なウェアラブル製品の開発が進むことが予測されます。
現状のデメリットであるバッテリーが長時間もたないことや、プライバシー保護の未熟さなども改善され、スマホのような位置づけでウェアラブル機器が普及するかもしれません。
SEやプログラマーは今後も必要な職種である
人工知能やロボットの進歩によって、今後多くの仕事が人の手を離れると予測されています。
自動運転技術で代行可能なタクシーやトラックの運転手、宅配便の配達員などもそうです。
一方、SEやプログラマーといった職種は今後も必要だという見解があります。
新しいモノを生み出すためには技術者の存在が欠かせません。
シンギュラリティに到達する以前、人工知能やロボットが産業の中心になったとしても、それを開発設計する人間の需要はむしろ高まる可能性があります。
シンギュラリティが実際にいつ来るか、どのような生活になるかは予測不能です。
いずれにせよ、シンギュラリティを問題としてではなく、より良い世界の到来と前向きにとらえることが大切かもしれません。
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- シンギュラリティの到来は2045年前後とされている
- 深層学習やロボットなどシンギュラリティによって発展する技術分野がある
- シンギュラリティの到来によって無くなる仕事、新たに生まれる仕事の両方がある