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サイバーフィジカルシステム(CPS)とは|IoT・デジタルツインとの違い

機電派遣コラム この記事は約 9 分で読めます。

IT技術の進化・浸透により、いまでは生活のあらゆる場面でデータが活用されています。日々生み出される膨大なデータを現実世界にさらにフィードバックすべく、近年注目されている仕組みが「サイバーフィジカルシステム(CPS)」です。さまざまな技術が融合し実現するサイバーフィジカルシステムとは、どのようなものなのでしょうか?

IT技術者が理解しておきたい、サイバーフィジカルシステムの仕組みや注目されている理由をわかりやすく説明します。

サイバーフィジカルシステム(CPS)とは

「サイバーフィジカルシステム(CPS)」とは、現実(フィジカル)の情報を仮想(サイバー)空間に取り込み分析し、分析結果を用いて現実世界の活性化や社会課題の解決を図るシステムのことです。

近年では、製造の現場から一般消費者の生活関連機器にまでIoT(モノのインターネット)が活用されています。IoT機器から収集した膨大な情報をコンピューティング能力で分析することで、新たな価値や経験知が生まれ、現実世界が直面している少子高齢化やエネルギー問題といった社会課題を解決できる可能性があると期待されているのです。

サイバーフィジカルシステムの仕組み

サイバーフィジカルシステムの実現には、現実世界での物理機器による情報収集と、仮想空間の高度なコンピューティング能力が必要となり、下記のサイクルで進行していきます。

  1. 現実世界で、センサーネットワークを用いたモニタリングにより膨大なデータを収集する
  2. データをクラウド上のサイバー空間に蓄積する
  3. サイバー空間にある強力なコンピューティング能力によって分析が行われる
  4. 分析結果を現実世界にフィードバックする

データは製造工場のセンサーやホームネットワーク、交通システム、オフィスネットワークなど、さまざまな場所から収集できます。ビッグデータ処理技術やAI技術などを用いた分析で生まれた知識が、現実世界の機器やヒトにフィードバックされ活用される仕組みです。

この一連のサイクルを繰り返すことで、さまざまな課題解決を目指していきます。

IoTやデジタルツインとの違い

サイバーフィジカルシステムとIoT、デジタルツインは広義にとらえると同じような部分があります。これらはサイバーフィジカルシステム同様に語られることが多く、混同されやすい技術です。

IoTは「モノのインターネット」と呼ばれる技術で、センサーやカメラなどの装置をインターネットに接続しデータを収集するシステムを指します。一方、デジタルツインは現実世界の情報をサイバー空間で再現する技術のことです。この2つとサイバーフィジカルシステムにはどのような違いがあるのでしょうか?

サイバーフィジカルシステムとIoTの違い

IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と呼ばれています。IoTでは、ロボットやセンサー、カメラなどの装置をインターネットに接続することでデータの収集や状態の把握、モノの操作、モノ同士の対話を実現します。

なお、IoTの活用で現実世界のモニタリングデータを収集し分析システムに送信することはできますが、単体で分析やフィードバックまでは行えません。膨大なデータを獲得するIoT技術はサイバーフィジカルシステムに不可欠な要素であるものの、これだけでサイバーフィジカルシステムを実現できるものではないのです。

サイバーフィジカルシステムとデジタルツインの違い

デジタルツインとは、現実世界で収集した情報をもとに、サイバー空間に現実空間を再現することを指します。蓄積したデータを活用し現実空間を再現することで、限りなく現実に近いシミュレーションを行えます。

デジタルツインによって、近い将来起こる可能性が高い問題点を把握して現実での改善につなげられるようになるため、サイバーフィジカルシステムとほとんど同様に捉えられています。しかし、得られた知見の現実へのフィードバックはデジタルツインに含まれていません。

サイバーフィジカルシステムが情報の収集、蓄積、分析、フィードバックまでの一連のサイクルを指しているのに対し、デジタルツインは現実空間を再現する技術にスポットが当てられています

サイバーフィジカルシステムが注目されている理由

サイバーフィジカルシステムが注目されている理由には、データを定量化しフィードバックする仕組みにより、客観的知識をベースに現実世界のさまざまな課題やシステムの改善に取り組める点が挙げられます。

IT技術の進展により、利用されているシステムやソフトウェアは複雑化しています。それらにバグが発生しトラブルになった場合、人間の安全や社会に大きな影響を与えてしまうこともあるでしょう。技術者の勘や個人の技術力に頼りトラブルを解消しようとすれば、時間や工数がかかるばかりか、安全性を確保できる確証もありません。

そこで、サイバーフィジカルシステムにより現実世界とサイバー空間が統合されると、客観的な分析結果をもとにトラブルを解消するアプローチを講じられます。

また、IT技術が自動車などの機器だけでなく、社会システムのインフラとして組み込まれるようになっていることも理由のひとつです。エネルギーや交通、医療など、あらゆる分野でITは欠かせない存在となりました。社会インフラに大きな異常が発生すれば、現実世界に与える影響は計り知れません。

なお昨今では、IT技術が進展し技術活用にかかるコストが低下していることから、サイバーフィジカルシステムの導入ハードルは下がりつつあります。サイバーフィジカルシステムという概念が生まれた2000年代には、技術的・コスト的な問題で実現は難しいとされていましたが、今後はこれまでサイバーフィジカルシステムの導入が進んでいなかった農業などの分野でも積極的に活用されるようになるでしょう。

サイバーフィジカルシステムの活用事例

サイバーフィジカルシステムは、さまざまな分野での活用が期待されています。現在は具体的にどのような場所で導入されているのでしょうか? ここからは、活用事例を紹介します。

  • 製造業などでのスマート工場化
  • 設備点検などのスマートメンテナンス
  • 農業のスマート化

IoT技術で生産性向上を実現するスマート工場や、人力からデジタルへの移行で省力化されたスマートメンテナンス、データ活用を行うスマート農業など、サイバーフィジカルシステムが活用されている分野は多岐にわたります。これらの分野でどのようにして活用しているのか、詳しく見ていきましょう。

製造業などでのスマート工場化

市場ニーズの多様化により、製造業では多品種少量生産やマスカスタマイゼーションが浸透してきています。これにより計画や設計、部品管理、在庫管理なども複雑化しており、人手不足が進む中で生産にかかる労力が増えている状況です。

そこで注目されているのが、製造業におけるサイバーフィジカルシステムの活用です。生産の自動化や製造ラインでのトラブルの予見、コストダウンなども可能になります

具体的には、工場内にある設備や機器、従業員などモノやヒトにセンサーを取り付け、データの収集と分析を行い、生産性向上につながるフィードバックを受けられるようになります。これまで気づかなかった問題点や作業状況を可視化するだけでなく、データと分析結果を用いてロボットに作業をさせ生産ラインの自動化を実現します。デジタルツインのシミュレーションにより、発生しうるトラブルを発見し、生産の効率化やトラブル対策を行えるのも利点です。

コスト面においては、過剰仕入・過剰在庫の抑制や、工場内で利用しているエネルギーの可視化で省エネ意識の向上に努められます。たとえば富士電機株式会社三重工場では、サイバーフィジカルシステムでエネルギーの可視化による省エネ意識の向上や生産ライン設計の高度化・効率化、品質改善を実現しています。

設備点検などのスマートメンテナンス

JR東日本では、鉄道電気設備にスマートメンテナンスを導入し、安全性の向上と省力化に取り組んでいます。同社のスマートメンテナンスでは、架線設備モニタリングシステムの導入により、夜間に人力で行っていた高所作業車を必要とする設備検査を自動化できました。

そのほか、電線メンテナンスに無線式センサーを導入し、接続部の温度を自動測定しています。温度測定のための巡回作業がなくなり、作業の安全性と効率性の向上が実現されました。

また、国が進める「革新的河川技術プロジェクト」でもサイバーフィジカルシステムを活用した河川管理が進められています。いうまでもなく、河川の安全は市民生活において重要な要素です。従来、河川管理では週2~3回の平時巡視・点検、5年に1度の縦横断測量、出水時の水文観測、出水時現場状況確認をすべて人力で行っていました。

河川管理には熟練技術者が必要になるだけでなく、危険が伴うものも多くあります。出水時現場状況確認ではヘリコプターの出動が必要になるため、悪天候下では実施できないなどの問題もありました。

革新的河川技術プロジェクトでは、巡視結果や点検内容をタブレットで記録しデータベース化することで熟練技術者のノウハウを蓄積。ドローンによる三次元測量や全天候型ドローンによる出水時現場状況確認で安全性の向上と省力化を実現します。

農業のスマート化

トラクターなど農作業機の自動運転やハウスまたは圃場の温度・天候監視システムなど、スマート農業関連のシステムが増加しています。最近では、データの分析・フィードバックまでを行うシステムも誕生し活用が進んでいます。

「e-kakashi」は、圃場に設置したセンサーから情報を収集して、蓄積したデータを分析した結果、必要な農作業をユーザーに伝えるシステムです。農作業は熟練者の勘や独自の技術で行われることが多く、新規就農者にその技術が伝承されないという課題を抱えていました。人手不足の業界にもかかわらず、客観的なデータやノウハウが少ないために新規就農者や従業員が「何をすればよいのかわからない」と困る場面が多くあるといいます。

そこでe-kakashiでベテラン農家の勘や技術をデータとして収集・分析し、その結果を共有することで技術の底上げを図っている地域・農家が登場しています。IoTでデータを収集し見える化しても、データの使い方がわからなければ活用できません。e-kakashiのように、「今何をするべきか」をデータから分析し伝えてくれるシステムによって、農作業の効率化、売上の向上を見込めるようになるのです。

IT技術は日々進化しています。IoT機器によるデータ収集から一歩進んだサイバーフィジカルシステムは、近い将来企業や家庭で当たり前のものとなっていくでしょう。

また、サイバーフィジカルシステムは国が推進している技術でもあるため、知見のあるIT技術者は引く手あまたになるはずです。最新の技術を用いてさまざまなプロジェクトで活躍したいIT技術者は、サイバーフィジカルシステムへの知見を深め、技術を磨いておくことをおすすめします。

まとめ
  • サイバーフィジカルシステム(CPS)は、現実(フィジカル)の情報を仮想(サイバー)空間に取り込み分析し、分析結果を用いて現実世界の活性化や社会課題の解決を図るシステムのこと
  • 収集→蓄積→分析→活用のサイクルを繰り返しデータの利活用を推進することで、少子高齢化やエネルギー問題といった社会課題を解決できる可能性があると期待されている
  • IoTと混同されがちだが、IoT技術はCPSに不可欠な要素であるものの、これだけでCPSを実現できるものではない
  • CPSが情報の収集、蓄積、分析、フィードバックまでの一連のサイクルを指しているのに対し、デジタルツインは現実空間を再現する技術にスポットが当てられている
  • IT技術が進展し技術活用にかかるコストが低下していることから、CPS導入のハードルは下がりつつある
  • CPSは国が推進している技術でもあるため、知見のある技術者は引く手あまたになると予想される

 

 

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