派遣社員も産休・育休を取得できる!条件や取得までの流れ・期間中の手当てを解説
産休や育休取得の推進は、男女共同参画社会の実現、ひいては少子化対策などとも密接に関連する、現代の労働環境整備を考えるにあたっての重要なトピックスです。
派遣社員も産休や育休を取得できますが、それにはいくつかの諸条件を満たさなくてはいけません。事前に正しい知識を頭に入れておかなければ、「取得できると思っていた産休や育休が取れない」といった事態にもなりかねないでしょう。
本記事では、派遣社員における産休や育休の取得条件や、受給できる手当について解説します。
Contents
派遣社員が産休・育休を取得できる条件
まず大前提として、派遣社員も産休(産前・産後休業)と育休(育児休業)を取得できます。これは、雇用の形態にかかわらず、「すべての労働者は産休や育休を取得できる」と法律で定められているからです。
しかし、派遣社員が産休や育休を取得するには、いくつかの条件が存在します。
産前休業取得の条件 |
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産後休業取得の条件 |
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育休取得の条件 |
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派遣社員が産休や育休を無事に取得するためには、派遣の雇用契約期間に気をつけなくてはいけません。
特に育児休業は、休業期間中に雇用契約が満了することが明らかな場合には、取得ができなくなってしまいます。さらに、派遣会社によっては労使協定にて「勤続1年未満の場合」「週の所定労働日数が2日以下の場合」などを取得対象外としているケースもあるため要注意です。
また、産休については母親のみが対象となりますが、育休は母親と父親、いずれもが対象です。母親・父親がともに取得することも可能であり、しかもその場合は、子どもが1歳2か月になるまで休業期間となるメリットもあります。
産休・育休の期間と手当
産休や育休の期間は法律によって定められており、雇用形態や職種、企業などによる違いはありません。ただし、本人の意向や特別な事情などを考慮し、休業期間を短縮したり、延長したり、あるいは分割することも可能です。
また、産休や育休の期間中には、健康保険や雇用保険から各種手当を受給できます。こちらは加入している健康保険の種類などが受給条件と関わるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
休業期間
産休・育休の休業期間は下表のとおりです。
項目 | 休業期間 |
---|---|
産前休業期間 | 出産予定日の6週間前から出産の日まで ※多胎の場合は14週間前から出産の日まで |
産後休業期間 | 出産の翌日から8週間 ※本人の申請および医師の許可により6週間も可 |
育児休業期間 | 子どもが産まれてから1歳になるまで ※母親・父親ともに取得する場合は1歳2か月になるまで ※特別な事情がある場合は最長2歳になるまで延長可 ※2回まで分割して取得も可 |
産前休業期間
産前休業の期間は出産予定日の6週間前から出産の日までとなっていますが、本人の希望があれば休業せず就業することも可能です。
産後休業期間
産後休業の期間は「出産の翌日から8週間」となりますが、こちらの取得は法的義務であるため、必ず休業しなければいけません。ただし、本人の申請および医師の許可があれば、6週間で産後休業を終えることも可能です。
育児休業期間
育児休業については、通常「子どもが産まれてから1歳になるまで」が休業期間です。しかし、母親・父親ともに取得する場合は、父母合算で子どもが1歳2か月になるまでの休業が可能となっています。
これは、2021年の育児・介護休業法の改正項目である「パパ・ママ育休プラス制度」として整備されたものですが、父親・母親それぞれの休業期間は1年以内である点に注意が必要です。
さらに育児休業は、子どもが保育所に入所できない等の特別な事情がある場合、1歳6か月になるまで延長可能であるほか、1歳6か月の時点でも同様の事情がある場合は、2歳になるまで延長できます。なお、2歳までの延長については、子どもが2歳になる日までに雇用契約が満了することが明らかでないことが要件です。
また、育児休業は母親・父親ともに2回までの分割取得も可能です。その場合は、それぞれの休業開始日の1か月前までの申出が必要になります。
手当
産休・育休中に受け取れる手当の種類、支給額、支給条件は下表のとおりです。
対象期間 | 手当の種類 | 支給額 | 支給条件 |
---|---|---|---|
産休中 | 出産手当金 | 休業期間中:給与の2/3相当(日額) |
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出産育児一時金 | 子ども1人につき50万円 |
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育休中 | 育児休業給付金 |
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出産手当金
出産手当金は、産休期間中に日額で給与の2/3相当を受け取れる手当です。派遣会社の健康保険組合への加入が支給条件となっており、派遣会社から全国健康保険協会に申請します。家族の扶養に入っている場合や、国民健康保険に加入している場合は受け取れない点に注意してください。
また、申請期限は休業していた日の翌日から2年以内となっています。
出産育児一時金
出産育児一時金は、子どもの出産に際して公的医療保険(健康保険組合・国保など)から、子ども一人あたり50万円を受け取れます。出産にかかる費用を実質的にカバーする手当となっており、出産をする病院・医療機関に申請するのが一般的です。
妊娠4か月(85日)以上の出産であることが支給条件となり、万が一、流産・死産などであっても受給できます。また、申請期限は出産の翌日から2年以内となっています。
育児休業給付金
育児休業給付金は、育休期間中に日額で給与の67%、あるいは50%を雇用保険から受け取れる手当です。雇用保険に加入していることが支給条件であり、申請手続きにおいても事業主からハローワークへの書類提出が含まれるため、事前に派遣会社に確認しましょう。また、2か月ごとの支給申請が必要である点も要注意です。
育児休業給付金は、出産手当金や出産育児一時金とは異なり、育休を取得する父親も受給できます。また、育休を延長した場合は、延長日数の分も受給されます。
派遣社員が産休・育休を取得する流れ
派遣社員が産休・育休を取得する流れを、以下の順に追っていきます。
- 派遣会社に連絡する
- 必要書類を作成・提出する
- 産休・育休期間が開始
①派遣会社に連絡する
派遣社員の場合、産休・育休の取得は派遣先の職場ではなく、派遣会社(派遣元企業)に申し出ます。
妊娠が分かったら派遣会社に連絡し、出産予定日や休業の予定を早めに伝えましょう。この際、妊娠中や出産後も仕事を継続したい旨を明確に伝えることが大事です。また、妊婦健康診査等を受ける場合、そのための時間も確保しなくてはいけません。その旨も明確に伝えてください。
②必要書類を作成・提出する
具体的な申請手続きや必要書類については派遣会社ごとに定められているので、よく確認してください。
なお、産休・育休ともに申出期限は休業開始予定日の1か月前までと定められています。それまでには派遣会社での手続きを完了させましょう。
しかし、派遣先企業の人員調整や業務引継ぎ、母体を考慮した業務内容の調整、さらに妊婦健康診査等があることを考慮すると、派遣会社への連絡や手続きは早めに済ませることが望ましいです。
③産休・育休期間が開始
産休・育休の期間中は、出産手当金や出産育児一時金、育児休業給付金の申請はもちろん、出生届の提出といった行政機関などへのさまざまな手続きが必要になります。
なかには派遣会社にも動いてもらう手続きもあるため、余裕をもって対応できるよう、どのような手続きが必要になるのか、あらかじめよく確認しておきましょう。
【出産に際して必要となる手続きの例】
- 出生届の提出
- 乳幼児医療費助成の申請
- 児童手当の申請
- 子どもの健康保険証の作成
- 高額療養費の助成の申請
育休からの復帰後の働き方
子どもの預け先の保育所が決まるなど、職場復帰のめどが立ったら派遣会社に連絡し、復帰に向けたスケジュールなどをすり合わせます。
なお、復帰に際しては、産休・育休前に勤務していた派遣先企業に必ずしも戻れるとは限りません。元の派遣先企業への復帰も含め、希望する勤務内容や条件などを共有し、派遣会社に仕事を探してもらう形になります。
また、育児・介護休業法では、1日の所定労働時間を6時間とする「短時間勤務制度」が設けられています。これは子どもが3歳になるまで利用できる制度です。時短勤務を希望する場合は、その旨も派遣会社に伝えましょう。
- 派遣社員も産休(産前・産後)と育休を取得できる
- 主な取得条件となる、派遣の「雇用契約期間」に注意
- 派遣会社が定めた労使協定についても確認しておく
- 産休・育休の取得は派遣先の職場ではなく、派遣会社(派遣元企業)に申し出る
- 職場復帰のめどが立った際は派遣会社に連絡する
- 産休・育休前に勤務していた派遣先企業に必ずしも戻れるとは限らない
- 復帰後は時短勤務を希望する場合は、その旨も派遣会社に伝える